翌朝私は、また誰かの記憶が蘇ってきた。その記憶は、また誰かの幼少期の記憶だった。それはおばさんの家事手伝いをしている女の子の記憶で、自分だけが遊びに行けない不満の記憶から始まった。しかしそのおばさんは、彼女が他の子たちよりも早く自立する日が来ることを見越して、家事手伝いをさせているようだった。初めはそんなおばさんの気持ちも分からず、すねていた記憶。しかし年齢を重ねるにつれて、そのおばさんの気持ちを理解し出す彼女。今はそんなおばさんへの感謝の思いでいっぱいの気持ちだった。だから部活に入れなかったが、後悔していないようだった。そしておばさんを楽にさせるために、特待優秀奨学生を目指して、勉強に励む彼女。うん。ちょっと待った。この記憶って、もしかして!
私は驚いた。まさしくこれは琴乃の記憶なのではないか? そんな疑念が私にわいた。しかし本当にこれが琴乃の記憶だとしたら? この日から私は琴乃を、今まで以上の尊敬の念を持って見だした。こんな未熟な自分など、彼女に相手にされないだろうと私は思った。
しかしそれでも私の頭の中は、琴乃のことでいっぱいだった。私は記憶の持ち主である可能性が高い琴乃に、そのことは言えなかった。それで誰かに相談しようと思い、友人の農家京悟に、記憶のことを相談した。
「京悟、話がある。放課後帰るとき相談に乗ってくれない?」
私は懇願した。
「一時間五千円な」
京悟は私をからかった。
「そう言わずに、京悟さん、頼むよ!」
私は下手に出た。
「まあ、しょうがないニャン、お前の頼みなら聞いてやるよ!」
校庭に入ってきた近所の猫を見ながら、京悟は偉そうに言った。
放課後ひかりが丘団地商店街に向かって帰宅途中、私は今までの記憶のことを正直に京悟に話した。
「お前、それいつからだよ?」
京悟はぶっきらぼうに聞いてきた。
「えっと、ゴールデンウイーク明けてからかな」
私は答えた。
「やっぱな?」
京悟は言った。
「え?」
私は驚いた。
「あのとき熊に襲われてからだな。お前記憶がいっときぶっとんだだろ?」
京悟は真面目な顔で聞いてきた。
「うん」
私は頷いた。
「そんなことがあるのか? 不思議だな。お前その記憶の主には、そのことをまだ話していないだろ?」
京悟は怖い目つきで言った。
「うん」
私は答えた。
「絶対に彼女には言うなよ! もしそのことを話したら驚くし、お前のことを不審者扱いするから、絶対に彼女には言うなよ! いいな?」
京悟は念を押して、私に圧力をかけながら言った。
「分かった」
私は一言答えた。
「そこでだ。大輔! お前は彼女の記憶があるが故に、彼女が好きならその能力を絶対活かせよ!」
京悟はさらに熱を帯びてきた。
「どういうこと?」
私は京悟に尋ねた。
「お前は鈍感な奴だな! 好きな人の記憶があるなら、それを活かして彼女と話せばいい。ただしその記憶を悪用するなよ!」
「分かったよ。そういえば京悟? 僕の好きな相手が琴乃ちゃんって、いつ分かったの? まだ京悟には言ってなかったはずだけど」
私は京悟に尋ねた。
「お前は、俺と何年の付き合いだよ? 俺たち幼馴染みだろ? お前の顔色見てりゃ、すぐ分かるさ!」
京悟はあっけらかんとして言った。
「そんなものなのか? 気をつけなきゃ、京悟の前じゃ!」
私は幼馴染みとはいえ、京悟がそこまで自分のことを分かっているとは思ってもみなかった。
それは六月の初旬だった。世間は一ヶ月後の一九九九年七月のことで話題は持ちきりだった。ノストラダムスの大予言によると、この年の七月で人類は滅亡すると言われていた。あと一ヶ月で人類が滅亡するなら、その前に思い切って琴乃に告白しようと私は思った。私は琴乃へラブレターを書き、放課後彼女に直接渡した。
「高山さん、この手紙後で読んでください。七月になる前にだけど」
私は緊張しながら手渡した。
「ふふふ。何それ? 七月になる前には読むし、何なら今夜読む」
琴乃はそう言って微笑んで、その場を後にした。
どうせあと一ヶ月の命なら、今のうちに青春しておこうと私は考えた。もしもノストラダムスの大予言なんてなかったら、小心者の私がこんなにも大胆にはなれなかっただろう。私は勢いで琴乃に告白してしまった。
私は驚いた。まさしくこれは琴乃の記憶なのではないか? そんな疑念が私にわいた。しかし本当にこれが琴乃の記憶だとしたら? この日から私は琴乃を、今まで以上の尊敬の念を持って見だした。こんな未熟な自分など、彼女に相手にされないだろうと私は思った。
しかしそれでも私の頭の中は、琴乃のことでいっぱいだった。私は記憶の持ち主である可能性が高い琴乃に、そのことは言えなかった。それで誰かに相談しようと思い、友人の農家京悟に、記憶のことを相談した。
「京悟、話がある。放課後帰るとき相談に乗ってくれない?」
私は懇願した。
「一時間五千円な」
京悟は私をからかった。
「そう言わずに、京悟さん、頼むよ!」
私は下手に出た。
「まあ、しょうがないニャン、お前の頼みなら聞いてやるよ!」
校庭に入ってきた近所の猫を見ながら、京悟は偉そうに言った。
放課後ひかりが丘団地商店街に向かって帰宅途中、私は今までの記憶のことを正直に京悟に話した。
「お前、それいつからだよ?」
京悟はぶっきらぼうに聞いてきた。
「えっと、ゴールデンウイーク明けてからかな」
私は答えた。
「やっぱな?」
京悟は言った。
「え?」
私は驚いた。
「あのとき熊に襲われてからだな。お前記憶がいっときぶっとんだだろ?」
京悟は真面目な顔で聞いてきた。
「うん」
私は頷いた。
「そんなことがあるのか? 不思議だな。お前その記憶の主には、そのことをまだ話していないだろ?」
京悟は怖い目つきで言った。
「うん」
私は答えた。
「絶対に彼女には言うなよ! もしそのことを話したら驚くし、お前のことを不審者扱いするから、絶対に彼女には言うなよ! いいな?」
京悟は念を押して、私に圧力をかけながら言った。
「分かった」
私は一言答えた。
「そこでだ。大輔! お前は彼女の記憶があるが故に、彼女が好きならその能力を絶対活かせよ!」
京悟はさらに熱を帯びてきた。
「どういうこと?」
私は京悟に尋ねた。
「お前は鈍感な奴だな! 好きな人の記憶があるなら、それを活かして彼女と話せばいい。ただしその記憶を悪用するなよ!」
「分かったよ。そういえば京悟? 僕の好きな相手が琴乃ちゃんって、いつ分かったの? まだ京悟には言ってなかったはずだけど」
私は京悟に尋ねた。
「お前は、俺と何年の付き合いだよ? 俺たち幼馴染みだろ? お前の顔色見てりゃ、すぐ分かるさ!」
京悟はあっけらかんとして言った。
「そんなものなのか? 気をつけなきゃ、京悟の前じゃ!」
私は幼馴染みとはいえ、京悟がそこまで自分のことを分かっているとは思ってもみなかった。
それは六月の初旬だった。世間は一ヶ月後の一九九九年七月のことで話題は持ちきりだった。ノストラダムスの大予言によると、この年の七月で人類は滅亡すると言われていた。あと一ヶ月で人類が滅亡するなら、その前に思い切って琴乃に告白しようと私は思った。私は琴乃へラブレターを書き、放課後彼女に直接渡した。
「高山さん、この手紙後で読んでください。七月になる前にだけど」
私は緊張しながら手渡した。
「ふふふ。何それ? 七月になる前には読むし、何なら今夜読む」
琴乃はそう言って微笑んで、その場を後にした。
どうせあと一ヶ月の命なら、今のうちに青春しておこうと私は考えた。もしもノストラダムスの大予言なんてなかったら、小心者の私がこんなにも大胆にはなれなかっただろう。私は勢いで琴乃に告白してしまった。



