八月十一日の朝、明らかに寝不足気味の眼をこすりながら、ホテルの遮光カーテンを開けた。窓から見える空は、どんよりとした曇り空。北陸地方は雨の日が多いらしいから、曇なんて特段珍しいことでもないはずなのに、なんだか今の自分の心の空模様のようで気持ちが沈んでしまう。
「おはよう」
先生のやさしい声も、今の私には尖って聞こえる。
「おはようございます」
手話で返事はするものの、明らかに気乗りしない様子の私を見て、先生は思うところがあったのか、それ以上は話しかけてこなかった。
気持ちは沈んだままだけれど、今日は『旅カードNo.9』に書かれている京都に向かう予定だ。金沢から京都まで、北陸新幹線と北陸本線サンダーバードを利用して二時間はかかる。ゆっくりしている暇はなくて、私は先生に促されるがままに支度をした。
「青葉ちゃん、今日は京都で和紙づくりをするんだって。楽しみだね」
先生が努めて明るい声で、『旅カードNo.9』を見せてきた。

そこには確かに、「願いを封じた和紙づくり」と書かれていた。和紙を作ったことなどもちろんないので、本来なら先生の言うとおり、楽しみなはずだ。それなのに、先生の声が、空っぽの心を素通りする。
先生……そんなことより、昨日の炎上の件は大丈夫なんですか。
大丈夫じゃないですよね。
夜中もずっと、着信音が鳴ってましたよね。
彼女に問い詰めてしまいたい言葉をぐっと飲み込んで、私は「はい」と朧げに答えた。
「よおし、じゃあ、早速出発しよう」
羽美先生が、ニッと歯を見せて笑いながら私の手を引いて歩いていく。私は、先生の操り人形のような足取りで、もつれる足をなんとか引きずって歩いていった。
「おはよう」
先生のやさしい声も、今の私には尖って聞こえる。
「おはようございます」
手話で返事はするものの、明らかに気乗りしない様子の私を見て、先生は思うところがあったのか、それ以上は話しかけてこなかった。
気持ちは沈んだままだけれど、今日は『旅カードNo.9』に書かれている京都に向かう予定だ。金沢から京都まで、北陸新幹線と北陸本線サンダーバードを利用して二時間はかかる。ゆっくりしている暇はなくて、私は先生に促されるがままに支度をした。
「青葉ちゃん、今日は京都で和紙づくりをするんだって。楽しみだね」
先生が努めて明るい声で、『旅カードNo.9』を見せてきた。

そこには確かに、「願いを封じた和紙づくり」と書かれていた。和紙を作ったことなどもちろんないので、本来なら先生の言うとおり、楽しみなはずだ。それなのに、先生の声が、空っぽの心を素通りする。
先生……そんなことより、昨日の炎上の件は大丈夫なんですか。
大丈夫じゃないですよね。
夜中もずっと、着信音が鳴ってましたよね。
彼女に問い詰めてしまいたい言葉をぐっと飲み込んで、私は「はい」と朧げに答えた。
「よおし、じゃあ、早速出発しよう」
羽美先生が、ニッと歯を見せて笑いながら私の手を引いて歩いていく。私は、先生の操り人形のような足取りで、もつれる足をなんとか引きずって歩いていった。



