Vivid Red Examination

 そうこうしているうちに、共通テストまで終わってしまった。結果は良くも悪くもなく、別に普通。俺のモットーを体現しているかのような数字だった。
 だが、いざ40日後に二次試験が控えていることを考えると、突然、俺の頭は変な方向に動き出した。東大という高い高い、しっかりした壁が目の前にやってきて、それを途方に暮れて見上げているような気分。

「俺、ほんとに東大なんか受けていいのか……?」
「ばーか、東大受けんのに許可なんていらねえだろ」
「い、いや、そういうことじゃねえって」
「なに、お前受験近づいてきたからって弱気になってんの?」

 ユーショーがからかうように言う。だが、俺は言い返している余裕などなかった。

「秋の冠だって別に良かったわけじゃねえし。このままだと落ちんじゃねえかって……縁起でもねえけど。でもやっぱ俺勉強量足りねえし」
「じゃあ、東大以外のどこにすんだよ」
「……」

 俺は答えられない。だって、他の選択肢なんてないから。もしかしたら、ユーショーはそれをわかっていて俺をけしかけたのかもしれない。真意なんてわかるわけないけど。

「お前の母ちゃんはお前に国立行ってほしいんだろ? 東京の国立なんて限られてんだぞ。これまで東大型でやってきたんだから、そのまま突き進む方が合理的だろ」

 合理的。確かにそうなんだろう。ただ、未来を合理だけで選んでいいのか、と若干もやもやが残った。俺はユーショーみたくまっすぐ突き進む赤色にはなれないし……。
 ただ、やっぱりいまの俺には他の選択肢なんて見つからなかった。

「それもそうだな」

 俺はもう考えるのをやめて、無心で出願した。