新函館北斗駅から約二時間。
盛岡駅に到着した私たちはIGRいわて銀河鉄道線に乗って、奥中山高原駅まで向かった。
電車に揺られている間、手慰みにスマホでXを開くと、通知が十件ほど来ていることに気づいた。
Xを始めたばかりでそんなにたくさん通知が来るとは思っておらず、あたふたと通知欄を見る。昨日、一昨日の投稿に「いいね」が二十件以上もついていて、さらにリポストやリプが数件届いていた。
「おお、すごいじゃん。フォロワー増えてるし、いいねもコメントもたくさん来てる!」
先生が私のスマホの画面を覗き込みながら感極まった声を上げる。
先生の言う通り、0人だったフォロワーは三日で百人に増え、さらに、「#五感の旅」が受けたのか、投稿へのコメントも肯定的なものが多かった。
【小樽も函館もザ・観光地って感じでいいですよね! 私も行ってみたいな〜】
【“#五感の旅”っていうコンセプトがすごく好きです。これからの投稿も楽しみにしています!】
【旅に出ると知られざる自分に出会えますよね。活動応援してます♪】
画面に映し出される温かな言葉の数々。
顔も知らない人から、自分たちの活動をそんなふうに感じてもらえるなんて思ってみなくて、私も視界がぱあっと明るくなった気がした。
「こんなふうに言ってもらえるんだ……嬉しいな」
先生から「Xを始めよう」と言われた時には、正直SNSなんてしてもろくなことがないと思っていた。でもすべては自分の思い込みだった。
「やってみないと分かんないもんでしょ?」
先生のしたり顔が、もはや見なくても頭に思い浮かぶ。
確かにそうだ。何事もやってみなければ分からない。耳が聞こえなくなって、挑戦とか新しいことを始めるとか、そういう言葉は健常者がやるべきことであって、自分には絶対にできないとことだと思い込んでいた。でも違ったのだ。私にだって、新しい未来を切り開くことができるのかもしれない——SNSの反応一つでそんなふうに思えるから不思議だった。
それから三十分ほどして、目的の奥中山高山駅にたどり着いた。
奥中山高山駅からはシャトルバスが出ていて、バスに乗ってものの十分程度で無事高原へと着いた。
「涼しいっ! 広い!」
見渡す限りの高原、山の景色に自然と肺が開いていくような心地になった。大きく伸びをすると意識せずとも深呼吸をしてしまう。夏場にもかかわらず気温は二十五度ぐらいしかない。真夏の東京での一日を思い出すと全然違う世界に迷い込んだかのようだ。
「最高だね。こんな場所があるなんて知らなかった」
「先生は、岩手は初めてですか?」
「うん。初めて。東北自体初上陸かも」
先生が東北は「初めて」だというので、なんだか私は嬉しくなった。先生と初めて経験するものを共有することができるなんて。北海道は何度か訪れたことがあったみたいなので、新しい喜びに包まれた。
「旅カードにはさ、“カシオペア農道ウォーク周辺”って書いてあるじゃん。どこを歩けばいいか、ちょっと調べてみようか」
「分かりました」
スマホを手に、「奥中山高原 ウォーキング」と検索をしてみる。すると、農林水産省のHPに「カシオペアランド奥中山高原ウォーク」を銘打たれたページがあった。
そこに記されたコースは、「奥中山高原スキー場→(30分)→野菜もぎとり体験→(30分)→奥中山高原農協乳業工場→(30分)→カナンの園パン工場→(30分)→奥中山高原スキー場」というものだ。
「これ、分かりやすくて良くない? この通りに進んでいけば、二、三時間で戻ってこられそうだよ」
先生も同じページを見ていたようで、私たちはふふっと笑いながら頷き合った。
コースが決まれば話は早い。
「早速レッツゴー!」
先生が高らかに声を上げて、拳を空へと突き出す。浮かんだ雲がゆったりと流れていくように、私たちも前へと進み出した。
盛岡駅に到着した私たちはIGRいわて銀河鉄道線に乗って、奥中山高原駅まで向かった。
電車に揺られている間、手慰みにスマホでXを開くと、通知が十件ほど来ていることに気づいた。
Xを始めたばかりでそんなにたくさん通知が来るとは思っておらず、あたふたと通知欄を見る。昨日、一昨日の投稿に「いいね」が二十件以上もついていて、さらにリポストやリプが数件届いていた。
「おお、すごいじゃん。フォロワー増えてるし、いいねもコメントもたくさん来てる!」
先生が私のスマホの画面を覗き込みながら感極まった声を上げる。
先生の言う通り、0人だったフォロワーは三日で百人に増え、さらに、「#五感の旅」が受けたのか、投稿へのコメントも肯定的なものが多かった。
【小樽も函館もザ・観光地って感じでいいですよね! 私も行ってみたいな〜】
【“#五感の旅”っていうコンセプトがすごく好きです。これからの投稿も楽しみにしています!】
【旅に出ると知られざる自分に出会えますよね。活動応援してます♪】
画面に映し出される温かな言葉の数々。
顔も知らない人から、自分たちの活動をそんなふうに感じてもらえるなんて思ってみなくて、私も視界がぱあっと明るくなった気がした。
「こんなふうに言ってもらえるんだ……嬉しいな」
先生から「Xを始めよう」と言われた時には、正直SNSなんてしてもろくなことがないと思っていた。でもすべては自分の思い込みだった。
「やってみないと分かんないもんでしょ?」
先生のしたり顔が、もはや見なくても頭に思い浮かぶ。
確かにそうだ。何事もやってみなければ分からない。耳が聞こえなくなって、挑戦とか新しいことを始めるとか、そういう言葉は健常者がやるべきことであって、自分には絶対にできないとことだと思い込んでいた。でも違ったのだ。私にだって、新しい未来を切り開くことができるのかもしれない——SNSの反応一つでそんなふうに思えるから不思議だった。
それから三十分ほどして、目的の奥中山高山駅にたどり着いた。
奥中山高山駅からはシャトルバスが出ていて、バスに乗ってものの十分程度で無事高原へと着いた。
「涼しいっ! 広い!」
見渡す限りの高原、山の景色に自然と肺が開いていくような心地になった。大きく伸びをすると意識せずとも深呼吸をしてしまう。夏場にもかかわらず気温は二十五度ぐらいしかない。真夏の東京での一日を思い出すと全然違う世界に迷い込んだかのようだ。
「最高だね。こんな場所があるなんて知らなかった」
「先生は、岩手は初めてですか?」
「うん。初めて。東北自体初上陸かも」
先生が東北は「初めて」だというので、なんだか私は嬉しくなった。先生と初めて経験するものを共有することができるなんて。北海道は何度か訪れたことがあったみたいなので、新しい喜びに包まれた。
「旅カードにはさ、“カシオペア農道ウォーク周辺”って書いてあるじゃん。どこを歩けばいいか、ちょっと調べてみようか」
「分かりました」
スマホを手に、「奥中山高原 ウォーキング」と検索をしてみる。すると、農林水産省のHPに「カシオペアランド奥中山高原ウォーク」を銘打たれたページがあった。
そこに記されたコースは、「奥中山高原スキー場→(30分)→野菜もぎとり体験→(30分)→奥中山高原農協乳業工場→(30分)→カナンの園パン工場→(30分)→奥中山高原スキー場」というものだ。
「これ、分かりやすくて良くない? この通りに進んでいけば、二、三時間で戻ってこられそうだよ」
先生も同じページを見ていたようで、私たちはふふっと笑いながら頷き合った。
コースが決まれば話は早い。
「早速レッツゴー!」
先生が高らかに声を上げて、拳を空へと突き出す。浮かんだ雲がゆったりと流れていくように、私たちも前へと進み出した。



