あらくも、みやびに

「大丈夫ですか?」
私の言葉に年配の女性が振り返った。
夕方のとある駅。そこは交通の便はいいが、複雑極まりない場所だった。道に迷っただろう。途方に暮れている女性いる。隣には大きな荷物。キョロキョロしているが、周りの人間は帰りを急いで、振り返らない。私はその様子を見かねて、声をかけた。
「この駅に行きたいんだけどね…。分からないのよ。」
女性の手書きのメモを覗き込む。自分が帰るには、少々寄り道になる駅。私はニコリと笑った。
「この駅なら分かりますよ。私と同じ方向だし、一緒に行きましょう。荷物、持ちましょうか?」
「あら、助かるけど、悪いわ…。」
力持ちなんで安心してください、と言い、荷物を持ち上げる。同じ改札を通り、電車に乗った。
「ここで降りるんですけど、大丈夫ですか?」
「えぇ。あなた、すごく親切ね。ありがとう。これ、受け取ってちょうだいね。」
女性は、袋を私に半ば強引に渡す。それを受け取り、私は女性が電車を降りるのを見送った。もらった袋の中を見ると様々な個包装のお菓子を一つの袋に詰め合わせたものだ。私は一人で苦笑いした。
「ただいま。」
「おかえり。何それ?」
「人にもらった。ここにおくけど、食べないならそれでいいから。」
「あんた、また人に親切にしたの?」
そう言いながら、私が置いた袋を見る母。
「もらったけど、私食べないから。」
「相変わらず潔癖症ね。もったいない。」
母はそう一言つぶやき、ぱくりとお菓子を口にした。