用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて幸せです~



「エレインみいつけた!」
 クローゼットのドレスとドレスの間から、ひょっこりとまん丸の瞳がエレインを捉えた。
 青色のそれは、薄暗い室内でもキラキラと光を放つかのように輝いている。
「見つかってしまいましたね」
 観念して服をかき分けて出ていけば、テオが抱き着いてきた。
 小さな体を受け止めて、見上げてくるのは得意げな顔。
 エレインの毒殺未遂から早二週間、王宮内から出ることを禁止されていたエレインは、こうしてテオと遊んで過ごすのが日課になりつつあった。
「見つけるのが上手になりましたね、テオさま」
「ふふふ、あんよがみえてたの」
「まぁ、よく見ていますね。ニコルはもう見つかりましたか?」
「まだなの。エレインいっしょにさがしてくれる?」
 可愛いお願いに「もちろんです」と微笑んで、テオの小さな手を引きクローゼットを出た。
 大人げないニコルは全力で隠れるため、テオには見つけられない。だから、エレインがヒントを出すのがいつもの流れになっているのだ。
「ニコルみいつけた!」
 そうして二人で時間をかけて見つけた頃には、ピアノのお稽古の時間になり、テオとお別れになる。
「お稽古頑張ってくださいね」
「うん! ぼくのピアノ、エレインに聞いてほしいの」
「はい、楽しみにしています」
 迎えにきた侍女と去って行くテオを見送る。
 見えなくなるまで廊下に立っていたが、テオが振り返ることはなかった。
「テオドールさまもすっかり泣かなくなりましたね。前はエレインさまと離れるたびに駄々をこねたり泣いたりしていたのに」
 まさに今、エレインが考えていたことをニコルが口にする。
 日に日に成長を見せるテオに、周囲は驚かされるばかりだった。
「そうね」
(心が癒えてきている証拠だわ)
 最愛の両親を失った彼の悲しみは、きっと消えることはない。
 けれど、悲しみに凍てついた心は、エレインをはじめ周囲の愛に守られ温められて少しずつほぐれている。
 一時は、エレインに異様なまでに依存していたテオも、最近では「ぼく赤ちゃんじゃないもん」という見栄っ張りが発動して離れられるようになってきた。
 だけれども、一日以上離れたことはないためそこは不安要素として残ってはいる。
(まぁ、そこはその内にきっと……)
 部屋に戻り、ニコルが入れてくれたハーブティーを飲んでいると、部屋がノックされた。