傷だらけの私たちの#五感の旅 ーあの日閉じ込めた心の声ー

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 八月十日。富山から金沢へは、あいの風とやま鉄道線あいの風ライナーに乗って、四十五分程度で到着した。程よい移動時間で、八時台にホテルを出て九時前に到着できたのでよかった。

 今日は金沢屈指の観光地、近江町市場で朝ごはんを食べるのが主な目的だ。金沢駅からは周遊バスに乗って「武蔵ヶ辻(むさしがつじ)・近江町市場」で降りる。バス停からはすぐだったので、迷わずにすっと目的地まで到着した。

「選ぶのは主食、メイン、おやつ、なんですね。最後のおやつってのが可愛いですね」

『旅カード』を見ながら先生に話しかけた。先生は、「食後のデザートって大事じゃん」と鼻息荒く答えてくれた。

「じゃあ早速買いに行きましょう」

 近江町市場は、朝からかなりの人でごった返していた。地元の人ももちろんいると思うけど、夏休みなのでどうやら観光客が多いみたいだ。左右に立ち並ぶ魚介の店や青果店、お土産屋物さん、飲食店——様々なお店が「わたしを見て」と叫んでいるようだった。

「こんなにたくさんお店があったら迷っちゃうなあ」

 先生はそう言いながらも、「サザエおいしそう〜! うわ、ホタテのバター醤油も絶対おいしいじゃん」と、お酒に合いそうなものばかりに目を光らせている。私も負けじと周囲を見回して、好みのものを探していく。

「あ、あのお店いいかも」

 ちょっと先にあるおにぎり屋さんが目に入ってきて、私は先生を引っ張って近づいていく。

「おにぎり? うわ〜手作り感があって最高じゃん」

 作りたてほやほやのおにぎりが、百二十円、百四十円と破格の値段で売られていた。

「おにぎり屋さんで買うおにぎりっていいよね。真心の味がして」

「真心の味」という表現が言い得て妙だと思いつつ、私はおにぎりを選んだ。

「私、“梅しそ”と“焼きたらこ”にします」

「決めんのはや! え、ちょっと待って」

 即決した私とは対照的に、先生はうんうん唸りながらおにぎりを選んでいた。結局、“こんぶ”と“さけ”という王道のおにぎりを買って、温かいおにぎりを受け取った。

「これ、早く食べたいね。他の食材も早く買いに行こ!」

 手の中のおにぎりがあまりにおいしそうだから、先生は遠足に来た子どもみたいに、他の食事を買いに早足で駆けていく。「待ってください」と声に出せないので、先生とはぐれないように、必死に彼女の背中を追いかけた。手を伸ばしてそっと触れてみたい衝動に駆られたけど、我慢して、揺れるその背中を見つめていた。