○朝・結婚式会場
数日後 統と澄乃の結婚式が神前式スタイルで行われる (※大阪天満宮のような場所)
モノローグ『私たちの結婚式は 簡易的に行われた』
澄乃は統を見るが、統は澄乃を見ない 紋付き羽織袴姿の統はかっこいい
澄乃モノローグ(統さま…… 久しぶりにお顔を見ます)
モノローグ『統さまは任務に行ってばかりで 家にはあまりおられません』
澄乃モノローグ(寝室も別だしね)
澄乃が統を見ていない時に、統が澄乃を見ている
婚儀が終わった後、統父登場 足音――コツ
統父「ようやく結婚したな」
統「父上」
統は頭を下げる
澄乃モノローグ(統さまのお父さま……!)
澄乃「は 初めまして 水無月澄乃です……」
澄乃はお辞儀をする
統父「うむ」
少しなごやかな雰囲気に、統が口を挟む
統「違うだろ」
なんだろうと思っていると、
統「お前はもう今日から鷹ノ宮澄乃だろ」
そう言われて、澄乃は ドキ……とする
澄乃モノローグ(私 本当に妻になるんだ……)
ドキドキしたのも束の間、
統「今後は間違えるな」
統は冷たい顔をしている(ように見える)ので、澄乃は萎縮する
澄乃モノローグ(き……厳しい……っ)
澄乃「す すみません」
澄乃は統父に名乗り直す
澄乃「え えと 鷹ノ宮澄乃です……」
統父「ははは 構わぬ」
統父は愛想良く笑ってから、冷静な顔に戻る
統父「それより 話がある」
○夜・鷹ノ宮家 本邸
敷地の中に屋敷が2つあり、ひとつは当主(統父)の屋敷で、父と母が暮らしている。もうひとつの屋敷に統が暮らしている。ふたりは本邸(当主の屋敷)へむかう
十五畳ほどの部屋で、統父・統・澄乃がいる
統父は真顔の冷静な顔
統父「統の霊障の話だが」
澄乃はごくっと息をのむ
統父「このことは他言無用だ 他の家に知られたくない 今は薬で抑えているが 効きも悪くなっていたところだ 本当にちょうどよかった」
統の顔は暗く、澄乃はそれを見る。
澄乃モノローグ(薬――……統さまが……)
統父「統は私の跡を継ぎ 黒衛の大尉を目指す男だ 一刻も早く治療するように」
澄乃「しょ 承知しました」(汗)
澄乃は萎縮してお辞儀する
統「父上」
統が澄乃の肩を抱く
統「澄乃にあまり圧をかけないでください まだ嫁いできたばかりなんですから」
澄乃ドキ……
統「澄乃には力があります 時間はかかりますが あとは俺が精進するのみです」
統モノローグ(統さま かばってくれてる?)
統父「ははは そうか お前がそのようなことを言うとは よいことだ」
父は笑う
澄乃モノローグ(私 まだあまりお役に立っていないのに)
統を見る
澄乃モノローグ(不思議な人――……)
○夜・鷹ノ宮統の屋敷
就寝前に澄乃は絹江に声を掛けられる
絹江「澄乃さま こちらです」
澄乃「? なんですか絹江さん」
絹江「今日からお部屋はこちらをお使いください」
澄乃「あ はい……!」
澄乃モノローグ(今まで客室だったものね)
○寝室
案内された部屋は、布団が二組敷いてあった
澄乃は部屋の入り口で、少し顔を赤くして動揺する
澄乃モノローグ(布団が二組……!!)
澄乃モノローグ(え……っ これって……っ)
ドキドキしていると、後ろから統がやってくる
統「今日から正式に夫婦なんだ おかしくはないだろう」
澄乃は振り返る
澄乃「あ…… す 統さま」
澄乃モノローグ(本当に一緒に寝るの……!?)
統「なんのことはない 寝るだけだろ」
統はすたすたと部屋にはいり、澄乃もおずおずとつづく
統は布団へ 澄乃に背を向ける形で横向きに寝る
澄乃モノローグ(ほ 本当に寝てる)
澄乃も布団へ もぞ……
そのまま寝たのかわからない統の背中を見ていると
澄乃「……」
統「なんだ」
統が起きてて声を掛けてきたので、澄乃はびくっとする
澄乃「あの わ 私で良かったのでしょうか 統さまならもっとたくさん縁談があったのでは……と……思っただけで……」
統「あった」
さらりと統は答える
澄乃モノローグ(やっぱり……!)(汗)
統「だが…… 名家巫女十二家のうち霊障に効くのはお前の歌だけだ」
澄乃モノローグ(え――……?)
統「他の家の巫女に歌わせてみたが 特に効果はなかった 舞を見たいと言って踊らせたんだ お前だけなんだ 俺を癒やせるのは」
澄乃はドキっとする
統「……寝る前に一曲歌え」
澄乃「えっ」
澄乃モノローグ(今ですか!?)
歌う澄乃を統は無言でじっと見ている
澄乃は歌い終わる
澄乃「ど どうでしょう……」焦り
統「発作が起きてないと効いてるかわからんな」(真顔)
澄乃モノローグ(そんな気はしてました……)(泣)
澄乃「統さま 普段は全然霊障を抱えてるなんてわかりません」
統「なにもなければ普通に決まってるだろ」
澄乃「……」(汗)
統「俺はもう寝る お前も寝ろ」
澄乃「は はい」
澄乃モノローグ(あいかわらずお顔が怖い)
○澄乃の夢の中・巳檮原神社
桐子「お義姉さま 祭壇の掃除お願いね」
澄乃「……はい」
澄乃は神社の本殿の掃除をする 布巾で拭いていると、手に何かがあたる さわっ
澄乃モノローグ(?)
本来ない何かがあるので、それを取り出してみると、それはネズミの死骸だった
澄乃「ひっ」
澄乃は手に持ってしまったそれをボトッと落とす
桐子登場
桐子「あぁら だめじゃない――お義姉さまは蛇のお嫁さんなんだから これはあんたのご飯でしょ――」
澄乃「やめて……やめて……」
ネズミの死骸を口に突っ込まれる
桐子「なんで嫌がってるの? ミズチさまに言いつけちゃおうかしら――」
澄乃モノローグ(イヤ――……!)
○現実・夜・鷹ノ宮統邸寝室
がばっと起き上がる澄乃
澄乃モノローグ(夢……)
澄乃「はぁっはぁっ」
澄乃モノローグ(もうあの家にはいない いないのよ澄乃 大丈夫 大丈夫だから……)
澄乃は再び布団をかぶる
統はそれを起きて聞いているが、無言のまま考えている
統「……」
○朝・寝室
翌朝、澄乃が目覚める
澄乃「ん……」
統「起きたか」
統の声をしたほうを見ると、彼はもう立ち上がって服を着替えている
澄乃「おはようございます」
統「先に行く」
澄乃モノローグ(あ……)
澄乃「はい」
冷たい態度だなと思って、澄乃は眉をさげる
それを見た統は、
統「あー……違う だから ゆっくり来い」
若干歯切れ悪く、若干照れ隠しのような顔でそう言う
そしてさっと襖をしめて部屋から出て行く
澄乃は面食らう
澄乃モノローグ(え? 今……なんて?)
澄乃はこっそり統の後を追う
統は廊下で絹江を見かけて話しかけた
統「絹江 あいつを働かせるな まだ療養させたい いいな」
絹江「うふふ わかりましたとも」
という会話は澄乃は聞いて、驚く
澄乃モノローグ(!! ――も もしかして 統さまって(怖いけど)怖くない……?)
澄乃「……」
澄乃はその場に立ち尽くす
絹江が笑っているので、
統「なにを笑っている 不愉快だ」
と怒る
統「それより今日の天気は?」
○昼・一般住宅街
街中に悪鬼が出現し、人々は逃げ惑っている
町民「きゃあああっ 悪鬼よ」
町民「こっちに来るぞ」
町民「誰か……」
だだっ 足音
統が悪鬼を刀で切る ザン
悪鬼は黒い煙になる 黒い煙がたなびく
町民「うぉおおお」
町民「黒衛だ!」
町民「黒衛が来た!」
町民「ありがとうございます 退魔師さま」
統「ふん」
雅人(統男友だち・黒衛隊服)後ろから登場 走ってきたので浅い呼吸をする
雅人「統ー! ちょっと早すぎー!」
統「雅人」
雅人「そろそろ悪鬼の報告があったとこだから 十分警戒を……って もしかして それ!?」
黒い煙をみて驚く雅人
統「今頃気付いたのか」
後ろから他の黒衛の人間(統の部下)が数名バタバタと足音をたててやってくる
部下「隊長ー」
雅人「いつもながら早すぎだろ……」
統「お前らが遅い」
雅人「こないだの任務もひとりで行っちゃったから驚いたよ 蛇の悪鬼の情報がでるとすぐに飛んでっちまうんだから」
統「……ヤツかと思っただけだ」
雅人は明るい顔で、手を頭の後ろで組む
雅人「その様子だと、違ったんだろ? なに 収穫ゼロ?」
統「いや」
統「嫁を拾った」
雅人「は?」
統「そう言えば言ってなかったな 結婚したんだ俺」
雅人「えぇ~~~!? 冗談だろ!? いやお前が冗談言わないよな 石のようなやつだし」
統「殴られたいのか?」
雅人「ずっと保留にしてたじゃん! なにがあったんだよ! あ! よっぽどかわいいとか?」
その時、統が雅人を睨む
雅人「なにその顔」(※ツッコミのニュアンスで)
統「俺の妻のことをあれこれ言うな」
雅人「えっ……あははははは 妻だって~!」
雅人は笑い転げる
統「うるさい 行くぞ」
雅人「あ~まって! 統~」
統は雅人を無視してスタスタと歩いていく
○夜・統の屋敷・玄関
日がとっぷり暮れて、夜も遅い時間に統は帰宅
統「ただいま」
玄関に澄乃が使用人といる
澄乃「おかえりなさいませ」
澄乃がいておどろいた統
統「待っていろなんて言ってない」
ギン!と睨むような顔で言う
澄乃「……」
澄乃モノローグ(勇気を出すのよ 澄乃)
澄乃「も もしかして」
澄乃「夜が遅いからですか?」
統「そうだ」
澄乃「私が眠いと思ってですか」
統「そうだ」
統「なんなんだ お前 早く布団に行け」
澄乃モノローグ(やっぱり! 統さまって……口下手なだけ!? な……なぁんだ……)
統は上着を脱いで澄乃にあずけると廊下をスタスタ進み、澄乃はその後を付いていく
澄乃モノローグ(私 やっていけそうです)
澄乃「ふふっ 起きてますっ」
澄乃は小さく笑い
統「……」
統はその澄乃の顔を見る
天気は雨に変わる
ぽつ……ザァーーー
統は立ちくらみがする クラッ
統「!」
そこで統の霊障の発作が起きる
統「がっ……!」
澄乃「! 統さま!」
統が壁に手をダンとついて、体を支える
統「がはっ……」
澄乃モノローグ(霊障の発作)
澄乃「統さま! しっかり!」
絹江「お薬をとってまいります」
絹江は走り去る
統「ぐっ すみの……」
澄乃「はい! 今歌います」
澄乃歌うが歌っている途中に統を見ると、苦しそうな顔をしている
澄乃モノローグ(!! どうして 効いてない いつもと同じなのに)
統のシャツがはだけ、じわ……と体に黒い模様が浮き出てくるのが見える。それは蛇の締め付けの跡のように見え、統の胴体と腕にあらわれた
澄乃モノローグ(あれは何!? まるで 蛇の締め跡みたい――)
澄乃はミズチのことを思い出し、ぞっとする
雨脚は強まり、雨の音が響く
澄乃モノローグ(雨……)
思い出し統「今日の天気は?」
澄乃モノローグ(統さまは毎日天気を確認される もしかして天候も関係あるの!?)
歌い終わったが、統は苦しそうなままで、澄乃は絶望感に襲われる
澄乃「……」
澄乃モノローグ(どうしよう 助けられない 私がやらなくちゃいけないのに)
その時、ふわっと統の腕が伸びてきて、澄乃を抱きしめる
統「大丈夫だから 落ち着いて歌え」
澄乃は驚くが、しんどいのにそう言ってくれた統を思って、気力をとりもどす。
澄乃「はい!」
澄乃は深呼吸し、統の腕の中で再度歌う。ふたりは光に包まれる
ザァアアアと雨の音だけが響く
しばらくあと
統は落ち着き、澄乃の膝枕で寝ている(※なかば気絶)
澄乃モノローグ(統さま……)
澄乃はほっとして
澄乃「よかったです」
眉を下げて小さく笑う
澄乃モノローグ(抱きしめられちゃった 私を落ち着かせるためとはいえ)
統の顔をじっと見る
澄乃モノローグ(統さま 私 あなたのこと 誤解してました 本当は優しい人なんですね――……)
○巳檮原神社・境内
ガシャン と神器が割れる音
桐子「はぁっ!? お義姉さまがいないですって!? どういうことなの!?」
義父「わからないが 逃げ出したのだろう」
義父「〝足枷〟も切れている いったいどうやって……」
義母「ねぇ……婚礼の儀式って一週間もするんでしょ? まだしけこんでるだけじゃないの?」
義父「ミズチさまの気配もないんだ!」
義母「……!」
義母は黙らされ、息をのむ
義父「くそっ……一週間後に見に行こうと思ったがばかりに 出遅れた 残っていたのは これだけ…… 新たなミズチさまだ」
父が手を出すと手のひらの上にチビの白蛇がいる
桐子はそれを見てぞっとする
桐子「お父さま……それってもしかして……」
桐子はたじろぎながら尋ねる
義父「ああ 成蛇になったら巫女を捧げないとな」
桐子青ざめる
桐子「蛇のお嫁さんなんて私イヤよ!」
義父「もちろん桐子は行かせないよ 澄乃を探そう 金もないんだ そう遠くへは行けないはずだ」
桐子「……そうね」
桐子「どこに行ったって絶対に見つけ出してやるわ……!!」
数日後 統と澄乃の結婚式が神前式スタイルで行われる (※大阪天満宮のような場所)
モノローグ『私たちの結婚式は 簡易的に行われた』
澄乃は統を見るが、統は澄乃を見ない 紋付き羽織袴姿の統はかっこいい
澄乃モノローグ(統さま…… 久しぶりにお顔を見ます)
モノローグ『統さまは任務に行ってばかりで 家にはあまりおられません』
澄乃モノローグ(寝室も別だしね)
澄乃が統を見ていない時に、統が澄乃を見ている
婚儀が終わった後、統父登場 足音――コツ
統父「ようやく結婚したな」
統「父上」
統は頭を下げる
澄乃モノローグ(統さまのお父さま……!)
澄乃「は 初めまして 水無月澄乃です……」
澄乃はお辞儀をする
統父「うむ」
少しなごやかな雰囲気に、統が口を挟む
統「違うだろ」
なんだろうと思っていると、
統「お前はもう今日から鷹ノ宮澄乃だろ」
そう言われて、澄乃は ドキ……とする
澄乃モノローグ(私 本当に妻になるんだ……)
ドキドキしたのも束の間、
統「今後は間違えるな」
統は冷たい顔をしている(ように見える)ので、澄乃は萎縮する
澄乃モノローグ(き……厳しい……っ)
澄乃「す すみません」
澄乃は統父に名乗り直す
澄乃「え えと 鷹ノ宮澄乃です……」
統父「ははは 構わぬ」
統父は愛想良く笑ってから、冷静な顔に戻る
統父「それより 話がある」
○夜・鷹ノ宮家 本邸
敷地の中に屋敷が2つあり、ひとつは当主(統父)の屋敷で、父と母が暮らしている。もうひとつの屋敷に統が暮らしている。ふたりは本邸(当主の屋敷)へむかう
十五畳ほどの部屋で、統父・統・澄乃がいる
統父は真顔の冷静な顔
統父「統の霊障の話だが」
澄乃はごくっと息をのむ
統父「このことは他言無用だ 他の家に知られたくない 今は薬で抑えているが 効きも悪くなっていたところだ 本当にちょうどよかった」
統の顔は暗く、澄乃はそれを見る。
澄乃モノローグ(薬――……統さまが……)
統父「統は私の跡を継ぎ 黒衛の大尉を目指す男だ 一刻も早く治療するように」
澄乃「しょ 承知しました」(汗)
澄乃は萎縮してお辞儀する
統「父上」
統が澄乃の肩を抱く
統「澄乃にあまり圧をかけないでください まだ嫁いできたばかりなんですから」
澄乃ドキ……
統「澄乃には力があります 時間はかかりますが あとは俺が精進するのみです」
統モノローグ(統さま かばってくれてる?)
統父「ははは そうか お前がそのようなことを言うとは よいことだ」
父は笑う
澄乃モノローグ(私 まだあまりお役に立っていないのに)
統を見る
澄乃モノローグ(不思議な人――……)
○夜・鷹ノ宮統の屋敷
就寝前に澄乃は絹江に声を掛けられる
絹江「澄乃さま こちらです」
澄乃「? なんですか絹江さん」
絹江「今日からお部屋はこちらをお使いください」
澄乃「あ はい……!」
澄乃モノローグ(今まで客室だったものね)
○寝室
案内された部屋は、布団が二組敷いてあった
澄乃は部屋の入り口で、少し顔を赤くして動揺する
澄乃モノローグ(布団が二組……!!)
澄乃モノローグ(え……っ これって……っ)
ドキドキしていると、後ろから統がやってくる
統「今日から正式に夫婦なんだ おかしくはないだろう」
澄乃は振り返る
澄乃「あ…… す 統さま」
澄乃モノローグ(本当に一緒に寝るの……!?)
統「なんのことはない 寝るだけだろ」
統はすたすたと部屋にはいり、澄乃もおずおずとつづく
統は布団へ 澄乃に背を向ける形で横向きに寝る
澄乃モノローグ(ほ 本当に寝てる)
澄乃も布団へ もぞ……
そのまま寝たのかわからない統の背中を見ていると
澄乃「……」
統「なんだ」
統が起きてて声を掛けてきたので、澄乃はびくっとする
澄乃「あの わ 私で良かったのでしょうか 統さまならもっとたくさん縁談があったのでは……と……思っただけで……」
統「あった」
さらりと統は答える
澄乃モノローグ(やっぱり……!)(汗)
統「だが…… 名家巫女十二家のうち霊障に効くのはお前の歌だけだ」
澄乃モノローグ(え――……?)
統「他の家の巫女に歌わせてみたが 特に効果はなかった 舞を見たいと言って踊らせたんだ お前だけなんだ 俺を癒やせるのは」
澄乃はドキっとする
統「……寝る前に一曲歌え」
澄乃「えっ」
澄乃モノローグ(今ですか!?)
歌う澄乃を統は無言でじっと見ている
澄乃は歌い終わる
澄乃「ど どうでしょう……」焦り
統「発作が起きてないと効いてるかわからんな」(真顔)
澄乃モノローグ(そんな気はしてました……)(泣)
澄乃「統さま 普段は全然霊障を抱えてるなんてわかりません」
統「なにもなければ普通に決まってるだろ」
澄乃「……」(汗)
統「俺はもう寝る お前も寝ろ」
澄乃「は はい」
澄乃モノローグ(あいかわらずお顔が怖い)
○澄乃の夢の中・巳檮原神社
桐子「お義姉さま 祭壇の掃除お願いね」
澄乃「……はい」
澄乃は神社の本殿の掃除をする 布巾で拭いていると、手に何かがあたる さわっ
澄乃モノローグ(?)
本来ない何かがあるので、それを取り出してみると、それはネズミの死骸だった
澄乃「ひっ」
澄乃は手に持ってしまったそれをボトッと落とす
桐子登場
桐子「あぁら だめじゃない――お義姉さまは蛇のお嫁さんなんだから これはあんたのご飯でしょ――」
澄乃「やめて……やめて……」
ネズミの死骸を口に突っ込まれる
桐子「なんで嫌がってるの? ミズチさまに言いつけちゃおうかしら――」
澄乃モノローグ(イヤ――……!)
○現実・夜・鷹ノ宮統邸寝室
がばっと起き上がる澄乃
澄乃モノローグ(夢……)
澄乃「はぁっはぁっ」
澄乃モノローグ(もうあの家にはいない いないのよ澄乃 大丈夫 大丈夫だから……)
澄乃は再び布団をかぶる
統はそれを起きて聞いているが、無言のまま考えている
統「……」
○朝・寝室
翌朝、澄乃が目覚める
澄乃「ん……」
統「起きたか」
統の声をしたほうを見ると、彼はもう立ち上がって服を着替えている
澄乃「おはようございます」
統「先に行く」
澄乃モノローグ(あ……)
澄乃「はい」
冷たい態度だなと思って、澄乃は眉をさげる
それを見た統は、
統「あー……違う だから ゆっくり来い」
若干歯切れ悪く、若干照れ隠しのような顔でそう言う
そしてさっと襖をしめて部屋から出て行く
澄乃は面食らう
澄乃モノローグ(え? 今……なんて?)
澄乃はこっそり統の後を追う
統は廊下で絹江を見かけて話しかけた
統「絹江 あいつを働かせるな まだ療養させたい いいな」
絹江「うふふ わかりましたとも」
という会話は澄乃は聞いて、驚く
澄乃モノローグ(!! ――も もしかして 統さまって(怖いけど)怖くない……?)
澄乃「……」
澄乃はその場に立ち尽くす
絹江が笑っているので、
統「なにを笑っている 不愉快だ」
と怒る
統「それより今日の天気は?」
○昼・一般住宅街
街中に悪鬼が出現し、人々は逃げ惑っている
町民「きゃあああっ 悪鬼よ」
町民「こっちに来るぞ」
町民「誰か……」
だだっ 足音
統が悪鬼を刀で切る ザン
悪鬼は黒い煙になる 黒い煙がたなびく
町民「うぉおおお」
町民「黒衛だ!」
町民「黒衛が来た!」
町民「ありがとうございます 退魔師さま」
統「ふん」
雅人(統男友だち・黒衛隊服)後ろから登場 走ってきたので浅い呼吸をする
雅人「統ー! ちょっと早すぎー!」
統「雅人」
雅人「そろそろ悪鬼の報告があったとこだから 十分警戒を……って もしかして それ!?」
黒い煙をみて驚く雅人
統「今頃気付いたのか」
後ろから他の黒衛の人間(統の部下)が数名バタバタと足音をたててやってくる
部下「隊長ー」
雅人「いつもながら早すぎだろ……」
統「お前らが遅い」
雅人「こないだの任務もひとりで行っちゃったから驚いたよ 蛇の悪鬼の情報がでるとすぐに飛んでっちまうんだから」
統「……ヤツかと思っただけだ」
雅人は明るい顔で、手を頭の後ろで組む
雅人「その様子だと、違ったんだろ? なに 収穫ゼロ?」
統「いや」
統「嫁を拾った」
雅人「は?」
統「そう言えば言ってなかったな 結婚したんだ俺」
雅人「えぇ~~~!? 冗談だろ!? いやお前が冗談言わないよな 石のようなやつだし」
統「殴られたいのか?」
雅人「ずっと保留にしてたじゃん! なにがあったんだよ! あ! よっぽどかわいいとか?」
その時、統が雅人を睨む
雅人「なにその顔」(※ツッコミのニュアンスで)
統「俺の妻のことをあれこれ言うな」
雅人「えっ……あははははは 妻だって~!」
雅人は笑い転げる
統「うるさい 行くぞ」
雅人「あ~まって! 統~」
統は雅人を無視してスタスタと歩いていく
○夜・統の屋敷・玄関
日がとっぷり暮れて、夜も遅い時間に統は帰宅
統「ただいま」
玄関に澄乃が使用人といる
澄乃「おかえりなさいませ」
澄乃がいておどろいた統
統「待っていろなんて言ってない」
ギン!と睨むような顔で言う
澄乃「……」
澄乃モノローグ(勇気を出すのよ 澄乃)
澄乃「も もしかして」
澄乃「夜が遅いからですか?」
統「そうだ」
澄乃「私が眠いと思ってですか」
統「そうだ」
統「なんなんだ お前 早く布団に行け」
澄乃モノローグ(やっぱり! 統さまって……口下手なだけ!? な……なぁんだ……)
統は上着を脱いで澄乃にあずけると廊下をスタスタ進み、澄乃はその後を付いていく
澄乃モノローグ(私 やっていけそうです)
澄乃「ふふっ 起きてますっ」
澄乃は小さく笑い
統「……」
統はその澄乃の顔を見る
天気は雨に変わる
ぽつ……ザァーーー
統は立ちくらみがする クラッ
統「!」
そこで統の霊障の発作が起きる
統「がっ……!」
澄乃「! 統さま!」
統が壁に手をダンとついて、体を支える
統「がはっ……」
澄乃モノローグ(霊障の発作)
澄乃「統さま! しっかり!」
絹江「お薬をとってまいります」
絹江は走り去る
統「ぐっ すみの……」
澄乃「はい! 今歌います」
澄乃歌うが歌っている途中に統を見ると、苦しそうな顔をしている
澄乃モノローグ(!! どうして 効いてない いつもと同じなのに)
統のシャツがはだけ、じわ……と体に黒い模様が浮き出てくるのが見える。それは蛇の締め付けの跡のように見え、統の胴体と腕にあらわれた
澄乃モノローグ(あれは何!? まるで 蛇の締め跡みたい――)
澄乃はミズチのことを思い出し、ぞっとする
雨脚は強まり、雨の音が響く
澄乃モノローグ(雨……)
思い出し統「今日の天気は?」
澄乃モノローグ(統さまは毎日天気を確認される もしかして天候も関係あるの!?)
歌い終わったが、統は苦しそうなままで、澄乃は絶望感に襲われる
澄乃「……」
澄乃モノローグ(どうしよう 助けられない 私がやらなくちゃいけないのに)
その時、ふわっと統の腕が伸びてきて、澄乃を抱きしめる
統「大丈夫だから 落ち着いて歌え」
澄乃は驚くが、しんどいのにそう言ってくれた統を思って、気力をとりもどす。
澄乃「はい!」
澄乃は深呼吸し、統の腕の中で再度歌う。ふたりは光に包まれる
ザァアアアと雨の音だけが響く
しばらくあと
統は落ち着き、澄乃の膝枕で寝ている(※なかば気絶)
澄乃モノローグ(統さま……)
澄乃はほっとして
澄乃「よかったです」
眉を下げて小さく笑う
澄乃モノローグ(抱きしめられちゃった 私を落ち着かせるためとはいえ)
統の顔をじっと見る
澄乃モノローグ(統さま 私 あなたのこと 誤解してました 本当は優しい人なんですね――……)
○巳檮原神社・境内
ガシャン と神器が割れる音
桐子「はぁっ!? お義姉さまがいないですって!? どういうことなの!?」
義父「わからないが 逃げ出したのだろう」
義父「〝足枷〟も切れている いったいどうやって……」
義母「ねぇ……婚礼の儀式って一週間もするんでしょ? まだしけこんでるだけじゃないの?」
義父「ミズチさまの気配もないんだ!」
義母「……!」
義母は黙らされ、息をのむ
義父「くそっ……一週間後に見に行こうと思ったがばかりに 出遅れた 残っていたのは これだけ…… 新たなミズチさまだ」
父が手を出すと手のひらの上にチビの白蛇がいる
桐子はそれを見てぞっとする
桐子「お父さま……それってもしかして……」
桐子はたじろぎながら尋ねる
義父「ああ 成蛇になったら巫女を捧げないとな」
桐子青ざめる
桐子「蛇のお嫁さんなんて私イヤよ!」
義父「もちろん桐子は行かせないよ 澄乃を探そう 金もないんだ そう遠くへは行けないはずだ」
桐子「……そうね」
桐子「どこに行ったって絶対に見つけ出してやるわ……!!」

