あらくも、みやびに

その心配は恋になりますか?

「先輩、これいいですか?」
「はいはい。」
資料を手に、近づいてきた君。パソコンに向かっていた私は、君のそばに立つ。ふわりと私の香りが遅れてついてくる。
「資料のここなんですけど。」
向かい合ってでは、資料が見えない。けど、そう指摘するのではなく、同じ方向になるように隣に立って、それをのぞきこむ。説明しながら、チラリと上目遣いで見ても、真剣に資料を見てる君の横顔。丁寧にハンドクリームやネイルで整えた私の綺麗な手で、指差ししても、君にとってはただの指し棒。
「…で、ここを見ながらしたら大丈夫。」
「ありがとうございます!分かりました!」
笑顔でお礼をいう可愛い後輩の君。
「そ?よかった。」
「あ、先輩。」
「なに?」
振り返る。
「あんまり距離近いと…勘違いされますよ。僕にはいいんですけど。」
後輩なのに、嗜めるようにいう君。
「はーい。」
「全然、響いてない…。」
返事をしたのに頭を抱えてあきれている。あきれているのはこっちだ。わざわざ君の隣に立つかもしれないと毎日、爽やかでほんのり甘い香水をふっている私の身になってくれ。君とのベストな身長のヒールしか履かないことにも気付いてほしい。
ご心配には及びませんよ?君だけに、なので。