傷だらけの私たちの#五感の旅 ーあの日閉じ込めた心の声ー

「すごく綺麗……」

 天井にかざしてみると、とんぼ玉に店内のライトが反射して、ガラスの煌めきが際立った。真ん中に穴が空いているので、ネックレスなんかにして身につけておける。

「こっちもめちゃくちゃ綺麗だよ」

 先生のドッド柄の赤いとんぼ玉も、それはそれは美しく、手の中でころころ転がすと愛着が湧いた。

「牧野さん、本当にありがとうございました。『#五感の旅』付きでXに今日のことを投稿するので、ぜひ見ていただけると嬉しいです」

「ああ。こちらこそ、いろいろとありがとうございました。ぜひまたいらしてくださいね」

 牧野さんが朗らかな表情で、手話をしながらぺこりと頭を下げてくれた。私たちは牧野さんに手を振ってお店を後にする。

「楽しかったねー! とんぼ玉もめちゃくちゃ可愛いし、来て良かった」

「はい。とてもいい思い出になりました」

 手に入れたエメラルドグリーンのとんぼ玉を胸の前でぎゅっと握りしめながら、あえて言葉で(・・・)答える。
 私が声を発したことに先生は驚いた様子ではっと目を丸くしたが、やがてふふっと微笑んで「そっか」と嬉しそうにため息を吐いた。

「にしても、先生びっくりしたよ。青葉ちゃんが牧野さんに自分からあんなふうに声を掛けに行って」

 そう言われて、自分でも戸惑う。 
 
「なんでか分からないんですけど、話さなきゃっていう衝動に駆られたんです」

「ほう、そっかあ。まああれじゃない? 旅してるときって、普段と違う環境の中にいるでしょ? だから、いつもと違う自分に出会えるというか。気持ちも新しいものになる、というか。“旅の恥はかき捨て”っていうやつ」

「なるほど、言われてみればそうかもしれません。さすが国語教師」

 照れくさくなって、先生のことをからかうように笑う。先生は「もう、青葉ちゃんきらいー」とぷいっと顔を横に向ける。そんな子どもっぽい先生の仕草を愛しいと思う自分がいた。

「さ、まだ時間はたっぷりあるから堺町商店街を歩こ! ルタオのチーズケーキが食べたいのよ私は」

「はいはい、行きましょ〜」

 先生が「チーズケーキ♪」と鼻歌を歌いながら歩くその少し後ろを、私もタタタッと歩いていく。堺町商店街は、道の左右に土産物屋さん、食べ歩きのできる練り物やコロッケが売っている店、飲食店など、目移りするぐらい華やかな彩りに満ちていた。

「ねえ青葉ちゃん、見てこれ」

 目的だったルタオ本店にたどり着き、煌びやかなお菓子の箱が並ぶ棚を眺めていた時だ。
 先生がふと、後ろでラングドシャクッキーの箱を手に取った私に、何かを差し出してきた。