あらくも、みやびに

(あ、似てる…)
人にときめきを感じる時、思い出すのは君のこと。
サラリとおろした黒髪が似合うとこ。
いいことを思いついたときにむにゅりと口の端があがるとこ。
ぱっちりとしてる目元にキリッとした眉。
シャープで鼻筋が綺麗な横顔。
大きくて少し骨ばった手。
低すぎない心地の良い声。
色んな人の色んなパーツを見ては、君を思い出す。
日々、君のかけらを探してしまう。頭の中でぎゅーっと寄せ集めたって君にはならないのに。
色んな人に君のかけらを感じて、喉がきゅう…と鳴る。体が君を恋しがっている。爪の形ひとつで、君が恋しくなる私はどこかおかしいのかもしれない。仮に君を世界に散りばめたら、私は誰を好きになるのだろう。君というひとつの人間が好きなのか、はたまた君の一番好きなところが見つかるのだろうか。
「ねぇ、大丈夫?」
優しい声が聞こえた。ぼうっとしていた私を覗き込む人。君ではない。
「あぁ…」
曖昧に返事をする。
「大丈夫なら、いいんだけど?」
その人が心配そうに私に言ったとき、私の喉がまた、きゅうと鳴った。ぱっと見て、君に似ている身体のパーツはない人。
ただ、話し方がいやに君に似ていたのだ。