*シェリーサイド
貴族令嬢のお茶会から帰ってきたシェリーは、買ってもらったばかりのサファイアの指輪を愛でながら、自室に戻ろうと階段を上っていた。
(ふふん、この指輪も評判がよかったわね)
お茶会では王太子の婚約者であるシェリーが注目の的となり、ちやほやされて上機嫌だった。極上のドレスに宝飾品に、どれをとっても完璧の自分に酔いしれる。
(もう少しで私は王太子妃! そしたら今より贅沢し放題だわ!)
階段を上り切ったところで、父の書斎からなにやら深刻そうな話し声が聞こえてきて、エレインは足音を立てないようにドアに近づいた。
「……この手紙を一刻も早くエレインに届けてくれ!」
(エレイン、ですって?)
もうずいぶん耳にしなかった名前にシェリーは眉を寄せる。
「早馬を出そう、そうすれば三日もあれば着くだろう」
「旦那さま、隣国まで早馬でとなるとかなり値が張りますが……」
「仕方あるまい! 殿下よりも先にエレインを取り戻さなければ!」
(殿下がエレインを? どうして?)
予想外の人物の名が上がり、シェリーは混乱した。あれほどまでエレインを疎んでいた父とダミアンが、エレインを連れ戻そうとしているのは一体どういう風の吹き回しか。
全く持って意味がわからない。
「お嬢さまが戻ってきてくれるでしょうか」
「こちらが低姿勢で頼みこめばあの子のことだ、きっと戻ってきてくれるに決まってる。あの子にしかこの家を救える者はいない。元婚約者の王太子よりも血のつながった家族を取るだろう……。さぁ、早馬を出してきてくれ」
執事がこちらにくる気配を感じ、シェリーは慌てて自室に入った。
「家を救うってどういうこと? それに殿下もエレインを連れ戻そうとしている……? 今さらどうして?」
腹の底からなにかが這ってくるような、言い知れぬ不安とともに、炎のように激しい怒りを感じた。
「許せない……! あの女、いつまで私の邪魔をすれば気が済むのよ!」
貴族令嬢のお茶会から帰ってきたシェリーは、買ってもらったばかりのサファイアの指輪を愛でながら、自室に戻ろうと階段を上っていた。
(ふふん、この指輪も評判がよかったわね)
お茶会では王太子の婚約者であるシェリーが注目の的となり、ちやほやされて上機嫌だった。極上のドレスに宝飾品に、どれをとっても完璧の自分に酔いしれる。
(もう少しで私は王太子妃! そしたら今より贅沢し放題だわ!)
階段を上り切ったところで、父の書斎からなにやら深刻そうな話し声が聞こえてきて、エレインは足音を立てないようにドアに近づいた。
「……この手紙を一刻も早くエレインに届けてくれ!」
(エレイン、ですって?)
もうずいぶん耳にしなかった名前にシェリーは眉を寄せる。
「早馬を出そう、そうすれば三日もあれば着くだろう」
「旦那さま、隣国まで早馬でとなるとかなり値が張りますが……」
「仕方あるまい! 殿下よりも先にエレインを取り戻さなければ!」
(殿下がエレインを? どうして?)
予想外の人物の名が上がり、シェリーは混乱した。あれほどまでエレインを疎んでいた父とダミアンが、エレインを連れ戻そうとしているのは一体どういう風の吹き回しか。
全く持って意味がわからない。
「お嬢さまが戻ってきてくれるでしょうか」
「こちらが低姿勢で頼みこめばあの子のことだ、きっと戻ってきてくれるに決まってる。あの子にしかこの家を救える者はいない。元婚約者の王太子よりも血のつながった家族を取るだろう……。さぁ、早馬を出してきてくれ」
執事がこちらにくる気配を感じ、シェリーは慌てて自室に入った。
「家を救うってどういうこと? それに殿下もエレインを連れ戻そうとしている……? 今さらどうして?」
腹の底からなにかが這ってくるような、言い知れぬ不安とともに、炎のように激しい怒りを感じた。
「許せない……! あの女、いつまで私の邪魔をすれば気が済むのよ!」



