あらくも、みやびに

それは代償だ。
天才は『ピース』が欠けている。
環境や才能に恵まれている天才は、その実、なにかが欠けている。心のどこかが平和ではないのだ。
これは文句でも、嫌味でもない。その魅力が人を惹きつけている、という僕の見解だ。
欠けたそれは、シーグラスのように。欠けて、溶けて、形になったものが人の心を惹きつける。シーグラスは、別のガラスとはもう形が合わなくなってしまう。しかし、その欠片が、全く別の美しい、たったひとつなのだ。
満たされないという、その欲が天才を動かす。満たされていないと、もがく様子に人が惹きつけられる。どこか少しざらついて、尖ってたり、さらに割れてしまうかもしれない不安定さが異様な魅力となり、人の目を惹き、手に取るまでになるのだ。それをどんなに眺めても、透けて全てが見えることはないのに。全てが理解できてしまうような人間は、天才の枠には入ることはない。飛び抜けた才能があるのに、何かがずっと足りなくて苦しんでいる、所詮、凡人には理解できない。そんな海底のような心の奥が、見えなくて美しい。

僕が愛する君も、欠けていて平和を知らない天才なのだ。
時に、君が全てを満たして、平和に、幸せになるのを願う。ピースが満たされてしまえば、君は君でなくなってしまうのに。僕は、欠けた君の美しさにうっそり笑う。