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それから数週間、エレインは厳重な警備の元リゼットのハーブ園に通い、力を使ってハーブの育成に励んでいた。
初日の開花により材料がそろったため収穫し、すでに薬の製造に入っているため数日後には出荷できる算段が付いている。
(力のおかげで休養していた一週間は取り戻せてる……いえ、それ以上だわ)
この調子でいけば、初回の契約分はあっという間に納品できそうで、エレインはほっとした。
引き受けたのに初っ端から約束を反故にしてしまっては、いくらリゼット相手とはいえ、心証が悪いはずだから。
「エレインさま、お茶のお時間ですので、手を止めてください!」
アトリエで作業に没頭していたところ、ニコルの声によって中断させられてしまう。
これは、エレインが仕事復帰するにあたって、アランと交わした約束。
午前と午後に一度ずつ、決まった時間に必ずティータイムを取るというもの。
いつも仕事にのめり込み、休憩を取るのも忘れて働いてしまうエレインを憂慮しての策だ。
その約束と引き換えに、エレインは一週間の休養で仕事復帰を許してもらえたという経緯があった。
(契約できたおかげで全然疲れないのだけれど……)
だからティータイムは一回に減らしてくれと願い出たものの、全く取り合ってもらえなかった。
「今日はお天気がいいので、中庭に準備してくれていますよ」
「わかったわ。今日はテオさまもご一緒する日だったかしら?」
「残念ながら、今日はピアノのお稽古の日なのでいらっしゃいません」
「そう……仕方ないわね」
午前中のティータイムは、テオも同席することも多いが、最近はピアノの稽古が始まったのもあり、テオとの時間がすっかり減っていた。
相変わらずエレインに懐いてくれているテオだが、目に見える成長を遂げてエレインの手を離れつつあった。
(契約が終わるのももう時間の問題だわ)
時間を見つけては、テオと過ごす時間を取ろうとしている自分がいる。
話すようになったテオと、会話できるのが嬉しいし、拙いながらも一生懸命に話す姿がなによりも可愛い。
くしゃくしゃの愛らしい笑顔は、疲れも吹き飛ばしてくれる。
愛おしくて愛おしくて、たまらないのだ。
助けられているのは、エレインも同じだった。
(私の方が、離れられなくて駄目だわ……)
別れのときを考えると、これ以上深く関わるべきではないと、頭ではわかっていても、どうしても自分から距離を取ることは躊躇ってしまう。
すぐそこに迫るそのときを考えると、胸が苦しくなって息が上手くできなくなる。
(暗くなってしまうから考えるのはやめましょう)
意識を変えるため、軽く首を振ってエレインは顔を上げると、中庭が見えてきた。
最初は、作業を中断されることに不満があったが、よく手入れされたガーデンは精霊も多く舞っていて、見ているだけで気持ちが持ち上がってくるし、少し歩くのはいい気分転換にもなるため、ティータイムも悪くないと今では思っている。
都合がつくとアランも来てくれて、楽しいひと時を過ごすこともままあった。
「あら、今日は殿下がいらっしゃるの?」
ニコルの案内で向かったガゼボには、お菓子と軽食が二人分用意されていた。
それから数週間、エレインは厳重な警備の元リゼットのハーブ園に通い、力を使ってハーブの育成に励んでいた。
初日の開花により材料がそろったため収穫し、すでに薬の製造に入っているため数日後には出荷できる算段が付いている。
(力のおかげで休養していた一週間は取り戻せてる……いえ、それ以上だわ)
この調子でいけば、初回の契約分はあっという間に納品できそうで、エレインはほっとした。
引き受けたのに初っ端から約束を反故にしてしまっては、いくらリゼット相手とはいえ、心証が悪いはずだから。
「エレインさま、お茶のお時間ですので、手を止めてください!」
アトリエで作業に没頭していたところ、ニコルの声によって中断させられてしまう。
これは、エレインが仕事復帰するにあたって、アランと交わした約束。
午前と午後に一度ずつ、決まった時間に必ずティータイムを取るというもの。
いつも仕事にのめり込み、休憩を取るのも忘れて働いてしまうエレインを憂慮しての策だ。
その約束と引き換えに、エレインは一週間の休養で仕事復帰を許してもらえたという経緯があった。
(契約できたおかげで全然疲れないのだけれど……)
だからティータイムは一回に減らしてくれと願い出たものの、全く取り合ってもらえなかった。
「今日はお天気がいいので、中庭に準備してくれていますよ」
「わかったわ。今日はテオさまもご一緒する日だったかしら?」
「残念ながら、今日はピアノのお稽古の日なのでいらっしゃいません」
「そう……仕方ないわね」
午前中のティータイムは、テオも同席することも多いが、最近はピアノの稽古が始まったのもあり、テオとの時間がすっかり減っていた。
相変わらずエレインに懐いてくれているテオだが、目に見える成長を遂げてエレインの手を離れつつあった。
(契約が終わるのももう時間の問題だわ)
時間を見つけては、テオと過ごす時間を取ろうとしている自分がいる。
話すようになったテオと、会話できるのが嬉しいし、拙いながらも一生懸命に話す姿がなによりも可愛い。
くしゃくしゃの愛らしい笑顔は、疲れも吹き飛ばしてくれる。
愛おしくて愛おしくて、たまらないのだ。
助けられているのは、エレインも同じだった。
(私の方が、離れられなくて駄目だわ……)
別れのときを考えると、これ以上深く関わるべきではないと、頭ではわかっていても、どうしても自分から距離を取ることは躊躇ってしまう。
すぐそこに迫るそのときを考えると、胸が苦しくなって息が上手くできなくなる。
(暗くなってしまうから考えるのはやめましょう)
意識を変えるため、軽く首を振ってエレインは顔を上げると、中庭が見えてきた。
最初は、作業を中断されることに不満があったが、よく手入れされたガーデンは精霊も多く舞っていて、見ているだけで気持ちが持ち上がってくるし、少し歩くのはいい気分転換にもなるため、ティータイムも悪くないと今では思っている。
都合がつくとアランも来てくれて、楽しいひと時を過ごすこともままあった。
「あら、今日は殿下がいらっしゃるの?」
ニコルの案内で向かったガゼボには、お菓子と軽食が二人分用意されていた。



