傷だらけの私たちの#五感の旅 ーあの日閉じ込めた心の声ー

 旅の中で気づいた違和感を一つずつ、手のひらから飴ちゃんを出すみたいに並べていく。

「よく、気づいたね」

 私の推論を聞いたあと、先生が静かに微笑みながら答えた。私が先生の計画に気づいて嬉しいのかそうでないのか、表情からは読み取れない。

「気づくのが遅くなったぐらいです。最初から普通に違和感だらけだったのに。でも先生、ありがとうございます」

「どうして?」

 先生は、なぜ私がお礼を言うのか分からないというふうに首を傾げた。

「だって、私を旅に連れ出してくれたのは、全部私のためですよね」

「いや、それは私が旅のトラウマを解消するため——」

 私は、先生が否定しようとするのを手で制した。

「それも、一つの理由かもしれません。でも生徒想いな先生が、そんな自己中心的な理由だけで生徒を旅に連れ出すはずがありません」

「……」

 私の答えが正論だと思ったのか、先生は途端に黙り込む。

「旅っていろんな刺激があるじゃないですか。それこそ、先生が旅のコンセプトを#五感の旅にしたのは、私が旅の中でたくさんの刺激を受けて成長させるため。SNSをしようと勧めたのは、私が自分の気持ちに正直に気づけるようになるため」

 夏の風が、私たちの間を吹き抜ける。じっとりとしていて暑いはずなのに、今は暑さを感じないぐらい、先生との時間に集中していた。

「先生のおかげでとても楽しかったですし、自分の人生を見つめ直すきっかけにもなりました。先生がくれたたくさんの言葉に救われたし、こうして音だって戻ってきました。でも先生、まだ終わってませんよ」

 終わりを見つめていたはずの先生の表情がはっと我に返ったように強張る。揺れる陽炎の向こうではなく、至近距離で私を見て、ごくりと唾をのみ込んだ。

「旅の続きが、まだあります。今度は先生が自分の心の声に耳を澄ます番です。今度は先生が、前を向く番です。先生は、律さんと別れてしまうことになった自分の過去を悔やんでいるんですよね。その後悔を解消しに行きましょう」

 先生が、まさかという驚きで瞳をぱちぱちと何度も瞬かせる。
 私は、いつも先生がするみたいにニッと笑いながら、自分で作成した『旅カードNo.15』を先生に差し出した。先生が、震える手で『旅カードNo.15』を受け取り、内容を確かめる。