回線のこちら側、アーカイブには残らない話

 あのバズをきっかけに、COREのチャンネルはぐんぐんと伸びていった。チャンネル登録者数は順調に5000人を突破し、同接も500程度取れるようになった。アーカイブだって平均2000は回っている。
 マシュマロから人生相談をする人も増え、男子ばかりだった視聴者の中にちらほら女子が混ざるようになってきた。

「七瀬、人生相談配信をやってみたらいいんじゃないかって思うんだけど、どうかな」
「雑談配信としてってこと? まあ確かに、マシュマロ結構溜まってるよな」
「そうそう。まあリスクは一定あるけど、僕としては今、七瀬のそういう側面が求められてる気がするから。これでCOREの()()なファンを定着させられると思うんだよね」

 僕はさらりと冗談みたく言う。
 アナリティクスの分析を極めたノートは、黒文字でびっしり埋め尽くされている。

「お前、それやめた方がいいぞ」
「そっか、ごめん、やめる」
「……やってみるわ」
「今の間は大丈夫なやつ?」

 結局、「ご飯食べる」と称して人生相談マシュマロを食べ尽くす配信を始めることになった。ありがたいことに、厳選できるくらいには数多くの相談が届いている。二人で配信に載せても大丈夫なもの、七瀬が答えの方向性を掴みやすいものを選び抜いていく。
 ときにはあまりに重すぎるものや、配信には不適切なものも混ざっている。それは申し訳ないが捨て置くことにした。
 配信時、いつも通り僕は自分の部屋でPCとスマホのチャット画面と分析ノートを順々に見比べる。七瀬の声が聞こえてくる。少しずつ慣れてきたこの光景。コーヒーの湯気が、機械だらけの無機質な部屋に生活感を足す。
 マシュマロに対する回答はある程度二人で話し合い、適切でかつ七瀬の本音が見える最善の形を見出した。それ以外の、たとえばスパチャで流れてくる相談などは、お互いの臨機応変な対応で勝負しなければならない。緊張感があるが、それが楽しくもあった。

 このスタイルが功を奏したのか、COREチャンネルはすぐに8000人の登録者を抱える、個人勢としては成功している側にまで上り詰めた。

「個人でやっててよかったよ。大手だったら、こんな吊り橋みたいな配信できないし」
「この時代コンプラコンプラってうるせえしな。まあ個人だって気をつけなきゃいけないけど」
「とにかく、しばらくはこのスタイルで進めよう」

 ちらりと窓から見上げた空は晴れ渡っていて、一筋の飛行機雲が存在を主張していた。