用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて幸せです~



「――それならお前はもう用済み(・・・)だろう?」
 その言葉を放たれたとき、傷を抉るようにナイフが深く突き刺さり、エレインの胸がズキリと痛んだ。
 王太子がどこからその情報を仕入れたのかはわからないが、エレインがハーブ園に通う道すがらに現れたことを考えても、きっと事前に調べたのだろう。
(そうまでして私を連れ戻そうとするなんて……ハーブ事業が立ち行かなくなってよほど困っているのね)
「確かに、王太子殿下のおっしゃる通りです」
「なら、俺のところに戻ってくればいいだろう!」
(用済みだなんて、私が一番わかってる)
 テオはもうエレインがそばにいなくても大丈夫になった。
 アランをはじめとした家族の支えがあれば、きっと問題ないだろう。
(だけど……)
 ――例えきみにその能力がなかったとしても、私にとってきみは唯一無二の替えの利かない大切な人だ。
 アランが自分にかけてくれた言葉を、エレインは忘れていない。
 温かで優しさに溢れたひだまりのような言葉を、アランの気持ちを、エレインは大事に大事に胸にしまっている。
 用済みだと言われようが思われようが、力があろうがなかろうが、自分は生きていてもいいのだと、アランが教えてくれた。
(だから、大丈夫)
 エレインは、震える手をぎゅっと握りしめて、顔を上げてダミアンの目を真っ直ぐ見つめた。
「例えここで用済みになっても、私が生きる場所は自分で決めます。ですので、私が王太子殿下の元へ戻ることはもう二度とございません。どうかお引き取りを」
「なっ……! なん、だと……っ、お前、自分がなにを言っているのかわかっているのか……!」
「ご期待に添えず、誠に申し訳ございません」
「俺がこうして遠路はるばる連れ戻しにきてやったっていうのに、調子に乗りやがって! お前は俺のそばで草を作っていればいいんだ! さぁ、ヘルナミス国に帰るぞ!」
 ダミアンがエレインとの距離をぐっと詰め、手を伸ばす。
「やっ――」
 エレインがとっさに身構えたとき、
 ――カシャンッ
 両側に控えていた護衛が剣を抜いて間に入り、ダミアンの前に立ちふさがった。