その日琴乃は、涼しげな水色の浴衣姿で来た。私はいつもにも増してドキッとした。ただですら大人びていた琴乃が、さらに大人っぽくて、色っぽく感じられたからだ。
「片瀬君、お待たせ」
琴乃は私に言った。
「あ、うん」
私は返事にならない返事をしてしまった。私たちは一緒に金魚すくいや、的当てゲームをして、二人でお祭りを楽しんだ。梅雨が明けて、暑い夏の夜だった。私たちはかき氷を買って食べ、少し身体を冷やした。
「このまま七月が何事もなく終わって、生き延びられたらいいのに!」
琴乃は言った。私は今そのことを思い出した。
「同感だよ。本当にそうだね!」
私は言った。
「あ、もしかして、ノストラダムスの大予言のこと忘れていた?」
琴乃は私に尋ねた。
「いや、そんなことないよ」
私は琴乃に答えた。
「顔に書いてあるよ。片瀬君は、絶対ウソがつけないよ! すぐに顔に現れるから。ふふふ」
琴乃はそう言って私を笑った。
「そうかな?」
私は苦笑いしながら言った。
「そうだよ!」
琴乃は畳みかけるように言った。
「もしこのまま何事もなく八月を迎えられたら、片瀬君は何をしたい?」
琴乃は私にそう尋ねた。
「海に行きたい!」
私はそう答えた。すると琴乃は寂しそうな顔をした。
「どうしたの、高山さん?」
私は琴乃に尋ねた。
「ごめんなさい、片瀬君。何でもない。夏だから海って、普通考えるよね」
琴乃はなおも顔色を引きつらせながら言った。琴乃なりに私を庇ったようだった。
「高山さん、少し休もうか? やっぱり顔色悪いよ」
私は琴乃を気遣って言った。
「大丈夫だよ、片瀬君。気を遣ってくれてありがとう。それで誰と海に行きたいの?」
琴乃はそう私に聞いた。
「高山さんと一緒に行きたい!」
私は即答した。すぐに私はまたもや失言したと後悔した。案の定、琴乃はまた亡くなった彼氏のことを思い出し、トラウマでフラッシュバックしてしまったようだった。
「高山さんは、八月があるなら何がしたい?」
私は琴乃に聞いた。私なりに琴乃に気を利かせたつもりだったが、琴乃はさらに顔色が悪くなった。
「もう何もしたくない」
琴乃はそう言い残して、その場を走り去ってしまった。
私は空気が読めず、失敗した。結局一九九九年七月は何も起こらなかったが、その年の九月に、琴乃は転校してしまった。本当の理由は安乃に聞いても、答えてもらえなかった。担任の安東先生によると、別の保護者が北海道に見つかったようだからだそうだと言っていた。私にとっては、甘酸っぱい一九九九年七月の記憶になってしまった。
完
「片瀬君、お待たせ」
琴乃は私に言った。
「あ、うん」
私は返事にならない返事をしてしまった。私たちは一緒に金魚すくいや、的当てゲームをして、二人でお祭りを楽しんだ。梅雨が明けて、暑い夏の夜だった。私たちはかき氷を買って食べ、少し身体を冷やした。
「このまま七月が何事もなく終わって、生き延びられたらいいのに!」
琴乃は言った。私は今そのことを思い出した。
「同感だよ。本当にそうだね!」
私は言った。
「あ、もしかして、ノストラダムスの大予言のこと忘れていた?」
琴乃は私に尋ねた。
「いや、そんなことないよ」
私は琴乃に答えた。
「顔に書いてあるよ。片瀬君は、絶対ウソがつけないよ! すぐに顔に現れるから。ふふふ」
琴乃はそう言って私を笑った。
「そうかな?」
私は苦笑いしながら言った。
「そうだよ!」
琴乃は畳みかけるように言った。
「もしこのまま何事もなく八月を迎えられたら、片瀬君は何をしたい?」
琴乃は私にそう尋ねた。
「海に行きたい!」
私はそう答えた。すると琴乃は寂しそうな顔をした。
「どうしたの、高山さん?」
私は琴乃に尋ねた。
「ごめんなさい、片瀬君。何でもない。夏だから海って、普通考えるよね」
琴乃はなおも顔色を引きつらせながら言った。琴乃なりに私を庇ったようだった。
「高山さん、少し休もうか? やっぱり顔色悪いよ」
私は琴乃を気遣って言った。
「大丈夫だよ、片瀬君。気を遣ってくれてありがとう。それで誰と海に行きたいの?」
琴乃はそう私に聞いた。
「高山さんと一緒に行きたい!」
私は即答した。すぐに私はまたもや失言したと後悔した。案の定、琴乃はまた亡くなった彼氏のことを思い出し、トラウマでフラッシュバックしてしまったようだった。
「高山さんは、八月があるなら何がしたい?」
私は琴乃に聞いた。私なりに琴乃に気を利かせたつもりだったが、琴乃はさらに顔色が悪くなった。
「もう何もしたくない」
琴乃はそう言い残して、その場を走り去ってしまった。
私は空気が読めず、失敗した。結局一九九九年七月は何も起こらなかったが、その年の九月に、琴乃は転校してしまった。本当の理由は安乃に聞いても、答えてもらえなかった。担任の安東先生によると、別の保護者が北海道に見つかったようだからだそうだと言っていた。私にとっては、甘酸っぱい一九九九年七月の記憶になってしまった。
完



