六月のある日、私は田村さんから仕事を引き継ぐ際に、田村さんがどこか不安げな表情を浮かべているのに気づいた。
「どうかされましたか?」
「いや、その……」
彼女は言いにくそうに、口をもごもごと動かす。普段からぱっと考えていることを口に出せるタイプではなく、じっくりと言葉を選んで話す彼女は、いつも以上に悩んでいる様子だった。
「実は、先月に住人の方から妙なことを言われまして……。エントランスの掲示板に、おかしな貼り紙がされていたというんです」
「おかしな貼り紙?」
エントランスの掲示板には、旬のお知らせを掲示するようにしている。
たとえば、ガス点検や排水溝清掃のお知らせ、地域のイベント、共用部の使い方に関する注意喚起など。
「おかしな貼り紙」とは一体何のことだろうか、と記憶を辿ってみるも、例によって記憶力に自信のない私は、何のことかまったく思い至らない。
「『調整完了のお知らせ』という貼り紙らしいんです。心当たりがなくて、北本さんか島原さんが貼ったのかなと思ったのですが」
「『調整完了のお知らせ』? なんですか、その妙なタイトルは」
「……私も最初はよく分からなくて、スルーしていたんです。でもその後、今月に入ってから実際に『調整完了のお知らせ』の紙を目にしたんですよ、これです」
そう言いながら、田村さんはスマホの写真フォルダに保存した『調整のお知らせ』なる貼り紙を見せてくれた。
だが、そこには不可解なものが映り込んでいた。
「あれ?」
田村さんが首を捻る。私も同時に「読めませんね」とため息を吐いた。
スマホに写っている画像の貼り紙には確かに『調整完了のお知らせ』というタイトルがあるのだが、その下の内容の部分は文字化けしていて、とてもじゃないが読むことができなかたのだ。
「どうかされましたか?」
「いや、その……」
彼女は言いにくそうに、口をもごもごと動かす。普段からぱっと考えていることを口に出せるタイプではなく、じっくりと言葉を選んで話す彼女は、いつも以上に悩んでいる様子だった。
「実は、先月に住人の方から妙なことを言われまして……。エントランスの掲示板に、おかしな貼り紙がされていたというんです」
「おかしな貼り紙?」
エントランスの掲示板には、旬のお知らせを掲示するようにしている。
たとえば、ガス点検や排水溝清掃のお知らせ、地域のイベント、共用部の使い方に関する注意喚起など。
「おかしな貼り紙」とは一体何のことだろうか、と記憶を辿ってみるも、例によって記憶力に自信のない私は、何のことかまったく思い至らない。
「『調整完了のお知らせ』という貼り紙らしいんです。心当たりがなくて、北本さんか島原さんが貼ったのかなと思ったのですが」
「『調整完了のお知らせ』? なんですか、その妙なタイトルは」
「……私も最初はよく分からなくて、スルーしていたんです。でもその後、今月に入ってから実際に『調整完了のお知らせ』の紙を目にしたんですよ、これです」
そう言いながら、田村さんはスマホの写真フォルダに保存した『調整のお知らせ』なる貼り紙を見せてくれた。
だが、そこには不可解なものが映り込んでいた。
「あれ?」
田村さんが首を捻る。私も同時に「読めませんね」とため息を吐いた。
スマホに写っている画像の貼り紙には確かに『調整完了のお知らせ』というタイトルがあるのだが、その下の内容の部分は文字化けしていて、とてもじゃないが読むことができなかたのだ。



