それからさらに、一週間が過ぎた。
相変わらず沙綾の不自然な様子は日に日に強くなるばかりで、俺はもう、彼女にいろいろと問いただす気にもなれなかった。
沙綾のスマホを覗き見れば——もしかしたらそこに答えがあるかもとも思ったが、さすがに妻のスマホを勝手に見るのは憚られた。それに、沙綾はここのところスマホを肌身離さず持っていて、俺が隙をついて覗き見する間なんてなかった。
その日も朝の仕度を終えて仕事に行くべく一階まで降りると、掲示板に気になる貼り紙がされていることに気づいた。
「これ……人影って」
確か、先週にも同じようなお知らせを見たなと思ったら、二度目の注意喚起のようだ。
“共用部分に長時間滞在をする人影”
その一文を見て、俺が先週見たあの人影を他にも目撃した人がいるのだと思い至り、ほっとしていた。
「やっぱりあれは見間違いじゃないよな」
沙綾には老眼だって笑われたけれど、他にも多数見ている人がいるのだ。今日の夜、彼女に教えてやろう。
それにしても、なぜ共用部分に長いこと滞在なんてするのだろうか。べつにそこに何かがあるわけでもあるまい。
もしかして、ホームレスとか?
あるいはこのマンションに住みたいけれど住めない人がうろついている、とか。
「さすがに執念深いなそれは」
このマンションのセキュリティは多重ロックで、外部の人間がマンションに入れるわけないのだ。
だとすればやっぱり、人影は住人ということになるが——。
「あれは普通の人間に見えなかったけどな」
人影から感じる禍々しい空気を思い出し、俺は貼り紙からそっと目を逸らした。
それ以上は何も考えないようにして職場へ向かった。
相変わらず沙綾の不自然な様子は日に日に強くなるばかりで、俺はもう、彼女にいろいろと問いただす気にもなれなかった。
沙綾のスマホを覗き見れば——もしかしたらそこに答えがあるかもとも思ったが、さすがに妻のスマホを勝手に見るのは憚られた。それに、沙綾はここのところスマホを肌身離さず持っていて、俺が隙をついて覗き見する間なんてなかった。
その日も朝の仕度を終えて仕事に行くべく一階まで降りると、掲示板に気になる貼り紙がされていることに気づいた。
「これ……人影って」
確か、先週にも同じようなお知らせを見たなと思ったら、二度目の注意喚起のようだ。
“共用部分に長時間滞在をする人影”
その一文を見て、俺が先週見たあの人影を他にも目撃した人がいるのだと思い至り、ほっとしていた。
「やっぱりあれは見間違いじゃないよな」
沙綾には老眼だって笑われたけれど、他にも多数見ている人がいるのだ。今日の夜、彼女に教えてやろう。
それにしても、なぜ共用部分に長いこと滞在なんてするのだろうか。べつにそこに何かがあるわけでもあるまい。
もしかして、ホームレスとか?
あるいはこのマンションに住みたいけれど住めない人がうろついている、とか。
「さすがに執念深いなそれは」
このマンションのセキュリティは多重ロックで、外部の人間がマンションに入れるわけないのだ。
だとすればやっぱり、人影は住人ということになるが——。
「あれは普通の人間に見えなかったけどな」
人影から感じる禍々しい空気を思い出し、俺は貼り紙からそっと目を逸らした。
それ以上は何も考えないようにして職場へ向かった。



