4話 ご指名入りました。
……――とまぁ、再婚一日目にして上を下への大波乱を極めたわけだけれど。
かわいい弟ができる!と、密かに抱いていた夢はあっけなく消え去るも、「あまり関りがなければそれだけファンバレの危険もなくなるのでは?」という、なぞのヲタクポジティブ思考を発揮した俺はそんなに落ち込んでいなかった。
だって、推しだよ?
推しに、俺みたいな見た目中学生のちんちくりん兄貴なんて似合わないしいらないだろ。
推しの汚点になるつもりはさらさらないのだ。
それに、万が一ファンバレしてみろ……。
俺のファン人生が終わりを迎えてしまうどころか、俺が颯くんの私生活を脅かす存在になってしまう。
そんなのごめんだ。
それなら、私生活では必要以上に関わらず、俺はこれまで通りモデル・颯の推し活に勤しむのみ!
俺は、そう心に決めて、挨拶など必要最低限の会話以外で颯くんに話しかけることはしないよう気を付けていた。
念のため、部屋に飾ってあった颯くんの切り抜きや雑誌なんかは、クローゼット内に収納した。
「尚斗くん、二年生のときの数学のノートって取ってあったりする?」
夕飯どき、日奈子さんにそんなことを訊かれた。
「え、数学のノート? あったと思うけど……」
初日に「家族になるんだから、敬語はやめてね」と日奈子さんにお願いされたので、恐縮ながらタメ語で話させてもらっている。
「――いいって、母さん」という颯くんの制止もきかず、日奈子さんは目を輝かせる。
つくづく、颯くんのイケメンはお母さん譲りなんだな、と思わされるくらいに、面影が重なるこの二人。
――てことは、俺と父さんのタイプが似てるってこと?
と複雑な気持ちにもなったけど。
「颯に貸してあげてほしいの。前の高校よりこっちの高校の授業が進んでるみたいで、授業が難しいんですって。補講をしてくれるって先生が言ってるんだけど、モデルの方もあってなかなか時間が合わなくて……」
颯くんの状況に、胸が締め付けられる。
親の勝手な再婚で転校も余儀なくされ、ただでさえ学業と仕事の両立が大変なのに、授業について行けないなんて。
その一端を俺も関わってるとはいえ、同情せざるにはいられない。
「浩人さんに相談したら、尚斗くん数学が得意だから教えてもらえばいいんじゃないかって言ってくれたんだけど、それはさすがに申し訳ないよねって……。だからノート貸してもらおうかしらと」
「自分でなんとかするから」
余計な事するなよ、と言いたげた視線をひしひしと感じたけれど、ここは気付かない振り。
「俺のでよければ全然いいよ」
だって、推しのピンチなんだから。
役に立ちたいって思うのがファンってもんだろ。
こんなちんちくりんに教えてもらうのはさすがに嫌だろうけど、せめてノートくらいは役に立たせてほしい!
颯くんにストップをかけられる前に俺は席を立ち、自室からノートを数冊掘り出してテーブルの上に置いた。
捨てずにとっておいた俺、グッジョブ!
「ありがとう、尚斗くん。助かるわ」
「俺でわかることなら聞いて? いつでも教えるから」
「……ありがと」
――推しに「ありがとう」と言われる日が来るなんて。
例え意訳が「余計な事すんな」だったとしても、格別に嬉しい。
と、まぁ、昨日もそんなやり取りをしたくらい、颯くんもみんなでいるときは必要最低限の会話はしてくれるし好青年だから気まずさは欠片もなく、思ったよりも平穏な日々だった。
「例の転校生モデル、告白イベントにプレゼント攻撃にすごいらしいじゃん。我が校始まって以来の争奪戦が繰り広げられてるって」
昼休み、教室の窓際&一番後ろの席で昼食を食べているときに早瀬が言う。
早瀬は仲のいいクラスメイトで、俺が所属している漫画研究同好会の仲間でもある。
漫研では、漫画やイラストを描いたり、読んだ漫画について語り合ったりと、各々が好きに活動するゆるーい同好会だ。
俺は、週に二日程度顔をだして、みんなが持ち寄ったおすすめの漫画を読んだり、イラストを描いたりして暇つぶしをしている。まぁ、正真正銘のヲタクだ。
「らしいね」
引っ越しに伴って、俺と同じ高校に転入してきた颯くんだったけど、それはそれはもう学校でも一躍有名人。
颯くんのことを知らなくても、「モデル」というだけで女子という女子が浮足立って、休み時間には颯くんのクラスに人だかりが出来る大騒ぎ。
二週間経った今でも、隙を見ては颯くんを一目見ようと人が押し掛けるのだとか。
――正直、俺だって推しの高校ライフを覗き見たい……!
学年が違うせいで教室も階が違う俺は、残念ながら今のところ校内で颯くんの姿を見たことはなかった。
友だちできたかな?
女子から迷惑行為されてないかな?
なんて余計な心配をしつつ、推しの制服姿を毎朝拝めるだけでも十分幸せだと思って我慢しているのだ。
「らしいねって、お前の弟で推しだろ」
早瀬には、再婚で弟ができることと同じ高校に転入してくることを話していたので、必然的にバレてしまった。
さらに、俺の推しが颯くんであることも知っている。
「弟で推し」というところだけ声を潜める程度の気遣いはできるのか、と軽く感心しつつ箸を進める。
昼ごはんには、自分で作った弁当を持参している。
周りからは「すごい」「えらい」と言われるけど、シングル家庭にはあるあるなんじゃないかな。
仕事で忙しい父さんの代わりに、暇な俺が夕飯の準備をするようになり、その延長線上で弁当を作ってるだけだから、全然苦じゃない。
日奈子さんが作ると申し出てくれたけれど、バリバリ現役看護師で夜勤や早番など勤務が不定期だからそこは譲らなかった。
で、ついでだからと、同じお弁当を颯くんにも持たせてはいる。
いらないと言われたけれど、体が資本なんだから、と押し付けた。
それに伴い、これまでは腹が満たされればいいと、夕飯の残りと冷凍食品、焼いただけのソーセージとかを詰めるだけだったけど、野菜と肉と栄養バランスを考慮したお弁当づくりを心がけている。
これも、推しの美と健康のためと思えば苦に感じるどころか、やりがいすら感じているから不思議だ。
弁当箱は空になって返ってくるから、きっと食べてくれていると信じたい。
「一緒に住んでるのに、そういう話しねぇの?」
「モデル業で忙しいみたいだしなぁ」
初対面での例の出来事は早瀬には話していないので、その辺りは誤魔化すしかない。推しに対してネガティブなイメージを広げるのはファンとして不本意だから。
それに嘘は言っていない。
颯くんは、早退したり遅刻したり、放課後にも撮影が入る日も多く、家にいない日も多いのだ。
――推しが頑張ってる……!
忙しいのはそれだけ人気だという証拠。
昨日の勉強のことを思うと手放しには喜べないけれど……ファンとしては大変喜ばしく、鼻高々だ。
「告白もプレゼントも全部断ってるらしいけど、あれか、モデルの彼女とかいんのか」
知ってるかと視線で訊かれ、「どうだろうね」とそっけなく会話を切り上げた。
あのルックスだ、彼女の一人や二人いたっておかしくないだろう。
推しには幸せであってほしいと願うのが本当のファンだと俺は思っているので、彼女がいようがいまいが颯くんのファンで在り続ける所存である。
ファンはファンらしく、推し活すべし。
颯くんがレギュラーを務めるファッション雑誌の発売日がもうすぐだ。
今回はどんなファッションを魅せてくれるのか、今からわくわくどきどきが止まらない。
早く発売日にならないかな、と胸を弾ませながら帰り支度をしていた俺の耳に、女子の悲鳴が飛び込んできた。
「なんだ?」
「え、なに?」
騒ぎは廊下の向こうから、徐々にこちらに近づいてくるようで、教室内にいた人たちもみんな廊下の方を見てどよめきだした。
――なんだか、芸能人でも現れたようなはしゃぎ方だな……って、まさか?
この高校で芸能人バリの有名人なんて、思い当たるのは一人しかいない。
――もしかして、颯くん? でもどうして三年の教室に?
この階には、三年の教室以外、授業で使うような教室はないから用事がない限り来ることはないはず。
考えているうちにも、声はどんどん近づいてきて、とうとう人だかりから頭一つ抜きんでた彼が姿を現した。
「颯くんきた!」
「やばっ! 実物やっば! てかなんでうちらの教室に!?」
「え、ビジュよすぎ……!」
「男子と同じ制服とは思えない……どこかのブランド物にしか見えん」
教室内外の女子の絶叫に近い賞賛に、俺は内心で「そうだろう、そうだろう。俺の推しはえぐいだろう」とうれしくてたまらない。
颯くんは、周囲の騒ぎなんか気にも留めず、俺の教室の前まで止まると中を覗くように見渡し始めた。
関わるなって言ってきた向こうが俺に用事なんてあるわけないので、颯くんの視線がこちら側を通るよりも先に視線を手元のスマホに落とす。
なのに、
「――尚斗くん」
と、推しの声が俺の名を呼び、その場にいた全生徒の視線が注がれる。
驚きのあまり反射的に顔を上げれば、ばっちりと推しと目が合ってしまい、無視を決め込むことなどできなかった。
まぁ、このクラスに尚斗は俺だけだから、どっちみち無視なんかできないしするつもりもなかったけれども。
“推しに名前を呼ばれる”という実績解除に沸き立つ心と体を抑えつつ立ち上がった俺に、彼は信じられない言葉を口にする。
「一緒に帰ろ」
……――とまぁ、再婚一日目にして上を下への大波乱を極めたわけだけれど。
かわいい弟ができる!と、密かに抱いていた夢はあっけなく消え去るも、「あまり関りがなければそれだけファンバレの危険もなくなるのでは?」という、なぞのヲタクポジティブ思考を発揮した俺はそんなに落ち込んでいなかった。
だって、推しだよ?
推しに、俺みたいな見た目中学生のちんちくりん兄貴なんて似合わないしいらないだろ。
推しの汚点になるつもりはさらさらないのだ。
それに、万が一ファンバレしてみろ……。
俺のファン人生が終わりを迎えてしまうどころか、俺が颯くんの私生活を脅かす存在になってしまう。
そんなのごめんだ。
それなら、私生活では必要以上に関わらず、俺はこれまで通りモデル・颯の推し活に勤しむのみ!
俺は、そう心に決めて、挨拶など必要最低限の会話以外で颯くんに話しかけることはしないよう気を付けていた。
念のため、部屋に飾ってあった颯くんの切り抜きや雑誌なんかは、クローゼット内に収納した。
「尚斗くん、二年生のときの数学のノートって取ってあったりする?」
夕飯どき、日奈子さんにそんなことを訊かれた。
「え、数学のノート? あったと思うけど……」
初日に「家族になるんだから、敬語はやめてね」と日奈子さんにお願いされたので、恐縮ながらタメ語で話させてもらっている。
「――いいって、母さん」という颯くんの制止もきかず、日奈子さんは目を輝かせる。
つくづく、颯くんのイケメンはお母さん譲りなんだな、と思わされるくらいに、面影が重なるこの二人。
――てことは、俺と父さんのタイプが似てるってこと?
と複雑な気持ちにもなったけど。
「颯に貸してあげてほしいの。前の高校よりこっちの高校の授業が進んでるみたいで、授業が難しいんですって。補講をしてくれるって先生が言ってるんだけど、モデルの方もあってなかなか時間が合わなくて……」
颯くんの状況に、胸が締め付けられる。
親の勝手な再婚で転校も余儀なくされ、ただでさえ学業と仕事の両立が大変なのに、授業について行けないなんて。
その一端を俺も関わってるとはいえ、同情せざるにはいられない。
「浩人さんに相談したら、尚斗くん数学が得意だから教えてもらえばいいんじゃないかって言ってくれたんだけど、それはさすがに申し訳ないよねって……。だからノート貸してもらおうかしらと」
「自分でなんとかするから」
余計な事するなよ、と言いたげた視線をひしひしと感じたけれど、ここは気付かない振り。
「俺のでよければ全然いいよ」
だって、推しのピンチなんだから。
役に立ちたいって思うのがファンってもんだろ。
こんなちんちくりんに教えてもらうのはさすがに嫌だろうけど、せめてノートくらいは役に立たせてほしい!
颯くんにストップをかけられる前に俺は席を立ち、自室からノートを数冊掘り出してテーブルの上に置いた。
捨てずにとっておいた俺、グッジョブ!
「ありがとう、尚斗くん。助かるわ」
「俺でわかることなら聞いて? いつでも教えるから」
「……ありがと」
――推しに「ありがとう」と言われる日が来るなんて。
例え意訳が「余計な事すんな」だったとしても、格別に嬉しい。
と、まぁ、昨日もそんなやり取りをしたくらい、颯くんもみんなでいるときは必要最低限の会話はしてくれるし好青年だから気まずさは欠片もなく、思ったよりも平穏な日々だった。
「例の転校生モデル、告白イベントにプレゼント攻撃にすごいらしいじゃん。我が校始まって以来の争奪戦が繰り広げられてるって」
昼休み、教室の窓際&一番後ろの席で昼食を食べているときに早瀬が言う。
早瀬は仲のいいクラスメイトで、俺が所属している漫画研究同好会の仲間でもある。
漫研では、漫画やイラストを描いたり、読んだ漫画について語り合ったりと、各々が好きに活動するゆるーい同好会だ。
俺は、週に二日程度顔をだして、みんなが持ち寄ったおすすめの漫画を読んだり、イラストを描いたりして暇つぶしをしている。まぁ、正真正銘のヲタクだ。
「らしいね」
引っ越しに伴って、俺と同じ高校に転入してきた颯くんだったけど、それはそれはもう学校でも一躍有名人。
颯くんのことを知らなくても、「モデル」というだけで女子という女子が浮足立って、休み時間には颯くんのクラスに人だかりが出来る大騒ぎ。
二週間経った今でも、隙を見ては颯くんを一目見ようと人が押し掛けるのだとか。
――正直、俺だって推しの高校ライフを覗き見たい……!
学年が違うせいで教室も階が違う俺は、残念ながら今のところ校内で颯くんの姿を見たことはなかった。
友だちできたかな?
女子から迷惑行為されてないかな?
なんて余計な心配をしつつ、推しの制服姿を毎朝拝めるだけでも十分幸せだと思って我慢しているのだ。
「らしいねって、お前の弟で推しだろ」
早瀬には、再婚で弟ができることと同じ高校に転入してくることを話していたので、必然的にバレてしまった。
さらに、俺の推しが颯くんであることも知っている。
「弟で推し」というところだけ声を潜める程度の気遣いはできるのか、と軽く感心しつつ箸を進める。
昼ごはんには、自分で作った弁当を持参している。
周りからは「すごい」「えらい」と言われるけど、シングル家庭にはあるあるなんじゃないかな。
仕事で忙しい父さんの代わりに、暇な俺が夕飯の準備をするようになり、その延長線上で弁当を作ってるだけだから、全然苦じゃない。
日奈子さんが作ると申し出てくれたけれど、バリバリ現役看護師で夜勤や早番など勤務が不定期だからそこは譲らなかった。
で、ついでだからと、同じお弁当を颯くんにも持たせてはいる。
いらないと言われたけれど、体が資本なんだから、と押し付けた。
それに伴い、これまでは腹が満たされればいいと、夕飯の残りと冷凍食品、焼いただけのソーセージとかを詰めるだけだったけど、野菜と肉と栄養バランスを考慮したお弁当づくりを心がけている。
これも、推しの美と健康のためと思えば苦に感じるどころか、やりがいすら感じているから不思議だ。
弁当箱は空になって返ってくるから、きっと食べてくれていると信じたい。
「一緒に住んでるのに、そういう話しねぇの?」
「モデル業で忙しいみたいだしなぁ」
初対面での例の出来事は早瀬には話していないので、その辺りは誤魔化すしかない。推しに対してネガティブなイメージを広げるのはファンとして不本意だから。
それに嘘は言っていない。
颯くんは、早退したり遅刻したり、放課後にも撮影が入る日も多く、家にいない日も多いのだ。
――推しが頑張ってる……!
忙しいのはそれだけ人気だという証拠。
昨日の勉強のことを思うと手放しには喜べないけれど……ファンとしては大変喜ばしく、鼻高々だ。
「告白もプレゼントも全部断ってるらしいけど、あれか、モデルの彼女とかいんのか」
知ってるかと視線で訊かれ、「どうだろうね」とそっけなく会話を切り上げた。
あのルックスだ、彼女の一人や二人いたっておかしくないだろう。
推しには幸せであってほしいと願うのが本当のファンだと俺は思っているので、彼女がいようがいまいが颯くんのファンで在り続ける所存である。
ファンはファンらしく、推し活すべし。
颯くんがレギュラーを務めるファッション雑誌の発売日がもうすぐだ。
今回はどんなファッションを魅せてくれるのか、今からわくわくどきどきが止まらない。
早く発売日にならないかな、と胸を弾ませながら帰り支度をしていた俺の耳に、女子の悲鳴が飛び込んできた。
「なんだ?」
「え、なに?」
騒ぎは廊下の向こうから、徐々にこちらに近づいてくるようで、教室内にいた人たちもみんな廊下の方を見てどよめきだした。
――なんだか、芸能人でも現れたようなはしゃぎ方だな……って、まさか?
この高校で芸能人バリの有名人なんて、思い当たるのは一人しかいない。
――もしかして、颯くん? でもどうして三年の教室に?
この階には、三年の教室以外、授業で使うような教室はないから用事がない限り来ることはないはず。
考えているうちにも、声はどんどん近づいてきて、とうとう人だかりから頭一つ抜きんでた彼が姿を現した。
「颯くんきた!」
「やばっ! 実物やっば! てかなんでうちらの教室に!?」
「え、ビジュよすぎ……!」
「男子と同じ制服とは思えない……どこかのブランド物にしか見えん」
教室内外の女子の絶叫に近い賞賛に、俺は内心で「そうだろう、そうだろう。俺の推しはえぐいだろう」とうれしくてたまらない。
颯くんは、周囲の騒ぎなんか気にも留めず、俺の教室の前まで止まると中を覗くように見渡し始めた。
関わるなって言ってきた向こうが俺に用事なんてあるわけないので、颯くんの視線がこちら側を通るよりも先に視線を手元のスマホに落とす。
なのに、
「――尚斗くん」
と、推しの声が俺の名を呼び、その場にいた全生徒の視線が注がれる。
驚きのあまり反射的に顔を上げれば、ばっちりと推しと目が合ってしまい、無視を決め込むことなどできなかった。
まぁ、このクラスに尚斗は俺だけだから、どっちみち無視なんかできないしするつもりもなかったけれども。
“推しに名前を呼ばれる”という実績解除に沸き立つ心と体を抑えつつ立ち上がった俺に、彼は信じられない言葉を口にする。
「一緒に帰ろ」



