あれは、ノストラダムスの大予言で世間が混乱に陥っていた一九九九年の淡い記憶だった。私、片瀬(かたせ)大輔(だいすけ)は横浜市内のとある公立高校に、一九九九年四月に入学した。その頃の私といえば、野球部でもいない帰宅部なのに、髪の毛をいつも坊主にしていた。そんな一重まぶたの坊主の私を、面白おかしく、女子たちはからかってきた。それで少し髪を伸ばし始めた。私は特に入りたい部活がなかったので、帰宅部になった。そんな私には、手の届かないような存在の女の子がいた。どうして手が届かないかというと、彼女は同年代の誰よりも大人びていた。だから私のようなガキを、相手にしてくれるなんて思ってもみなかった。
彼女の名は、高山琴乃(たかやまことの)。ツインテールがよく似合う二重まぶたの美しい女の子だった。彼女はガリ勉で、部活動には入ってなかった。そう私と同じ帰宅部なのである。彼女は学校が終わると、いつも忙しそうにすぐに帰宅していた。初めはその理由がよく分からなかった。しかしひょんなことから、私は彼女の過去を知ってしまう。
それはゴールデンウイーク中だった。私と相撲部の友人の農家(のうか)京(きょう)悟(ご)とで、背筋群に言ったときだった。偶然冬眠から目を覚ました熊に、私は後ろから突き倒された。その直後の記憶はなかった。後に聞いた話だったが、私を倒した熊を京悟が押し倒して、私を救出してくれたようだった。
「おい、大輔! 大丈夫か? 聞こえるか?」
そう京悟が呼ぶので、私は目を覚ました。そこは病院のベッドの上だった。
私は腰の骨に少しひびが入ったようだったが、大けがせずにすんだようだった。
「京悟、ここは?」
私は戸惑いながら京悟に尋ねた。
「ここはって、見れば分かるだろ? 病院だよ!」
京悟は、心配そうに言った。
「京語は、あの熊に襲われなかったのかい?」
私は京悟が心配で、そう聞いた。
「押し倒しで、俺が勝った」
すると京悟は事もなげに、そう答えた。
「すげー!」
私は感嘆した。さすが相撲部だ。
「それで、お前、あの後のこと何も覚えてないのか?」
京悟は私に尋ねた。
「うん」
私は頷いた。
「そうか、まあ仕方ないな。それにしてもヒグマじゃなくて良かった」
京悟は安堵したように言った。
「いやいやツキノワグマでも、押し倒すなんて、京悟ぐらいだよ!」
私は驚きながら言った。
「そうか。そうか」
京悟は照れくさそうに言った。
それはゴールデンウイーク明けの朝だった。突如私の記憶の中に、今まで経験したことのない、自分以外の誰かの記憶が蘇ってきた。その記憶は、大人二人が、車の前方の席で談笑している姿だった。そして私はピンク色のワンピースを着ていた。すると赤い車は衝突事故に巻き込まれ、前方の席に座っていた大人の男女が亡くなり、女の子だけが九死に一生を得た。私はとても悲しい気持ちになっていた。それは、まるで自分の両親を、この幼少期に亡くしたような感覚に陥った。
私は朝から気分が悪くなったが、学校へと向かった。登校すると、その日に限って、琴乃はお休みだった。モデル体型で琴乃の親友、竹内安乃(たけうちやすの)は、その日同級生に琴乃のことを話していた。たまたま大輔は、それが耳に入った。
「安乃ちゃん、琴乃ちゃんて、本当はどういう子なの?」
クラスメートの女子の一人、夏(なつ)野(の)淳子(じゅんこ)は聞いた。
「琴乃は、小さいとき両親交通事故で亡くしたの。それでお母さんの妹さんに、育ててもらっているの。だから家事とかを、小さいときからやっていて、今もそれが変わらないの。だから部活も入れなかったの。それに奨学金をもらわないと大学にも行かせてもらえないから、必死で勉強しているの。まあ今年の七月に何も起こらなければだけど」
安乃は事情を話していたが、急にノストラダムスの大予言を思い出したようだった。
彼女の名は、高山琴乃(たかやまことの)。ツインテールがよく似合う二重まぶたの美しい女の子だった。彼女はガリ勉で、部活動には入ってなかった。そう私と同じ帰宅部なのである。彼女は学校が終わると、いつも忙しそうにすぐに帰宅していた。初めはその理由がよく分からなかった。しかしひょんなことから、私は彼女の過去を知ってしまう。
それはゴールデンウイーク中だった。私と相撲部の友人の農家(のうか)京(きょう)悟(ご)とで、背筋群に言ったときだった。偶然冬眠から目を覚ました熊に、私は後ろから突き倒された。その直後の記憶はなかった。後に聞いた話だったが、私を倒した熊を京悟が押し倒して、私を救出してくれたようだった。
「おい、大輔! 大丈夫か? 聞こえるか?」
そう京悟が呼ぶので、私は目を覚ました。そこは病院のベッドの上だった。
私は腰の骨に少しひびが入ったようだったが、大けがせずにすんだようだった。
「京悟、ここは?」
私は戸惑いながら京悟に尋ねた。
「ここはって、見れば分かるだろ? 病院だよ!」
京悟は、心配そうに言った。
「京語は、あの熊に襲われなかったのかい?」
私は京悟が心配で、そう聞いた。
「押し倒しで、俺が勝った」
すると京悟は事もなげに、そう答えた。
「すげー!」
私は感嘆した。さすが相撲部だ。
「それで、お前、あの後のこと何も覚えてないのか?」
京悟は私に尋ねた。
「うん」
私は頷いた。
「そうか、まあ仕方ないな。それにしてもヒグマじゃなくて良かった」
京悟は安堵したように言った。
「いやいやツキノワグマでも、押し倒すなんて、京悟ぐらいだよ!」
私は驚きながら言った。
「そうか。そうか」
京悟は照れくさそうに言った。
それはゴールデンウイーク明けの朝だった。突如私の記憶の中に、今まで経験したことのない、自分以外の誰かの記憶が蘇ってきた。その記憶は、大人二人が、車の前方の席で談笑している姿だった。そして私はピンク色のワンピースを着ていた。すると赤い車は衝突事故に巻き込まれ、前方の席に座っていた大人の男女が亡くなり、女の子だけが九死に一生を得た。私はとても悲しい気持ちになっていた。それは、まるで自分の両親を、この幼少期に亡くしたような感覚に陥った。
私は朝から気分が悪くなったが、学校へと向かった。登校すると、その日に限って、琴乃はお休みだった。モデル体型で琴乃の親友、竹内安乃(たけうちやすの)は、その日同級生に琴乃のことを話していた。たまたま大輔は、それが耳に入った。
「安乃ちゃん、琴乃ちゃんて、本当はどういう子なの?」
クラスメートの女子の一人、夏(なつ)野(の)淳子(じゅんこ)は聞いた。
「琴乃は、小さいとき両親交通事故で亡くしたの。それでお母さんの妹さんに、育ててもらっているの。だから家事とかを、小さいときからやっていて、今もそれが変わらないの。だから部活も入れなかったの。それに奨学金をもらわないと大学にも行かせてもらえないから、必死で勉強しているの。まあ今年の七月に何も起こらなければだけど」
安乃は事情を話していたが、急にノストラダムスの大予言を思い出したようだった。



