「では、申請書を確認させていただきます」
真っ白い、透過率ゼロのパーテーションで区切られたカウンターの一角で、岬はタブレットを操作し、目当ての画像を呼び出した。岬が確認したのと同じ画面が、対面に座った女性の前のエアスクリーンにも表示される。
「使用者は中村文香様。使用開始日は二四〇八年八月一日午前九時。完了日は同年九月一日の午前九時まで。派遣型式は二三八三年七月八日没の相沢道雄様。二三八三年七月一日時点のメモリーチップ内蔵のこちらでよろしいでしょうか」
画面に映し出されたのは、日に焼けた肩幅の広い一人の青年の画像だ。彼を目にしたとたん、カウンターの向こうで女性が思わずと言うように片手で口元を覆った。
「本当に……本当にそっくりなんですね……」
「もちろんです。再現度は九八パーセントと自負しておりますので。もちろん、残り二パーセントの誤差がないわけではありませんが、ご指摘いただければ即座に修正いたします」
淀みなく説明すると、女性は肩から滑り落ちたウェーブのかかった髪を柔らかく揺らした。
「いえ。こちらで結構です」
「承知いたしました。では注意事項についてご説明いたします」
岬は再びタブレットを操作し、注意事項が列挙された画面を女性の前にも表示させる。
「まず、ご使用期限ですが、いかなる場合でも延長はいたしません。もっとも期限を過ぎてしまいますと、制御システムが自動的に働くため、機能が完全に停止しますのでご使用と申しましても、マネキンと変わらない状態となります。機能停止の状態でも構わないのでそばにおきたい、とおっしゃる方も中にはいらっしゃいますが、こちらも一切認めておりませんので、どうぞご承知おきください」
「わかりました」
厳かに頷く女性に岬も頷き返し、次の項目の説明に移る。
「次に、期限内にQODを実行できなかった場合ですが、先の条項で申し上げた通り、延長ができないことと共に、今後一切Q2の申請はできなくなります。申請が可能なのは生涯に一度です。本日ご説明をさせていただいた内容をご理解いただき、そのうえでQODが難しいと判断された場合は、申し訳ありませんが、使用開始日の一週間前までにキャンセルをお願いいたします。開始一週間を切ってのキャンセルとなりますと、今後一切、申請を受けつけることができなくなりますので、こちらもご承知おきください」
「それは……もし、実行できなかったら、自分で実行しないといけない、ということですよね」
女性の顔に影が落ちる。岬は突き放すように聞こえないよう、注意深く答えた。
「しないといけない、ということではありません。現に実行されず、四〇〇歳を超えて生活されている方もいらっしゃいます。自分で選ぶ、という意味では、Q2を使用することとそれほど大差はありませんよ」
「四〇〇歳……」
呆然と繰り返した彼女を見て、しまった、と内心後悔する。この仕事について二十年と少し、まだまだ自分は人の気持ちを汲むのが下手だ。
「いえ、大丈夫です。そういう方も大勢いらっしゃいますし、それに……」
言い募ろうとする岬の肩が、ぽん、と叩かれる。ふっと目を上げると、岬の直属の上司である水神千早が白皙に笑みをたゆたわせて見下ろしていた。彼は岬にだけわかるようにちらっと目配せをして、隣にするりと座った。
「お話中、失礼いたします。副担当の水神です。よろしくお願いいたしします」
「あ、ええ……」
怪訝そうな彼女に千早はにっこりと微笑みかけて口を開いた。
「雨宮から説明があったと思いますが、Q2の目的はQODです。ですが、ご利用いただく方の約三〇パーセントがQODを実行しないというデータもあります。QODを実行しようと覚悟を決めていても、踏み切れないということは多々ありますから。Q2を再度貸し出しできないようにしている理由はそこなのです。本来、死とはそうそう気楽に選ぶものではありませんから」
千早は薄い唇にうっすらと笑みを刻んで続けた。
「今の時代、無理に死を選ぶ必要はありません。心ひとつでどのようにでも生きていけます。QODを終着点として考えるのではなく、ただのひとつの選択肢としてとらえ、実行できなかったのならまだ自分にはできることがあるはずだ、と考えて進むことこそ、意味があると思いませんか」
「でも……四〇〇歳は長すぎます。うちは主人がQODを選択して今はもう私ひとりですし、あと二〇〇年以上、ひとりで生きるなんて……」
「ひとりかどうかはわかりませんよ。それこそ二〇〇年もあるのですから。人生、なにが起こるのか、それは誰にもわかりません。僕たち人間は、本当はもっとその未知の可能性に目を向けるべきかもしれませんね」
ですが、と千早は、女性と自分達の間を隔てる半透明のスクリーンに目をやった。そこには今も肩幅の広い、あの青年の画像が映し出されている。
「自分の終着点を決めて、共にありたいと願う方と最期のときを迎えることだって決して悪いことではありません。Q2の使用を決めた方の多くが、事故や事件、あるいは空虚病でご家族や愛する方を亡くした方なのです。そういう方にとって、Q2を利用することは、亡くした方ともう一度会うためであることがほとんどなのですよ。QODはおまけのようなものです」
そう言って、千早はもう一度にっこりと微笑んだ。
「もうこの世にはいない愛する人と、生涯に一度だけ会うこと。それがQ2の本質です。あとはいつその人と会うか、その先の人生をその人なしでも生きていけるかいけないか。それを考えることこそが肝要なんですよ」
「やっぱり」
申請をし終わった女性がエレベーターに乗り込み、ドアが閉じたと同時に岬は毒づいた。
「さすが死神」
「人聞きの悪い」
ドアが完全に閉まったところで頭を上げた千早は大げさに肩をすくめた。
「大体、俺の名前は死神ではなく、水神。言い間違えられるのは困る」
「言い間違いじゃなくて、あなたのその申請させようとする話術を敬して、死神って言ったの」
「ひどいな」
苦笑いしながら千早は事務所に戻っていく。後に続きつつ、岬はぶつぶつと言った。
「あの言い方じゃQ2の申請、せざるを得ないじゃない。中村さん、まだ迷ってたみたいなのに」
「迷っていたけど、そろそろいいかなって思ったから来たんだよ、彼女は」
大体、と千早はカウンターの奥のミーティングスペースの椅子を引いて座る。
「気づいた? 中村さんが最期に会いたいのは旦那さんじゃなかった」
「気づいてるけど。それがなに」
「にぶいな。岬は」
呆れたように目を見張られ、岬はむっとする。
「よくあることじゃない。そんなの。結婚しても忘れられない人がいるのなんて珍しくない」
「岬もそのタイプ?」
真顔で問われ、岬は赤面し、千早から顔を逸らす。
「結婚してないし」
ぼそりと言うと沈黙が返ってきた。まずい、と思いつつ、そろそろと千早の方を窺うと、千早はうっすらと笑んでこちらを眺めていた。
「結婚、しようか。そろそろ」
「は?」
思わず頓狂な声を上げて椅子から文字通り飛び上がると、なにもそんなに驚かなくても、と千早が頭をかいた。
「しまった。こんな変なタイミングで言うつもりじゃなかったんだけど。思わず言ってしまった」
「言ってしまったって……」
言いつつ、岬は辺りをそっと見回す。幸いにも事務所にいるほかのメンバーは誰もこの会話に気がついていないようだ。
「なんでこんなところで言うのよ」
「誰も聞いてない聞いてない」
千早は涼しい顔で立ち上がり、事務所の横に設置されているコーヒーメーカーに近づき、紙コップにコーヒーを注ぐ。二つ分注いでから、彼はそれを両手に持って戻ってきた。
「中村さんはともかく、俺は最期は岬と会いたいと思うよ」
さらりと言いながら紙コップを目の前に置く千早を、岬は真っ赤になって見上げた。
この人はいつもこんな風だ。飄々としてつかみどころがないくせに、やけにまっすぐに言葉を口にする。
「私だって」
蚊の鳴くような声で呟くと、え? と千早が聞き返す。ああもう、と肩に落ちかかった髪を払い、だから、と立ち上がったときだった。
「雨宮さん」
唐突に別の声が割り込み、我に返った。振り向くと、研究所の先輩、安曇拓海が苦笑いをして立っていた。
「高崎様の使用許諾、完了したから。予定通り、七月五日で納品手配をお願いします」
笑いを滲ませた声で業務連絡をされ、岬は赤面して椅子に座り直した。
「勘弁してください。ほんと」
「だって」
安曇は、もう我慢できない、と言って笑い出した。
「ここ職場。わかってるか? 二人とも」
「すみません……」
ますます赤くなって俯く横で千早はけろりとした顔でコーヒーをすすっている。じゃあよろしくね、と肩を揺らしながら安曇が去っていくと同時に、岬は千早を睨んだ。
「大体、なんで千早がここにいるわけ。今日、受付担当じゃないでしょ」
「ラボの方が一息ついたからちょっと覗いただけだよ。来てよかっただろ」
紙コップをかたん、とテーブルに戻しながら言う彼は得意げだ。ぐうの音も出ず、岬は黙り込んだ。
確かに、千早が担当の日は受付でのトラブルがまずない。訪れる人々はほぼ百パーセント、申請を行って帰っていく。上からの命令で、窓口業務を行う際はスーツ着用が義務付けられているが、彼がトレードマークのように黒いスーツを身にまとっていることともあいまって、千早は所内で「死神」と呼ばれている。
厚生労働省生命管理課QOD申請係 兼 Q2開発研究所 東京海浜第二支部。
QOD。クオリティー・オブ・ダイイング。いかにしてよりよい死を迎えるか。生と同じくらい死が重要視された現代において、安定した死を国民に提供するための研究、およびフォローを目的に作られたこの研究所が、岬と千早の職場であった。
―――第一話完―――
真っ白い、透過率ゼロのパーテーションで区切られたカウンターの一角で、岬はタブレットを操作し、目当ての画像を呼び出した。岬が確認したのと同じ画面が、対面に座った女性の前のエアスクリーンにも表示される。
「使用者は中村文香様。使用開始日は二四〇八年八月一日午前九時。完了日は同年九月一日の午前九時まで。派遣型式は二三八三年七月八日没の相沢道雄様。二三八三年七月一日時点のメモリーチップ内蔵のこちらでよろしいでしょうか」
画面に映し出されたのは、日に焼けた肩幅の広い一人の青年の画像だ。彼を目にしたとたん、カウンターの向こうで女性が思わずと言うように片手で口元を覆った。
「本当に……本当にそっくりなんですね……」
「もちろんです。再現度は九八パーセントと自負しておりますので。もちろん、残り二パーセントの誤差がないわけではありませんが、ご指摘いただければ即座に修正いたします」
淀みなく説明すると、女性は肩から滑り落ちたウェーブのかかった髪を柔らかく揺らした。
「いえ。こちらで結構です」
「承知いたしました。では注意事項についてご説明いたします」
岬は再びタブレットを操作し、注意事項が列挙された画面を女性の前にも表示させる。
「まず、ご使用期限ですが、いかなる場合でも延長はいたしません。もっとも期限を過ぎてしまいますと、制御システムが自動的に働くため、機能が完全に停止しますのでご使用と申しましても、マネキンと変わらない状態となります。機能停止の状態でも構わないのでそばにおきたい、とおっしゃる方も中にはいらっしゃいますが、こちらも一切認めておりませんので、どうぞご承知おきください」
「わかりました」
厳かに頷く女性に岬も頷き返し、次の項目の説明に移る。
「次に、期限内にQODを実行できなかった場合ですが、先の条項で申し上げた通り、延長ができないことと共に、今後一切Q2の申請はできなくなります。申請が可能なのは生涯に一度です。本日ご説明をさせていただいた内容をご理解いただき、そのうえでQODが難しいと判断された場合は、申し訳ありませんが、使用開始日の一週間前までにキャンセルをお願いいたします。開始一週間を切ってのキャンセルとなりますと、今後一切、申請を受けつけることができなくなりますので、こちらもご承知おきください」
「それは……もし、実行できなかったら、自分で実行しないといけない、ということですよね」
女性の顔に影が落ちる。岬は突き放すように聞こえないよう、注意深く答えた。
「しないといけない、ということではありません。現に実行されず、四〇〇歳を超えて生活されている方もいらっしゃいます。自分で選ぶ、という意味では、Q2を使用することとそれほど大差はありませんよ」
「四〇〇歳……」
呆然と繰り返した彼女を見て、しまった、と内心後悔する。この仕事について二十年と少し、まだまだ自分は人の気持ちを汲むのが下手だ。
「いえ、大丈夫です。そういう方も大勢いらっしゃいますし、それに……」
言い募ろうとする岬の肩が、ぽん、と叩かれる。ふっと目を上げると、岬の直属の上司である水神千早が白皙に笑みをたゆたわせて見下ろしていた。彼は岬にだけわかるようにちらっと目配せをして、隣にするりと座った。
「お話中、失礼いたします。副担当の水神です。よろしくお願いいたしします」
「あ、ええ……」
怪訝そうな彼女に千早はにっこりと微笑みかけて口を開いた。
「雨宮から説明があったと思いますが、Q2の目的はQODです。ですが、ご利用いただく方の約三〇パーセントがQODを実行しないというデータもあります。QODを実行しようと覚悟を決めていても、踏み切れないということは多々ありますから。Q2を再度貸し出しできないようにしている理由はそこなのです。本来、死とはそうそう気楽に選ぶものではありませんから」
千早は薄い唇にうっすらと笑みを刻んで続けた。
「今の時代、無理に死を選ぶ必要はありません。心ひとつでどのようにでも生きていけます。QODを終着点として考えるのではなく、ただのひとつの選択肢としてとらえ、実行できなかったのならまだ自分にはできることがあるはずだ、と考えて進むことこそ、意味があると思いませんか」
「でも……四〇〇歳は長すぎます。うちは主人がQODを選択して今はもう私ひとりですし、あと二〇〇年以上、ひとりで生きるなんて……」
「ひとりかどうかはわかりませんよ。それこそ二〇〇年もあるのですから。人生、なにが起こるのか、それは誰にもわかりません。僕たち人間は、本当はもっとその未知の可能性に目を向けるべきかもしれませんね」
ですが、と千早は、女性と自分達の間を隔てる半透明のスクリーンに目をやった。そこには今も肩幅の広い、あの青年の画像が映し出されている。
「自分の終着点を決めて、共にありたいと願う方と最期のときを迎えることだって決して悪いことではありません。Q2の使用を決めた方の多くが、事故や事件、あるいは空虚病でご家族や愛する方を亡くした方なのです。そういう方にとって、Q2を利用することは、亡くした方ともう一度会うためであることがほとんどなのですよ。QODはおまけのようなものです」
そう言って、千早はもう一度にっこりと微笑んだ。
「もうこの世にはいない愛する人と、生涯に一度だけ会うこと。それがQ2の本質です。あとはいつその人と会うか、その先の人生をその人なしでも生きていけるかいけないか。それを考えることこそが肝要なんですよ」
「やっぱり」
申請をし終わった女性がエレベーターに乗り込み、ドアが閉じたと同時に岬は毒づいた。
「さすが死神」
「人聞きの悪い」
ドアが完全に閉まったところで頭を上げた千早は大げさに肩をすくめた。
「大体、俺の名前は死神ではなく、水神。言い間違えられるのは困る」
「言い間違いじゃなくて、あなたのその申請させようとする話術を敬して、死神って言ったの」
「ひどいな」
苦笑いしながら千早は事務所に戻っていく。後に続きつつ、岬はぶつぶつと言った。
「あの言い方じゃQ2の申請、せざるを得ないじゃない。中村さん、まだ迷ってたみたいなのに」
「迷っていたけど、そろそろいいかなって思ったから来たんだよ、彼女は」
大体、と千早はカウンターの奥のミーティングスペースの椅子を引いて座る。
「気づいた? 中村さんが最期に会いたいのは旦那さんじゃなかった」
「気づいてるけど。それがなに」
「にぶいな。岬は」
呆れたように目を見張られ、岬はむっとする。
「よくあることじゃない。そんなの。結婚しても忘れられない人がいるのなんて珍しくない」
「岬もそのタイプ?」
真顔で問われ、岬は赤面し、千早から顔を逸らす。
「結婚してないし」
ぼそりと言うと沈黙が返ってきた。まずい、と思いつつ、そろそろと千早の方を窺うと、千早はうっすらと笑んでこちらを眺めていた。
「結婚、しようか。そろそろ」
「は?」
思わず頓狂な声を上げて椅子から文字通り飛び上がると、なにもそんなに驚かなくても、と千早が頭をかいた。
「しまった。こんな変なタイミングで言うつもりじゃなかったんだけど。思わず言ってしまった」
「言ってしまったって……」
言いつつ、岬は辺りをそっと見回す。幸いにも事務所にいるほかのメンバーは誰もこの会話に気がついていないようだ。
「なんでこんなところで言うのよ」
「誰も聞いてない聞いてない」
千早は涼しい顔で立ち上がり、事務所の横に設置されているコーヒーメーカーに近づき、紙コップにコーヒーを注ぐ。二つ分注いでから、彼はそれを両手に持って戻ってきた。
「中村さんはともかく、俺は最期は岬と会いたいと思うよ」
さらりと言いながら紙コップを目の前に置く千早を、岬は真っ赤になって見上げた。
この人はいつもこんな風だ。飄々としてつかみどころがないくせに、やけにまっすぐに言葉を口にする。
「私だって」
蚊の鳴くような声で呟くと、え? と千早が聞き返す。ああもう、と肩に落ちかかった髪を払い、だから、と立ち上がったときだった。
「雨宮さん」
唐突に別の声が割り込み、我に返った。振り向くと、研究所の先輩、安曇拓海が苦笑いをして立っていた。
「高崎様の使用許諾、完了したから。予定通り、七月五日で納品手配をお願いします」
笑いを滲ませた声で業務連絡をされ、岬は赤面して椅子に座り直した。
「勘弁してください。ほんと」
「だって」
安曇は、もう我慢できない、と言って笑い出した。
「ここ職場。わかってるか? 二人とも」
「すみません……」
ますます赤くなって俯く横で千早はけろりとした顔でコーヒーをすすっている。じゃあよろしくね、と肩を揺らしながら安曇が去っていくと同時に、岬は千早を睨んだ。
「大体、なんで千早がここにいるわけ。今日、受付担当じゃないでしょ」
「ラボの方が一息ついたからちょっと覗いただけだよ。来てよかっただろ」
紙コップをかたん、とテーブルに戻しながら言う彼は得意げだ。ぐうの音も出ず、岬は黙り込んだ。
確かに、千早が担当の日は受付でのトラブルがまずない。訪れる人々はほぼ百パーセント、申請を行って帰っていく。上からの命令で、窓口業務を行う際はスーツ着用が義務付けられているが、彼がトレードマークのように黒いスーツを身にまとっていることともあいまって、千早は所内で「死神」と呼ばれている。
厚生労働省生命管理課QOD申請係 兼 Q2開発研究所 東京海浜第二支部。
QOD。クオリティー・オブ・ダイイング。いかにしてよりよい死を迎えるか。生と同じくらい死が重要視された現代において、安定した死を国民に提供するための研究、およびフォローを目的に作られたこの研究所が、岬と千早の職場であった。
―――第一話完―――



