あらくも、みやびに

私は恋には向いていない。理由は単純。四六時中、考えてしまうから。恋に夢中といえば、少女漫画のような可愛い響き。ただ、それが緊張型頭痛となって、私を酷く苦しめる。馬鹿力で頭をぎゅーっと締め付けられる感覚、手足は血液が無くなるように先から冷えてゆく。チカチカする視界と少しぐらつき力の抜ける足元。精神的なものからくるそれは「ここにある体から、自分を引き剥がされる」疑似体験だ。あの人を知っただけで、こんな体になった自分が情けなくて、ため息が出る。本来、心身共に丈夫であるはずの私が、たった一人を思い、考えるだけでこの様だ。私は自分勝手に文句を言うが、別にあの人は私のものではないし、恋人でもない。誰にどんな素ぶりをしたって構わないのだ。それくらい、冷静な私は理解している。冷静でない私が、ただ騒いでるだけだから。そいつが騒ぎ立てるほど、この頭痛がぶつりと血管を引きちぎり、爆発しそうになる。独占していい関係ではない。それでも、この苦しみを楽にくらいはしてほしい。小さくてもいい「私だけ」をひとつ、定期的にくれればいい。
それでも、あの人からの「私だけ」は思うように手に入らないので、私は痛み止めを二錠、口の中に放り込んだ。