Vivid Red Examination

 高3になり、クラス替えをして最初の席は、真ん中の列の後ろから2番目。なんとも言えないところだ。
 隣のやつとは初めて同じクラスになった。休み時間も休まず問題集と睨めっこしているから、真面目なやつだな、と思っていたが、ノートの表紙に雑な字で書かれた名前を見て納得した。
 長谷川勇将。校内のテストで、必ず1位のところに載っている名前だ。俺とは正反対の優等生、真面目タイプなんだろう。
 いや、別に俺は劣等生ではないけど。とりあえず落第しない程度の成績を取って、人間関係もそれなりにうまいことやっていれば十分。俺はそういうタイプだ。よく言えば要領がいい、悪く言えば何にも興味がない。
 キラキラしたやつらの高校生活が鮮やかなスカイブルーなんだとしたら、勇将は燃えるような赤だろう。そして、俺はグレーとか茶色とか、くすんだ暗い色。目立たないように、クラスに溶け込めるように。平凡、普通、月並み……それが俺。
 もちろん、仲良くはする。隣の席なんだ、いつペア学習で組まされるかわからない。

「俺、立河頼通(たちかわよりみち)。よろしくな、勇将(ゆうしょう)
「……? いや、ちげえよ。『ユーショー』じゃなくて『勇将(たけまさ)』。けどまあ、よろしくな、()()()
「ちょっおい! ってか、いいじゃねえか、ユーショーで。名前から優勝してるなんて縁起良すぎだろ」
「じゃあ俺も寄り道って呼ぶな」

 ――案外、気のいいやつなのかもしれない。

 受験の学年ということもあり、授業はハイスピードで進んでいく。俺の通っている学校は都内の中高一貫男子校。それなりに東京一工(いまは科学大だから工じゃねえか?)の合格者実績を保っている。だから、授業のレベルも高い。

「はい、じゃあこの問題をまず最初はひとりで解いて。15分後にペアで案を出し合って、よりよい解法を考えてください」

 授業はとりあえず普通に受ける。寝ることはしない。結局、コスパよく普通の成績を修めるには、授業を聞くのが一番大事なのだ。
 タイマーが鳴り、ペア学習が始まる。ユーショーと意見を交換していく。もちろん、ユーショーは完答していた。

「やっぱ、お前すげーなー。これ、どこ大の過去問だっけ?」
「どっかの旧帝だろ? 知らねえけど。見覚えはある」

 やっぱりこいつは燃えるような赤色だ。東大目指してるくらいだし、赤門のイメージが強いのかもしれないが。

「なあ、お前さ。ちゃんとやったらもっといい成績取れるだろ。なんで手抜いてんの?」
「は……? いやいや、別に抜いてねえって。普通にやってんだよ普通に」
「それは手抜いてることになるだろ。本気じゃねえんだから」
「まあ、確かにそうか? でもめんどくせーし、別にどっかテキトーな大学入れればよくね?」
「ふーん」

 ユーショーは何か考えるようにシャーペンの頭をあごに当てる。俺は気にせずユーショーの解答を自分の答案用紙に書き写した。