俺たちはいつの間にか一緒に帰るようになった。朝学校に着けば、どちらともなく声をかける。ユーショーは大抵勉強しかしていないから、ドラマがどうとか店がどうとか、そんな一般的な会話にはならないが、それはそれで新鮮で面白かった。
理由はいろいろあるだろう。お互いよくしゃべる友達とクラスが離れてしまったこと。都合よく隣同士だったこと。別に話が合わないとかでも、どちらかがクラスからはぶられているとかでもないこと。
もっとも、俺がこうやって理由を並べているだけで、ユーショーの理由はもっと別のところにあったのかもしれない。
放課後は自習に誘われ、一緒に図書館にこもった。休み時間は突然勝手にクイズ大会を始め、俺に回答権を与えてきた。テストが返却されれば、俺の答案用紙を勝手に奪い取り、点数を見てきた。学校で同じ模試を受けるときは、志望校欄を勝手に書き換えて東大にしてきた。書き並べれば結構ひどいことかもしれないし、周りからすれば超ストイックに見えるのかもしれないが、俺たちにしてみれば別にただのおふざけだ。楽しんでやってる。
「はよ帰るぞ」
「ちょっと待てって。すぐ片付け終わるから」
「ういー、じゃあその間に1問。三倍角の公式はー?」
俺はリュックに教科書や参考書、過去問集を突っ込みながら、公式を思い出す。ユーショーはこんな風に突然クイズを出してくることもある。答えられないと丸めた教科書で雑に頭を叩かれるから、たまには仕返ししてやってる。
こいつのおかげで俺は前より勉強するようになった。平均点に到達していればいいや、と思っていたテストも、いつの間にかどうすれば失点しないか戦略を練るようになった。ユーショーの話についていけるようになった実感もある。別に前からそんな高尚な話をしていたわけじゃないけど。
「寄り道、夏の冠模試受けよーぜ」
「冠模試ってよく名前聞くけど、結局なんなんだ?」
「知らねーのかよ。進学校だぞ、知っとけよ」
ユーショーは、何かのキャラクターの真似をしているのか、気取ったしゃべり方で説明を始めた。曰く、冠模試とは、旧帝大などの難関大学の名前を冠した模試。各大手予備校がそれぞれの学校の出題傾向に似せた問題を作り、本番と同じ時間割で解かせるタイプの模試だ。夏と秋の2回に分かれていて、それぞれの判定から合格可能性を分析し、戦略を立てるのだそう。
「まあ、別に夏休み暇だし。いいぜ、受けるわ」
こうして俺は、ユーショーに引っ張られるようにして、東大志望のような生活を送ることになっていくのだった。
理由はいろいろあるだろう。お互いよくしゃべる友達とクラスが離れてしまったこと。都合よく隣同士だったこと。別に話が合わないとかでも、どちらかがクラスからはぶられているとかでもないこと。
もっとも、俺がこうやって理由を並べているだけで、ユーショーの理由はもっと別のところにあったのかもしれない。
放課後は自習に誘われ、一緒に図書館にこもった。休み時間は突然勝手にクイズ大会を始め、俺に回答権を与えてきた。テストが返却されれば、俺の答案用紙を勝手に奪い取り、点数を見てきた。学校で同じ模試を受けるときは、志望校欄を勝手に書き換えて東大にしてきた。書き並べれば結構ひどいことかもしれないし、周りからすれば超ストイックに見えるのかもしれないが、俺たちにしてみれば別にただのおふざけだ。楽しんでやってる。
「はよ帰るぞ」
「ちょっと待てって。すぐ片付け終わるから」
「ういー、じゃあその間に1問。三倍角の公式はー?」
俺はリュックに教科書や参考書、過去問集を突っ込みながら、公式を思い出す。ユーショーはこんな風に突然クイズを出してくることもある。答えられないと丸めた教科書で雑に頭を叩かれるから、たまには仕返ししてやってる。
こいつのおかげで俺は前より勉強するようになった。平均点に到達していればいいや、と思っていたテストも、いつの間にかどうすれば失点しないか戦略を練るようになった。ユーショーの話についていけるようになった実感もある。別に前からそんな高尚な話をしていたわけじゃないけど。
「寄り道、夏の冠模試受けよーぜ」
「冠模試ってよく名前聞くけど、結局なんなんだ?」
「知らねーのかよ。進学校だぞ、知っとけよ」
ユーショーは、何かのキャラクターの真似をしているのか、気取ったしゃべり方で説明を始めた。曰く、冠模試とは、旧帝大などの難関大学の名前を冠した模試。各大手予備校がそれぞれの学校の出題傾向に似せた問題を作り、本番と同じ時間割で解かせるタイプの模試だ。夏と秋の2回に分かれていて、それぞれの判定から合格可能性を分析し、戦略を立てるのだそう。
「まあ、別に夏休み暇だし。いいぜ、受けるわ」
こうして俺は、ユーショーに引っ張られるようにして、東大志望のような生活を送ることになっていくのだった。



