教会を後にした三人は、馬車が待つ大通りまで歩いていく。
エレインと神父が話している間、テオはアランの膝の上でとてもおとなしく座っていた。
アランとの約束をしっかりと守ろうと頑張っているようで微笑ましい。
「テオドールさま、殿下との約束を守れて偉いですね。 エレインもとても助かりました」
「あう!」
「殿下も、お付き合いくださりありがとうございました。おかげで私がやるべきことを再確認できました」
「それはよかったけど……、エレインがますます働き過ぎてしまいそうで心配だな」
テオを抱っこしたアランが前かがみになり覗き込んでくる。
二人して首をかしげて心配そうな顔でこちらを見つめるその仕草の愛らしさに、エレインは心臓が止まるかと思った。
(顔がいい人はどんな表情でも様になってずるいわ)
「えっと……それは、気を付けますので……」
「俺も気を付けるけれど、くれぐれも無理のないよう頼むよ?」
「はい」
大通りに出ると、来たときよりも人が増えて賑わいが増していた。
露店も開き、客寄せの声が飛び交い活気に溢れている。甘い菓子や香ばしい食べ物の匂いも漂ってくる。
「わぁ、とても賑やかですね!」
「今日は月に一度の市の日だったようだね。少し歩いて見てみようか」
「えっ、良いのですか?」
「もちろん。せっかくエレインを独り占め……ではないな、テオと二人占めできる貴重な機会だしね」
(二人占めだなんて……。私が気にしないように言ってくれているだけよね)
ついついアランの言動に喜びそうになる自分を戒める。
「うー!」
「ほら、テオもご機嫌だ。さ、行こう」
待機していた馬車の御者に言付けてから、三人は市場へと繰り出した。
自国でも街の市場に行ったことのないエレインは、見るもの全てが珍しく、目を輝かせて喜んだ。
「あれはなんですか?」
「飴細工だね。水あめでできているから食べれるんだよ」
「綺麗すぎて食べれませんね……」
「あうー! まっ、んまっ」
テオが飾ってある飴細工の一つを指さした。
「くまさんがほしいのですか?」
「ん!」
「よし、待ってろ」
アランがそれを買ってきてテオの手に持たせれば、琥珀色のつやつやしたそれを大きな瞳でまじまじと見つめた。
目をキラキラさせるテオを見て、エレインとアランも嬉しくなって微笑みあった。
「――ちょっとそこのご夫婦!」
大きな声に反射的に振り向くと、飴細工とは反対側の露店の女性店主がにこやかな顔でこちらをて招いていた。
エレインが周りをきょろきょろと見回していると、「茶髪の美人さん、あんただよ!」とエレインを見て笑う。
(ご、ご夫婦って……!)
アランと夫婦に間違えられたのだと気付き、エレインの顔に熱が集まる。
「あ……、いえ、その、ちが」
「ちょっとごらんよ! 若い子に人気のがあるんだよ、見てっておくれ」
「ぜひ見せてもらおうか」
アランに背をそっと押されて、エレインは露店の前に誘導されてしまう。
エレインと神父が話している間、テオはアランの膝の上でとてもおとなしく座っていた。
アランとの約束をしっかりと守ろうと頑張っているようで微笑ましい。
「テオドールさま、殿下との約束を守れて偉いですね。 エレインもとても助かりました」
「あう!」
「殿下も、お付き合いくださりありがとうございました。おかげで私がやるべきことを再確認できました」
「それはよかったけど……、エレインがますます働き過ぎてしまいそうで心配だな」
テオを抱っこしたアランが前かがみになり覗き込んでくる。
二人して首をかしげて心配そうな顔でこちらを見つめるその仕草の愛らしさに、エレインは心臓が止まるかと思った。
(顔がいい人はどんな表情でも様になってずるいわ)
「えっと……それは、気を付けますので……」
「俺も気を付けるけれど、くれぐれも無理のないよう頼むよ?」
「はい」
大通りに出ると、来たときよりも人が増えて賑わいが増していた。
露店も開き、客寄せの声が飛び交い活気に溢れている。甘い菓子や香ばしい食べ物の匂いも漂ってくる。
「わぁ、とても賑やかですね!」
「今日は月に一度の市の日だったようだね。少し歩いて見てみようか」
「えっ、良いのですか?」
「もちろん。せっかくエレインを独り占め……ではないな、テオと二人占めできる貴重な機会だしね」
(二人占めだなんて……。私が気にしないように言ってくれているだけよね)
ついついアランの言動に喜びそうになる自分を戒める。
「うー!」
「ほら、テオもご機嫌だ。さ、行こう」
待機していた馬車の御者に言付けてから、三人は市場へと繰り出した。
自国でも街の市場に行ったことのないエレインは、見るもの全てが珍しく、目を輝かせて喜んだ。
「あれはなんですか?」
「飴細工だね。水あめでできているから食べれるんだよ」
「綺麗すぎて食べれませんね……」
「あうー! まっ、んまっ」
テオが飾ってある飴細工の一つを指さした。
「くまさんがほしいのですか?」
「ん!」
「よし、待ってろ」
アランがそれを買ってきてテオの手に持たせれば、琥珀色のつやつやしたそれを大きな瞳でまじまじと見つめた。
目をキラキラさせるテオを見て、エレインとアランも嬉しくなって微笑みあった。
「――ちょっとそこのご夫婦!」
大きな声に反射的に振り向くと、飴細工とは反対側の露店の女性店主がにこやかな顔でこちらをて招いていた。
エレインが周りをきょろきょろと見回していると、「茶髪の美人さん、あんただよ!」とエレインを見て笑う。
(ご、ご夫婦って……!)
アランと夫婦に間違えられたのだと気付き、エレインの顔に熱が集まる。
「あ……、いえ、その、ちが」
「ちょっとごらんよ! 若い子に人気のがあるんだよ、見てっておくれ」
「ぜひ見せてもらおうか」
アランに背をそっと押されて、エレインは露店の前に誘導されてしまう。



