2話 推しが義弟になりました。
俺、竹内尚斗、17歳。高校三年生の受験生。身長は170センチ。(本当は167センチ)。
黒髪黒目で、特筆すべき特徴は女子も羨むくっきり二重の大きめの瞳くらいだろうか。
くりくりの目と丸っこい輪郭は童顔に見えるらしく、初対面で実年齢に見られた試しがないのが悩みの種。高校に入ってからは、目があまり目立たないように前髪を長めに伸ばして隠している。
片や……
俺は、鼻をティッシュで押さえながら、向かいに座り父と笑顔で歓談している例の人物を盗み見る。
――か、かっこよぉ……
コンパクトな我が家のダイニングテーブルが、より小さく見えるくらいすらりと背が高いのに顔が小さくて、どこをとっても文句のつけようがない。
颯くん、16歳。高校2年生。身長178センチ。足のサイズは27センチ。8月19日生まれのしし座。B型。好きな食べ物はカツカレー。嫌いな食べ物はしめじと納豆。趣味は映画鑑賞。
少し長めの前髪はナチュラルにセンターパートでセットされ、凛々しい眉の下には長いまつ毛に縁どられた綺麗なアーモンドの形をした瞳が鎮座している。
そして、整った顔を際立たせているのがほくろだ。
右目尻の泣きぼくろと、左頬にもひとつ。控えめにもしっかりと存在感を放つそれらが、なんとも言えない色気を演出していると評判だ。
そして、特筆すべきは、彼が現役高校生モデルということ。
中学二年生のときに今の芸能事務所にスカウトされて、モデルデビュー。今は人気メンズ雑誌で特集を組まれるくらい、人気絶好調のモデルさんだ。
――そして、俺の推し。
そう、推しさまである。
ずっとずっと見ていたいけれど、また鼻血が出てきてしまいそうになって、慌てて目線を下ろす。そうすれば、マグカップを握るごつごつとした男らしい手が視界に入って、不覚にも胸がドキドキと逸る。
だめだ。
どこを見ても興奮してしまう。
それも仕方ない、推しが半径1メートル以内にいて、同じ空気を吸ってるこの状況がおかしいのだ。
さっきから、何度となく「これは夢だ」と考え「そのうち目が覚めるはず……」と思っているのだけれど、いつまでたっても現実に戻る気配がなくて、いよいよ俺はこれが現実だということを認めざるを得なくなってきている。
「尚斗くん、鼻血止まった?」
斜め向かいに座る日奈子さんが心配そうな顔でこちらを見た。
「だ、大丈夫です。よくあるので」
嘘だけど。恥ずかしいのでそういうことにしとこうと思ったのに、空気の読めない父が「そうなのか? 鼻血なんて幼稚園以来じゃないか?」と台無しにしてくれた。
「日奈子さんと颯くんに会えたのが嬉しくて興奮しすぎたのかな」
「そう、かなぁ、あははは」
頼むからもう黙ってて。
笑顔で隣の父を睨むけど、1%だって伝わってないことは百も承知。
「颯くん、部屋に荷物を置いてくるといいよ。尚斗、案内してあげて」
「えっ、お、俺?!」
「颯くんは尚斗の弟になるんだから、優しくしてあげるんだよ。颯くんも、尚斗と仲良くしてやってね」
「はい、こちらこそ」
颯くんは、笑顔でそう答えた。
ま、眩しい……。さすが推し。笑顔が輝いてる!
マイナスイオンでも出ているのだろうか、なんだかお肌がつやつやしてきた気がする。
その笑顔だけでごはん三杯はいける自信ある。
なんてどうでもいいことばかりが頭に浮かぶなか、父の言葉がひっかかった。
え、待って。
颯くんが、俺の弟……?
推しが、俺の、弟?!
てことはつまり……、これから推しと一つ屋根の下で暮らすってこと――!?
「え、ええぇぇっ――!?」
俺、竹内尚斗、17歳。高校三年生の受験生。身長は170センチ。(本当は167センチ)。
黒髪黒目で、特筆すべき特徴は女子も羨むくっきり二重の大きめの瞳くらいだろうか。
くりくりの目と丸っこい輪郭は童顔に見えるらしく、初対面で実年齢に見られた試しがないのが悩みの種。高校に入ってからは、目があまり目立たないように前髪を長めに伸ばして隠している。
片や……
俺は、鼻をティッシュで押さえながら、向かいに座り父と笑顔で歓談している例の人物を盗み見る。
――か、かっこよぉ……
コンパクトな我が家のダイニングテーブルが、より小さく見えるくらいすらりと背が高いのに顔が小さくて、どこをとっても文句のつけようがない。
颯くん、16歳。高校2年生。身長178センチ。足のサイズは27センチ。8月19日生まれのしし座。B型。好きな食べ物はカツカレー。嫌いな食べ物はしめじと納豆。趣味は映画鑑賞。
少し長めの前髪はナチュラルにセンターパートでセットされ、凛々しい眉の下には長いまつ毛に縁どられた綺麗なアーモンドの形をした瞳が鎮座している。
そして、整った顔を際立たせているのがほくろだ。
右目尻の泣きぼくろと、左頬にもひとつ。控えめにもしっかりと存在感を放つそれらが、なんとも言えない色気を演出していると評判だ。
そして、特筆すべきは、彼が現役高校生モデルということ。
中学二年生のときに今の芸能事務所にスカウトされて、モデルデビュー。今は人気メンズ雑誌で特集を組まれるくらい、人気絶好調のモデルさんだ。
――そして、俺の推し。
そう、推しさまである。
ずっとずっと見ていたいけれど、また鼻血が出てきてしまいそうになって、慌てて目線を下ろす。そうすれば、マグカップを握るごつごつとした男らしい手が視界に入って、不覚にも胸がドキドキと逸る。
だめだ。
どこを見ても興奮してしまう。
それも仕方ない、推しが半径1メートル以内にいて、同じ空気を吸ってるこの状況がおかしいのだ。
さっきから、何度となく「これは夢だ」と考え「そのうち目が覚めるはず……」と思っているのだけれど、いつまでたっても現実に戻る気配がなくて、いよいよ俺はこれが現実だということを認めざるを得なくなってきている。
「尚斗くん、鼻血止まった?」
斜め向かいに座る日奈子さんが心配そうな顔でこちらを見た。
「だ、大丈夫です。よくあるので」
嘘だけど。恥ずかしいのでそういうことにしとこうと思ったのに、空気の読めない父が「そうなのか? 鼻血なんて幼稚園以来じゃないか?」と台無しにしてくれた。
「日奈子さんと颯くんに会えたのが嬉しくて興奮しすぎたのかな」
「そう、かなぁ、あははは」
頼むからもう黙ってて。
笑顔で隣の父を睨むけど、1%だって伝わってないことは百も承知。
「颯くん、部屋に荷物を置いてくるといいよ。尚斗、案内してあげて」
「えっ、お、俺?!」
「颯くんは尚斗の弟になるんだから、優しくしてあげるんだよ。颯くんも、尚斗と仲良くしてやってね」
「はい、こちらこそ」
颯くんは、笑顔でそう答えた。
ま、眩しい……。さすが推し。笑顔が輝いてる!
マイナスイオンでも出ているのだろうか、なんだかお肌がつやつやしてきた気がする。
その笑顔だけでごはん三杯はいける自信ある。
なんてどうでもいいことばかりが頭に浮かぶなか、父の言葉がひっかかった。
え、待って。
颯くんが、俺の弟……?
推しが、俺の、弟?!
てことはつまり……、これから推しと一つ屋根の下で暮らすってこと――!?
「え、ええぇぇっ――!?」



