傷だらけの私たちの#五感の旅 ーあの日閉じ込めた心の声ー

「うわ、さすがにひがし茶屋街(ちゃやがい)は混んでるねえ」

 兼六園の次にやって来たのは、ひがし茶屋街だ。
 伝統的な茶屋建築が軒を連ねる様は、あっと息をのむほど美しい。紅葉シーズンや雪の降る時期になれば、より風情のある風景を見られるんだろう。
 ひとつひとつの町家がカフェやお土産物屋さんになっているので、観光客がごったがえしていた。写真を撮る人が多く、私たちも二人並んでスマホで写真を撮った。
 先生とのツーショットが、スマホの写真フォルダにどんどん溜まっていく。
 旅が終わってから見返すのが楽しみでもあり、旅の終わりを想像すると、寂しさに襲われた。

「私らもカフェで休憩する?」

「はい」

 先生の提案にこっくりと頷く。どこのお店も外に列ができるほど混んでいたが、時間があるので並んで待っていた。
 ようやく順番が回って来て入ったお店は、抹茶が売りの甘味処だ。
 私は抹茶ババロアパフェを、先生は抹茶のロールケーキを頼んでいた。

「濃厚で美味しい! 抹茶といえば京都だけど、金沢でも堪能できるのもいいね」

「小京都って感じですよね」

 京都、と呟いたところで、中学の時の修学旅行を思い出す。
 東寺で五重塔に圧倒されながら、友達だった詩織や梨花の心の声に震撼させられたことが蘇ってくる。

“青葉ってさ、いっつもトロくていらいらする”

“青葉、修学旅行だからってお団子にしてきてるけど全然似合ってないな〜。お団子はあたしと詩織でお揃いにしよって言っただけなのに。空気読めよ”

「青葉ちゃん、大丈夫?」

 気がつけば額にじっとりと汗をかいていた。暑さのせいではない。店内は寒いくらいの冷房が効いているから普通なら汗は引いていくものだ。
 
 嫌な記憶を思い出しちゃったな……。
 頭の中で昔の記憶を振り払いつつ、先生に「大丈夫です」と答える。

「そう? なんか顔色も悪いけど」

「休憩したら復活します。このパフェ食べたら元に戻るので!」

 私はそう宣言しながら、抹茶ババロアパフェをどんどん口に運んだ。抹茶の苦味と、時折現れる生クリームの甘みが溶け合って程よい味になる。とてもおいしくて、何度でも食べられそうだと感じた。

 先生は、依然として心配そうなまなざしで私を見ていたけれど、私がパフェにがっつくのを見て安心したのか、自分もロールケーキを平らげていった。