「だから、俺を羽美にもう一度会わせてくれた青葉ちゃんと晶に感謝だな」
羽美先生の手を握りしめたまま、律さんが私たちのほうを振り返る。私は、夕日に照らされた二人の優しいまなざしを見て、胸に込み上げるものをもう止めることができなかった。
「羽美先生は……私に、言葉をくれました。私を外の世界に連れ出して、心の声にちゃんと耳を傾けてって、教えてくれました。先生がいたから、私は今、ちゃんと音が聞こえるんです。先生は私にとって、とても大切な人です」
私が先生に一番伝えたかったことはそれ以上でもそれ以下でもなかった。
先生が、私にとってどれほど心の支えになっていたか。先生が必死に手話で私に語りかけ、大切な時間を割いて私に勉強を教えてくれたことが、どれだけ私を肯定してくれたか。
先生への気持ちは、憧れや信頼だけじゃない。
大切な家族を想うような気持ちで、私は先生を見ている。
その気持ちを律さんにも伝えられて良かった。先生が、律さんに気持ちを伝えられて良かった。
「青葉ちゃん……私にとっても、青葉ちゃんは大切な人だよ。律に会わせてくれて本当にありがとう。晶くんも、ありがとうね」
二人の温かな想いが私たちの胸に溶けて、私は晶くんと顔を見合わせて、二人して泣いた。
「先生、良かった……本当に良かった……!」
大波が来たかのようにぶわりと涙を流す私。
こんなに……こんなに心の内側から気持ちがあふれてきたのはいつぶりだろう。
音が聞こえなくなってから、人間関係に波風を立てないようにひっそりと生きてきた。
できるだけ感情を抑えて、自分の殻に引きこもって。
でも今、私は確実に自分の殻を打ち破り、むきだしの自分をさらけだしている。
先生が律さんから離れて、私を抱きしめてくれた。先生の匂い。先生の温もり。好きの気持ちは一つじゃなくて、私の中でカラフルに色づき始める。
こんな気持ちがあっても、いいよね。
「良かった。兄貴も羽美さんも、想いを言葉にできて。やっぱり兄貴には羽美さんの隣が一番似合ってる。俺さ……小さい時、母さんが病気になってすげえ悲しくて落ち込んでた。でも、兄貴や羽美さんに遊んでもらった記憶が、今の俺の支えになってるんだ。だから俺のほうこそ、ありがとう」
みんなの“心の声”が、波の音に混じって、それぞれの胸に溶けていく。今この瞬間、私たち四人の間に光の粒が舞っているように、きらきらと光る宝石のような煌めきが見えた気がした。
「さて、“碧海”の沖縄の旅はまだ終わってないですよ」
私は、涙で滲んでいた目元を拭って、三人に向き直る。
私が作った『旅カードNo.15』の沖縄の旅は明日まで続くのだ。最後の時間は先生と律さん、晶くんと私の四人で楽しみたい。
「#五感の旅、ラスト一日楽しみましょう」
私は、海に沈んでいく夕日を見つめながら、一際明るい声を上げる。旅に出る前は、まさか自分が喋れるようになるなんて思ってもみなかった。
そうだ。私はずっと、他人のネガティブな心の声が聞こえることに怯えて、前を見ることを諦めていた。心を閉じて、他人と関わることを避け、傷つかないようにひっそりと息をして。でも、そうしているうちに自分の心の声にすら耳を傾けることができなくなってしまっていたのだ。
だけど、#五感の旅を通して、私は自分自身の声に敏感になっていることを実感した。先生の心の声にも。訪れたたくさんの場所で見た大自然の景色や、出会った人たちの言葉が、この先も私の胸に残り続けるだろう。
「行きましょう、私たちの旅へ」
先生や律さん、晶くんが頷くのを見て、私は心がほっと和やかに変わっていく。凪いだ海の黄金色に染まる水面は、今まで見た景色の中で一番美しいと思った。
【8/17 沖縄の旅で、大切な人が大好きな人に、胸に秘めた想いを伝えていました。二人のこの先の未来で、どうかお互いの気持ちを心の奥底に閉じ込めなくて済むように。美ら海の澄んだ青のような気持ちで祈り続けます。#五感の旅】
羽美先生の手を握りしめたまま、律さんが私たちのほうを振り返る。私は、夕日に照らされた二人の優しいまなざしを見て、胸に込み上げるものをもう止めることができなかった。
「羽美先生は……私に、言葉をくれました。私を外の世界に連れ出して、心の声にちゃんと耳を傾けてって、教えてくれました。先生がいたから、私は今、ちゃんと音が聞こえるんです。先生は私にとって、とても大切な人です」
私が先生に一番伝えたかったことはそれ以上でもそれ以下でもなかった。
先生が、私にとってどれほど心の支えになっていたか。先生が必死に手話で私に語りかけ、大切な時間を割いて私に勉強を教えてくれたことが、どれだけ私を肯定してくれたか。
先生への気持ちは、憧れや信頼だけじゃない。
大切な家族を想うような気持ちで、私は先生を見ている。
その気持ちを律さんにも伝えられて良かった。先生が、律さんに気持ちを伝えられて良かった。
「青葉ちゃん……私にとっても、青葉ちゃんは大切な人だよ。律に会わせてくれて本当にありがとう。晶くんも、ありがとうね」
二人の温かな想いが私たちの胸に溶けて、私は晶くんと顔を見合わせて、二人して泣いた。
「先生、良かった……本当に良かった……!」
大波が来たかのようにぶわりと涙を流す私。
こんなに……こんなに心の内側から気持ちがあふれてきたのはいつぶりだろう。
音が聞こえなくなってから、人間関係に波風を立てないようにひっそりと生きてきた。
できるだけ感情を抑えて、自分の殻に引きこもって。
でも今、私は確実に自分の殻を打ち破り、むきだしの自分をさらけだしている。
先生が律さんから離れて、私を抱きしめてくれた。先生の匂い。先生の温もり。好きの気持ちは一つじゃなくて、私の中でカラフルに色づき始める。
こんな気持ちがあっても、いいよね。
「良かった。兄貴も羽美さんも、想いを言葉にできて。やっぱり兄貴には羽美さんの隣が一番似合ってる。俺さ……小さい時、母さんが病気になってすげえ悲しくて落ち込んでた。でも、兄貴や羽美さんに遊んでもらった記憶が、今の俺の支えになってるんだ。だから俺のほうこそ、ありがとう」
みんなの“心の声”が、波の音に混じって、それぞれの胸に溶けていく。今この瞬間、私たち四人の間に光の粒が舞っているように、きらきらと光る宝石のような煌めきが見えた気がした。
「さて、“碧海”の沖縄の旅はまだ終わってないですよ」
私は、涙で滲んでいた目元を拭って、三人に向き直る。
私が作った『旅カードNo.15』の沖縄の旅は明日まで続くのだ。最後の時間は先生と律さん、晶くんと私の四人で楽しみたい。
「#五感の旅、ラスト一日楽しみましょう」
私は、海に沈んでいく夕日を見つめながら、一際明るい声を上げる。旅に出る前は、まさか自分が喋れるようになるなんて思ってもみなかった。
そうだ。私はずっと、他人のネガティブな心の声が聞こえることに怯えて、前を見ることを諦めていた。心を閉じて、他人と関わることを避け、傷つかないようにひっそりと息をして。でも、そうしているうちに自分の心の声にすら耳を傾けることができなくなってしまっていたのだ。
だけど、#五感の旅を通して、私は自分自身の声に敏感になっていることを実感した。先生の心の声にも。訪れたたくさんの場所で見た大自然の景色や、出会った人たちの言葉が、この先も私の胸に残り続けるだろう。
「行きましょう、私たちの旅へ」
先生や律さん、晶くんが頷くのを見て、私は心がほっと和やかに変わっていく。凪いだ海の黄金色に染まる水面は、今まで見た景色の中で一番美しいと思った。
【8/17 沖縄の旅で、大切な人が大好きな人に、胸に秘めた想いを伝えていました。二人のこの先の未来で、どうかお互いの気持ちを心の奥底に閉じ込めなくて済むように。美ら海の澄んだ青のような気持ちで祈り続けます。#五感の旅】



