目も開けていられないほどの光を浴びて、立っていられなくなったエレインは思わずその場に膝をついた。
 光が消えたのを確認して目を開くも、まだ目がちかちかして視界が定まらずまばたきを数回してようやく床と自分の手が見えた。
(今のは、一体……)
「エレイン! 大丈夫か!?」
 アランがすぐそばに片膝をついて、エレインの肩に触れる。
「あ、殿下……、はい、驚いただけでなんともないです」
「なんだったんだ、今の光は……」
「……あ」
(うそ……)
 ふと目を落とした先――右手の指輪を見て、驚嘆する。
「どうした?」
「で、殿下……これ……」
 震えながら、指輪を見せるように右手を持ち上げる。
 これまで無地でまっさらな状態だったシグネットリングのベゼルに、くっきりと刻印が刻まれていた。
「刻印が……」
 アランはエレインの右手を取り、目を見開く。
「驚いた……本に描かれていた刻印と全く同じだ!」
「契約、できたのでしょうか……」
 刻印が出ただけで、エレイン自身になにも変化がなく、エレインは首を傾げる。
 もしかしたら、精霊と話せるようになるかもしれない、と考えていたけれど、精霊たちはこれまで通りふわふわと宙をさ迷っているだけだった。
(心なしか、増えているような?)
 だけどその程度の変化しかなく、いまいち実感がわかない。
「わからないけど……たぶん、そういうことなんじゃないかな。……いや、でも、驚いた……。きみという人は……、本当にすごい」
 心底感心した表情と声で言われ、エレインの頬が火照る。
 どくどくと心臓がうるさくて、「あ、いえ、そんな……」とどもってしまう。
(手……握られたまま……)
 いつになったら離してくれるのか、とさっきから気にしていたが、アランはエレインの手を握ったまましみじみと指輪を眺めていた。
「あ、あ、あの……」
「ん?」
「手……、手を」
「手? あ……す、すまない、不躾に」
「いえ……」
 ようやく解放された手に安堵する一方、空気に触れて熱が失われていく手が無性に寂しく思う。
(馬鹿ね……もうこの恋心は諦めると決めたのに)
 心も体もアランを恋しく求めるばかりで、まったく言うことを聞いてくれなかった。