あらくも、みやびに

やぁ、元気にしているか?
まぁ、元気じゃないだろう。人生で一番上手くいってなかった時期だな。自分の無能さを感じて、布団に潜り込んでるだろう。そんなときは、身体も悪くなるもんで、人生で患ったことのない病気にもなってたな。自分の世界に不安を覚えて、震える日々だろう。死ねないくせに自分の身体が朽ちていくことを考えていた僕へ。君は今から運命に出会うだろう。人生で初めて劇を見る。大きな舞台ではない。内容は、暗い暗い純文学。救われる話でもないそれに君は心を奪われる。自分が触れることがなかった世界を目にした衝撃は、一生忘れることはないだろう。その世界の魔力は絶大で、不思議なことに君はあっという間に元気になるんだ。暗い部屋に光が差し込むように、君の世界の色が変わる。僕は、羨ましい。もう一度、その瞬間を味わいたいくらいだ。自分の小さな世界がダメになったとしても、ここから飛び出せばいいと思えるようになったあの瞬間。見えなくなりかけていた人生が、まるで眼鏡をかけたかのように鮮明になったあの瞬間。僕は忘れることはない。出来ることなら、あの瞬間を忘れてもう一度。そう願うくらいだ。
運命に出会う僕へ。もう少しだけ苦しんで。