傷だらけの私たちの#五感の旅 ーあの日閉じ込めた心の声ー

「飛行機なんて久しぶり〜! 意外と広くない? 飲み物は何を頼もっかな〜!」

 先生と予定の合う日程を話し合い、八月二日の今日、羽田空港から札幌行きの飛行機に乗り込んだ。急の出発だし夏休みでもあるので、人気の朝イチの便は空いておらず、夕方発、夜着の飛行機に乗り込んだ。
 呆れるくらいはしゃいでいる先生を尻目に、窓際の席に腰掛ける。シートベルトをしっかりと締めて離陸に備えた。

「なんか青葉ちゃん、テンション低くない!? これから北海道に行くんだよ。楽しもうよ」

 先生の声が流れるように耳に響く。“間もなく離陸します。シートベルトをしっかりと着用ください”というような機内アナウンスの音はぼやけていた。
 
「これでも楽しんでます」
 
 手話でそう答えると、先生が「そっかあ」とにんまり笑った。
 普段声を出すことができないので、感情を表に出しづらい。その分他人に——特に同級生には「テンション低くてつまんないやつ」と誤解されることが多いが、内心は違っていることが多々あった。
 先生はそんな私の気苦労も知ってくれているので、手話で伝えるとすぐに納得してくれた。

「さあて、私たちの旅にしゅっぱーつ!」

 飛行機が動き出したと同時に、先生がグーパンチを突き出す。
 こうして十七歳の私と、二十九歳()の先生を乗せた便は札幌へ向けて飛び立っていった。