◇
「龍崙の王族には、特殊な能力が宿る。流々。お前の能力は「癒しの手」だ。慈愛の心を以て人を癒しなさい」
父は毎日、私にそう言い聞かせた。
「癒しの手」と呼ばれる能力は、数百年、誕生していない。
大切に育てたいのだろうと爺様が話していたから、私はきっとこの国から一生出ないのだろうと思い込んでいた。
けれど、運命とは分からないもので、私は急遽、隣国・朱宇の太子に嫁ぐことが決まってしまったのだ。
「申し訳ない。流々」
父は私の肩を抱いて、繰り返し、謝罪をしていた。
「ねえ、父様。なぜ謝るの? 皆、良縁だって喜んでいたわよ」
「いや、私は最低だ。お前を手放すんだから」
「いいのよ、父様。私は龍崙の公主。国の為なんだから」
近頃、龍崙は大国の墨から不平等な条約を押し付けられそうになっていて、墨の脅威に対抗するために、隣国の朱宇と友好関係を深める必要があった。
父は渋々、政略結婚を決めたのだ。
(私しか独身の王族はいなかったんだから、仕方ないわ)
けれど、父は責任を感じているようだった。
「流々、よく聞いてくれ」
肩を強く掴まれて痛い。
でも、嫌とは言えなかった。
父が泣いていたからだ。
「お前は道を切り開くことができる子だ。どんな悪路であっても、その道の先に「光」が見えるのなら……。私はそう思ったんだ」
「……光?」
「いずれ分かる。そのために我らの力を貸そう。光を見つけたのなら、その時こそ、お前の人生を始めなさい」
父の真意は、今も分からない。
――けれど。
確かに、私は「光」を見た。
貴方と初めて出会ったあの瞬間。
真っ白に視界が開けて、割れんばかりの歓声と熱気が私の鼓膜を突き抜けた。
感動と興奮。こみあげてくる激情に、堪えきれずに涙が溢れた。
――あの時見た景色を、私は今も忘れることができずに、おめおめと生きている。
「龍崙の王族には、特殊な能力が宿る。流々。お前の能力は「癒しの手」だ。慈愛の心を以て人を癒しなさい」
父は毎日、私にそう言い聞かせた。
「癒しの手」と呼ばれる能力は、数百年、誕生していない。
大切に育てたいのだろうと爺様が話していたから、私はきっとこの国から一生出ないのだろうと思い込んでいた。
けれど、運命とは分からないもので、私は急遽、隣国・朱宇の太子に嫁ぐことが決まってしまったのだ。
「申し訳ない。流々」
父は私の肩を抱いて、繰り返し、謝罪をしていた。
「ねえ、父様。なぜ謝るの? 皆、良縁だって喜んでいたわよ」
「いや、私は最低だ。お前を手放すんだから」
「いいのよ、父様。私は龍崙の公主。国の為なんだから」
近頃、龍崙は大国の墨から不平等な条約を押し付けられそうになっていて、墨の脅威に対抗するために、隣国の朱宇と友好関係を深める必要があった。
父は渋々、政略結婚を決めたのだ。
(私しか独身の王族はいなかったんだから、仕方ないわ)
けれど、父は責任を感じているようだった。
「流々、よく聞いてくれ」
肩を強く掴まれて痛い。
でも、嫌とは言えなかった。
父が泣いていたからだ。
「お前は道を切り開くことができる子だ。どんな悪路であっても、その道の先に「光」が見えるのなら……。私はそう思ったんだ」
「……光?」
「いずれ分かる。そのために我らの力を貸そう。光を見つけたのなら、その時こそ、お前の人生を始めなさい」
父の真意は、今も分からない。
――けれど。
確かに、私は「光」を見た。
貴方と初めて出会ったあの瞬間。
真っ白に視界が開けて、割れんばかりの歓声と熱気が私の鼓膜を突き抜けた。
感動と興奮。こみあげてくる激情に、堪えきれずに涙が溢れた。
――あの時見た景色を、私は今も忘れることができずに、おめおめと生きている。



