花嫁(はな)に翼神(つばさ) ~地を這う蛇と冷遇されたわたしが、天翔ける星とつがいになるまで

 それからというもの、毎日毎食とはいかないが、陽炎はこまめに離れへと足を運び、蘭と膳を並べるようになった。雉肉と山芋の雑炊、百合根の茶碗蒸し、柚子味噌の風呂吹き大根……。時には庭先で、薄氷も相伴に与る日もあった。蘭が食事を美味しいだけでなく楽しいと思えたのは、本当に久しぶりのことで、二人とも饒舌なほうではないが、通う空気は終始和やかであった。

 山歩きにも、何度か二人と一匹で出掛けた。雪化粧した木々、凍りついた滝。雄大な景色をいくつも見た。

 文の遣り取りも楽しくはあったけれど、直接顔を見て、言葉を交わし、笑顔を交わせることが、こんなにも嬉しい。

 生贄となる覚悟を決めて迷い家に招かれたはずなのに、蘭はいつしか、こんな日々がいつまでも続けばいいと願うようになっていた。

 しかし春の到来よりも早く、幕切れは呆気なく、そして思いがけない形で訪れた。


あちら(●●●)と話がまとまった。蘭殿、故郷に帰るといい」