
「『幸せなあの日を取り戻す沖縄二日間の旅』……」
私が考えたテーマを口にした先生は、「体験内容」のところにも目を通していく。読み進めるたびに、先生が瞳を揺らしながら息が止まりそうなほど驚いているのが分かった。
「これ、どうして……? どうして青葉ちゃんがあの日のデートコースを知ってるの?」
先生が驚いているのは、『旅カードNo.15』に記載した体験内容が、先生が律さんと二十六歳の誕生日のお祝いで訪れたデートコースそのものだからだろう。
美ら海水族館、恩納村、アメリカンビレッジ。
実は、広島で先生の話を聞いたあと、私はとある人物に連絡をとった。その人物は、言うまでもなく——。
「晶くんに連絡をしたんです。以前晶くんとビデオ通話をした時に、頼まれたことがあったんですよ。“沖縄にいる兄に会ってほしい”って。それで、晶くん経由で律さんからいろいろ聞き出しました」
「そんなことを……。どうして青葉ちゃんはそこまでしてくれるの? 青葉ちゃんには私と律のことなんて、関係ないのに」
「関係ないわけないじゃないですか」
先生がもう一度、弾かれたように顔を上げる。夏の暑さも吹き飛ばすぐらいの勢いで。
「先生は私に光をくれた。暗闇しかなかった私の道を明るく照らしてくれました。だから今度は、私が照らす番。うまくできないかもしれないけど、一緒に行きましょう、明るい未来へ」
私は、依然として困惑している先生の前に、そっと右手を差し出す。先生はひとしきり迷ったあと、私の右手をおずおずと握ってくれた。
「……もう、親御さんに叱られても知らないんだからね」
「大丈夫です。すでに連絡を入れてるので。十五日間の旅が十七日間の旅になったところで、なーんにも気にしてないみたいです」
「そっか。じゃあ、大丈夫か」
先生が久しぶりにふっと笑みをこぼすと、私は胸がようやく温かい気持ちに包まれた。
そうだ。先生にはずっと笑っていてほしい。明るい笑顔が似合う人だから。
でも先生の心にある後ろ向きな感情だって、無視したくない。
私は沖縄で、先生の本当の心を取り戻してみせるよ——。



