
新潟に着いた私たちは、『旅カード』に書かれている通り、佐渡金山に向かうべく船に乗り、海を渡った。佐渡金山では坑道探索をして、はるかなる時の流れに思いを馳せてみた。ずっと昔、この金山を掘っていた人たちがいると思うと、なんだか泣けてきたから不思議だ。
「青葉ちゃん、昨日の夜ビデオ通話してたでしょ」
「はい」
坑道を歩きながら先生が私に問いかける。
「その人ってリアルな友達?」
「え?」
先生の言う「リアルな友達」というのは、ネットで知り合った友達ではなく、現実世界での友達かということだ。
「そうです。以前手話教室で一緒だった人です。晶くんって言うんですけど、たまたまXで私のアカウントを見てくれたみたいで、DMが来ました。歳の離れたお兄さんがいて、今沖縄に住んでいるけど、様子が変だからそのお兄さんの話を聞いてほしいってお願いされて」
「アキ……」
先生がぽつりと彼の名前を呟く。
どうしたんだろう。もしかして晶くんのことを知っているんだろうかと思ったけれど、名前一つで知り合いだと分かるはずもなく、違うだろうと結論づける。
「あ、でも安心してください。私たちが『旅カード』に沿って旅をしてて、故意に行き先を決めることはできないって伝えておきましたから」
先生はどこかぼうっとしたまなざしで、私の言葉に「うん」と頷いた。
それからだ。先生の様子がおかしくなったのは。
私が手話で話しかけても「うん」とか「ええ」とか生返事ばかりになった。



