白蛇様の溺愛

「園田様、お久しぶりです」
「御影様こそ、今日は本当にありがとうございます」
「いえいえ、こちらも急なお願いでしたのに聞いていただいて――」
 入ってそうそう、父親同士が握手をしながら挨拶を始めた。華恋は知らなかったが、ここ数年で御影家と業務提携していたらしく、その関係で父親同士はとても仲がいいそうだ。
 華恋はお父様を横目にぐるりと部屋の内装を見渡す。中央に大きな机があり、上にはシャンデリア、下には赤いカーペット。まるで本の中のお城のようだと感動した。
 周りはみんな慣れているらしく、見渡していた華恋が目立ってしまった。後ろからお母様にパシリと叩かれる。『はしたないですよ!』という幻聴も聞こえてきた。そろそろ本当に怒られるだろう。
 大人しく座ろうとしたところで、目の前に若い男性が現れた。

 前髪を後ろに立て、端正な顔立ちがよく目立つ。
 お父様と握手をしているのが御影家当主、その横でニコニコと微笑みながら立っている美しい女性が奥様だとすると、目の前にいる彼が……
「航様……ですか?」
「……貴方が華恋様か」
 美人の真顔が怖いというのは本当らしい。一応今日籍を入れる筈の旦那様は、腕を組みながらジロリと華恋を睨んでいた。
 ビクリと身体を震えさせながらも、華恋は勇気を振り絞って笑顔で握手を求めた。しかし、航は華恋の出した右手を一瞬見たあと、ふんっ! と踵を返してしまった。
 華恋が行き場を失った右手をどうするか焦っていると、後ろで誠が必死に笑いをこらえているのがわかった。我慢しているつもりらしいが、「ぐふっ……ゔゔんっ!」という声が丸聞こえだし、咳で誤魔化そうとしたのもバレバレだ。お母様も影で一瞬頭を抱えていた。

 そんなこんなで、華恋と航の雰囲気が最悪なまま両家顔合わせが始まった。