Vivid Red Examination

 龍岡門に近づくにつれて、目頭が熱くなるのを感じる。泣くなよ、男だろ俺。それに、あいつの方が俺よりよっぽど泣きたいだろうよ。
 だが、涙は勝手に流れ始めた。とめどなく流れるそれは、まるで俺が受験に恐怖しているかのように周りから見えるのだろう。女子生徒が引いた目でこちらを見ていた。
 ちげえんだよ! 俺だって、単純に受験怖えとか言いたかったよ! なんっでなんだよ!
 俺を東大受験の道に引き摺り込んで、俺を引っ張ってきて、誰よりも頭も成績も良くて、絶対に東大受かるはずのお前が。なんでそんなお前が受験できないんだよ。こんなことってあるかよ……!
 激情が渦巻く中、割り当てられた席に座る。問題と解答が配られる。奥歯をグッと噛み締める。
 あいつが行かせてくれたんだ。絶対に受かってやる!
 俺が今できることはそれしかない。そうだ、俺だって合理的にやってやろうじゃん。全力を尽くし、東大に合格する。そして、浪人して来年入ってくるあいつをキャンパスで迎える。
 ――ああ、俺って思ったより燃えるような赤色の高校生活を送ってきてたらしい。
 シャーペンのグリップをぎゅっと握り締めた。



【Q.E.D】