用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて幸せです~



 その日の午後は、なにをするにも上の空になり、ニコルから何度も注意されながら一日の仕事を終えようとしていた。
 突然の恋心の自覚と同時に失恋してしまったエレインは、さまざまな感情がない交ぜになり気持ちのコントロールができないでいた。
(考えないようにしようと思えば思うほど考えてしまうわ……)
 身の程知らずの恋心は捨てなければいけないのに、アランの顔が頭から離れてくれない。
 昼食もほとんど喉を通らず、ニコルに懇願されてサラダを一口二口食べるのがやっとだった。
 食後にはテオと散歩をして、お昼寝まで見届けたエレインは、そのまま王宮のハーブ園を見回り、アトリエで出来上がった製品の確認を済ませて王宮に戻ろうとしたときだった。
「じゃぁ、エクトルさん、後をお願いしますね」
「はい、かしこまりました」
(あ、いけない……)
 そう思ったときには視界がぐわんと歪み、とっさに椅子に手をつくもバランスを失って椅子共々床に倒れ込んでしまう。
 ――ガタンッ
「エレインさま!」
 エクトルの焦った声を耳にしながらも、体は言うことを聞いてくれず、視界はどんどん狭まってとうとう暗転したのだった。


 体が動かない重苦しさで、エレインは目を覚ました。
「ん……」
 見慣れた天井は自室だとすぐに気付き、自分がアトリエで倒れたことを頭が理解する。
(どのくらい眠ってたのかしら……)
 室内は暗く、日が落ちてだいぶ時間が経っていそうだ。
 視界だけ動かした先に、エレインの手を握りしめた両手に祈るように額をあてがったアランの姿があった。
 ぎゅっと優しく握られた手は温かく、覚醒していくに連れて熱が増していくようだ。
 左手を動かそうとして、これまた自由が利かないことに気付き、そちらを見遣れば、エレインの左手にしがみつくようにしたテオがいた。
(重たかったのは、テオさまだったのね)
 嬉しさが込み上げてきたのも束の間、眠るテオの目元に酷い涙の痕を見つけて罪悪感が押し寄せる。
 自分が倒れたと聞き、さぞ驚いただろう。
(殿下にも迷惑をかけてしまって、本当に申し訳ない……)
 ピクリとエレインの手が動いた瞬間、アランがバッと顔を上げた。