あらくも、みやびに

それは決して一目惚れとは違ってて。
視界に入った瞬間に好きになったわけではない。『君』を認識したときに好きになったのだ。薄らと存在を知っている君。ふと私の中で形を作る。「あぁ、こんな人だったのか。」そうして形になった君を見た。輪郭がぼんやりしている私の視界で、君の言葉や思想が君を形成する。ぼやりぼやりしたものが天の沼矛によって形作るように。それはある意味では、初めて見た瞬間。ぱちりぱちりと光のかけらが私の黒目に弾ける。これはこれは、なんて素敵な人。君という形が出来上がる瞬間の美しさ。その美しさが忘れられず、一途に君を思い続ける。たまに、ぼやりと君の形が変わると「あの美しさは失われてしまうのか。」と不安と共に目を逸らしかける。こちらの勝手な思い込みで、君の輪郭を作るのは迷惑だろうか。ぐさりぐさりと自分を責め立て、君との距離を測り続ける。君から離れた場所で、座り込んでしまう私。「このまま君は離れて見えなくなるんだろう。」そう思い、心と視界がどろりと溶けてゆく。ぱちり。光のかけらが視界の端に映る。離れたはずの君が、あのときの言葉でまた君になる。初心を忘れず、戻ってくる君。
あぁ、最初の君が愛おしい。