傷だらけの私たちの#五感の旅 ーあの日閉じ込めた心の声ー

「えっ」

 思わず先生の手に握られているものを二度見する。
 そこには、見覚えのある空色の封筒が握られていた。

「これ、もしかして次の『旅カード』……?」

「たぶんそう。そこの棚に差してあった」

 先生が、壁際の棚を指差しながら言う。
 どうしてそんなところにこの封筒があったのか疑問しかないが、答えを考える前に先生が「開けてみて」と言うので、受け取って封筒を開いた。

「“旅カードNo.2 北海道(函館)”って……次は函館に行けってこと!?」



 私が驚いて先生を見ると、先生は「そうみたいだね〜」とにやりと笑う。

「テーマは『夜景のきらめきに心を研ぎ澄ませる』、場所は『函館山ロープウェイ』」

 私が手話で呟くと同時に、先生が「行っちゃう?」といたずらっ子のような顔つきになった。私も、なんだか楽しくなって「行っちゃいます」と即答する。

「よし、行こう! 明日は函館ね!」

 十五日間の旅に出たのだ。小樽の次にどこに行くのか疑問に思っていたが、こうして行き先が決まるなんて思ってもみなかった。
 でも心の中ではワクワクする気持ちが勝っている。旅の最中、先生と一緒なら、どんな波天荒なことでもやってのける——そんな気がして、胸の高鳴りが抑えきれなかった。
 旅の恥はかき捨て。
 使い古されたことわざを噛み締めつつ、まだ見たことのない函館の夜景に想いを馳せた。


【8/3 小樽で出会ったガラス職人のMさんから、『職人としての今後の身の振り方に悩んでいる』という話を聞きました。いくつになっても、自分の心の声に耳を傾けるって難しい。どうしようもない気持ちも誰かに打ち明けたら心がすっきりするような気がします。#五感の旅】