あらくも、みやびに

それは、もう十年前。君にかけられた魔法がまだ解けないのです。憧れの君と初めて話せたあの時。君の「かわいいね。」というたった一言が、私の人生に魔法をかけました。生まれて初めて男の子にそう言われた私は「あなたがそう言うのだから。」とかわいくなりました。まっすぐで真っ黒な髪は、少し明るくふわふわと、化粧っ気のない顔は、キラキラツヤツヤと彩りを添えて。色んな人から声をかけられることも増えました。それでも私の目には、君一人。私の「かわいい」は、君だけのものなのです。君が魔法を解くまでは、ただ君のためだけに、私はずっとかわいいのです。ふわふわと揺れるレースも、リボンの似合う髪型も、キラキラ輝く指先だって。全部全部君のもの。どうか、いらないなんて言わないで。出来れば、知らないなんて言わないで。微笑んで何回だって同じ魔法をかけて。チークがいらないのは君の前だけ。ねぇ、君のせいで口紅を塗り直させて。君が気軽にかけた魔法が、私の中で何回でもキラキラ輝くのです。君は私が私だと気付いているのでしょうか?もう魔法をかけたことなんて忘れてますか?純粋無垢なかわいい私でいるので、どうか最後、君が手折ってくださいね。