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――緊張で何も味がしない……。
基本的に話は父親同士が進めていた。そもそもこの結婚を持ち出したのはこの2人なので当たり前なのだが……。
母親同士は共通の趣味である園芸の話で盛り上がっているし、航と誠も仲がいいのか楽しそうに会話していた。
会話についていけてないのは、華恋だけ。
華恋は何も言わず、黙々と料理を食べ進めていた。今日ほど礼儀作法の授業を真剣に聞いていてよかったと感じた日はない。頭の中で先生が言ってたことを反芻しながら、時折周りの話に耳を傾けたりしながらナイフとフォークを動かした。
それから数時間後、何があったかは知らないが父親同士で話がまとまったらしい。握手を交わし、御影家の当主がかばんから婚姻届を取り出した。
すると、一気に空気が変わった。母親同士も会話をやめ、航と誠も黙って姿勢を正した。
「……先程園田様と最終確認を行い、正式に婚約が確定した」
「二人とも、ここにサインを」
差し出された婚姻届を見つめる華恋と航。
最初に動いたのは航だった。航は黙って父親でる御影家当主からボールペンを受け取り、サラサラとサインをした。それを見て慌てた華恋もお父様からボールペンを受け取り急いで隣の欄にサインをした。
「これで正式に婚約が成立した。後で二人でこの婚姻届を提出しに行くように」
どちらの両親もとても満足そうに微笑んでいた。
本日の目的を全て達成したため、これでお開きになった。園田家と御影家はそれぞれ来た車で家に帰り、航と華恋だけ別に用意された車でそのまま役所に婚姻届を提出しに行く。
その後二人用に用意された新居に帰る予定だ。
「姉ちゃんまたな〜!」という誠の声を背に華恋は御影家で用意された車に乗り込む。
航と華恋は役所に行く間も、婚姻届を提出したときも、そこから新居に帰るときも、必要な時以外は全く会話をしなかった。
華恋はなんとか仲良くなりたいと思っているものの、最初に睨まれ握手を無視されたことや航から醸し出される話しかけるなオーラに当てられて何もできなかったのだ。
結局無言のまま新居に到着してしまった。
荷物は顔合わせ中に家に運び込まれていたらしく、家具も一通り揃えられていた。
とりあえず今日は疲れたのでお風呂だけ入って寝ることにした。
一応寝室にキングサイズのベッドが用意されていたのだが、お互い今の気まずい雰囲気の中一緒に寝るきにならず各自部屋にも用意されていたシングルベッドで寝ることにした。『戦略結婚』だからか、とりあえずシングルベッドを用意してくれていて助かった……。
「航様、おやすみなさいませ」
華恋が挨拶をするが、航は無視を決め込む。
諦めて部屋を出ていこうとした時、航がようやく口を開いた。
「俺はお前と馴れ合うつもりはない。あくまで親同士が決めた『戦略結婚』だからな。お前は俺の邪魔にならないよう静かに過ごせよ」
――あぁ……
華恋は落胆した。
もしかしたらと、期待していたのに。
結局どこに行っても変わらないのだ。
もう、期待するのはやめよう。
華恋は笑顔を貼り付けそのまま部屋を出た。
もういい、もういいのだ。諦めるよう。
ここで静かに一生を終えよう。
航様も、悪い人ではない。
お互いが干渉しすぎなければ良い関係を築けるはずなのだ。
華恋は胸の奥のズキリとした痛みに気づかないふりをして、布団を頭から被りそのまま眠りについた。
――緊張で何も味がしない……。
基本的に話は父親同士が進めていた。そもそもこの結婚を持ち出したのはこの2人なので当たり前なのだが……。
母親同士は共通の趣味である園芸の話で盛り上がっているし、航と誠も仲がいいのか楽しそうに会話していた。
会話についていけてないのは、華恋だけ。
華恋は何も言わず、黙々と料理を食べ進めていた。今日ほど礼儀作法の授業を真剣に聞いていてよかったと感じた日はない。頭の中で先生が言ってたことを反芻しながら、時折周りの話に耳を傾けたりしながらナイフとフォークを動かした。
それから数時間後、何があったかは知らないが父親同士で話がまとまったらしい。握手を交わし、御影家の当主がかばんから婚姻届を取り出した。
すると、一気に空気が変わった。母親同士も会話をやめ、航と誠も黙って姿勢を正した。
「……先程園田様と最終確認を行い、正式に婚約が確定した」
「二人とも、ここにサインを」
差し出された婚姻届を見つめる華恋と航。
最初に動いたのは航だった。航は黙って父親でる御影家当主からボールペンを受け取り、サラサラとサインをした。それを見て慌てた華恋もお父様からボールペンを受け取り急いで隣の欄にサインをした。
「これで正式に婚約が成立した。後で二人でこの婚姻届を提出しに行くように」
どちらの両親もとても満足そうに微笑んでいた。
本日の目的を全て達成したため、これでお開きになった。園田家と御影家はそれぞれ来た車で家に帰り、航と華恋だけ別に用意された車でそのまま役所に婚姻届を提出しに行く。
その後二人用に用意された新居に帰る予定だ。
「姉ちゃんまたな〜!」という誠の声を背に華恋は御影家で用意された車に乗り込む。
航と華恋は役所に行く間も、婚姻届を提出したときも、そこから新居に帰るときも、必要な時以外は全く会話をしなかった。
華恋はなんとか仲良くなりたいと思っているものの、最初に睨まれ握手を無視されたことや航から醸し出される話しかけるなオーラに当てられて何もできなかったのだ。
結局無言のまま新居に到着してしまった。
荷物は顔合わせ中に家に運び込まれていたらしく、家具も一通り揃えられていた。
とりあえず今日は疲れたのでお風呂だけ入って寝ることにした。
一応寝室にキングサイズのベッドが用意されていたのだが、お互い今の気まずい雰囲気の中一緒に寝るきにならず各自部屋にも用意されていたシングルベッドで寝ることにした。『戦略結婚』だからか、とりあえずシングルベッドを用意してくれていて助かった……。
「航様、おやすみなさいませ」
華恋が挨拶をするが、航は無視を決め込む。
諦めて部屋を出ていこうとした時、航がようやく口を開いた。
「俺はお前と馴れ合うつもりはない。あくまで親同士が決めた『戦略結婚』だからな。お前は俺の邪魔にならないよう静かに過ごせよ」
――あぁ……
華恋は落胆した。
もしかしたらと、期待していたのに。
結局どこに行っても変わらないのだ。
もう、期待するのはやめよう。
華恋は笑顔を貼り付けそのまま部屋を出た。
もういい、もういいのだ。諦めるよう。
ここで静かに一生を終えよう。
航様も、悪い人ではない。
お互いが干渉しすぎなければ良い関係を築けるはずなのだ。
華恋は胸の奥のズキリとした痛みに気づかないふりをして、布団を頭から被りそのまま眠りについた。
