第135話 風呂用洗剤のせいにして
(魚座君♂x双子座ちゃん♀)
新学期の一週間目、体育館の裏口で、校庭に風が走っていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
告白の返事を伝えた次の週、純平は小さなものを大事に扱う。陽葵はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は玄関のにおいを消す。手元には風呂用洗剤があり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
取りかかった瞬間、思わぬ引っかかりが出てきた。陽葵が「ここ、引っかかる」と指さす。純平は返事の代わりにうなずき、風呂用洗剤を手に取った。
純平は相手の言葉を受け止めてうなずく。力の入れ方を見せてから、陽葵の手の上に自分の手をそっと重ね、「このくらい」と角度を示す。陽葵は話しながら手も止めない、真剣な目で真似をした。
うまくいった瞬間、陽葵の口から「ねえ、これ知ってる?」がこぼれた。純平は「でしょ」と笑い、でも目線は外して照れを隠す。二人の間に残ったのは、道具の音と、少し早い鼓動だった。
片づけの最中、風呂用洗剤が机から転がりそうになり、純平が反射で押さえた。その手の速さに陽葵が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。純平は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
最後の確認をしていると、陽葵が「ありがとう」とはっきり言った。純平は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で陽葵の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
帰り道、純平は「次は陽葵のやりたいことを先に聞く」と言った。陽葵は少し考えてから、風呂用洗剤を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の言葉にしなくても、伝わるものが増えた。
【終】
(魚座君♂x双子座ちゃん♀)
新学期の一週間目、体育館の裏口で、校庭に風が走っていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
告白の返事を伝えた次の週、純平は小さなものを大事に扱う。陽葵はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は玄関のにおいを消す。手元には風呂用洗剤があり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
取りかかった瞬間、思わぬ引っかかりが出てきた。陽葵が「ここ、引っかかる」と指さす。純平は返事の代わりにうなずき、風呂用洗剤を手に取った。
純平は相手の言葉を受け止めてうなずく。力の入れ方を見せてから、陽葵の手の上に自分の手をそっと重ね、「このくらい」と角度を示す。陽葵は話しながら手も止めない、真剣な目で真似をした。
うまくいった瞬間、陽葵の口から「ねえ、これ知ってる?」がこぼれた。純平は「でしょ」と笑い、でも目線は外して照れを隠す。二人の間に残ったのは、道具の音と、少し早い鼓動だった。
片づけの最中、風呂用洗剤が机から転がりそうになり、純平が反射で押さえた。その手の速さに陽葵が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。純平は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
最後の確認をしていると、陽葵が「ありがとう」とはっきり言った。純平は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で陽葵の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
帰り道、純平は「次は陽葵のやりたいことを先に聞く」と言った。陽葵は少し考えてから、風呂用洗剤を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の言葉にしなくても、伝わるものが増えた。
【終】


