チェーン居酒屋。その中でもとりわけ安い店の店内は、幅広い世代の客を取り込んでいる。
背広を半分に畳んで背もたれに掛け、Yシャツの袖を限界まで折り込んだ仕事帰りのサラリーマン。家では我慢していそうな煙草を惜しげもなく吸い込み、話を末まで聞かずにバカ笑いをする、左薬指に指輪を付けた女性。年齢確認をされ「俺ってそんなに若く見えるかなー」と変に嬉しそうな表情を振りまき、誰しもが知るブランド名がこれ見よがしに刻印された長財布から免許証を取り出す男。おそらくは大学生だろう。あの古着の良さにも気付いていますと言いたげな洋服の着こなしは、どこか自分自身を見ているようだ。
不意に男と目があう。向こうからは、古着しか買えない人、としか見られていないのかもしれなかった。
この店はどうして靴を脱いで入店する仕様なのだろうと、厨房から漂う肉の焼ける匂いと、壁に取り付けられたテレビの音をかき消す話し声に胸焼けを起こしながらいつも思う。靴を脱がすのなら、入口から糊のように靴下と床を貼り付ける油汚れを掃除してほしい。
こればかりは価格に釣られた自分が悪いとは言わせない、と意気込んだ視線を案内に来た店員に向けるつもりでいるものの、いざ声を掛けられると愛想笑いを浮かべる自分がいた。
バカ笑いする部屋に挟まれた静かな半個室の一つに、用意された俺の席はあった。換気の行き届いていない店内は何も注文していないはずのこの席も、同じ世界の匂いに染めている。
「おい、匠! 遅いじゃん! 予定ないって言ってたろ? まあ、すっぽかすよりはマシだけどさ」
「わり、ちょっと迷っちゃって」
「はい? ここよく来る店じゃん。てか先週も来たじゃん」
「いや、行くかどうか」
そっちかよ、と笑う友人と向かい合う席に腰を下ろす。後ろポケットに入れていた財布が内腿の裏側に刺さるのが気になって、机の上に木製の下駄箱の鍵と重ねて置いた。
「なに、なんか嫌なことでもあった? 俺で良ければ話聞くよ?」
すいませーん、と入口から半身を出し、店員を呼びながら友人は言う。注文用のボタンもタブレットもあるのにわざわざ大声で店員を呼ぶことに、双方なんのメリットもない。案の定、「次回以降はこちらをご利用くださいね」と愛想よくたしなめられている。
注文の品が到着するまでの時間は長く感じるものだが、どっしり腰を下ろした俺たちと、慌ただしく動き回る店員を足すと、やはり時間は平等に過ぎているのだと思う。
「で、なんかあったわけ? ありきたりな質問で悪いけど、彼女と喧嘩でもした?」
トレイに乗った冷えたナプキンで念入りに手を拭きながら、視線を落としたまま松田は言った。
「俺、そういう男女関係の話は得意だって言ったろ?」
まだ何も話していないにもかかわらず、俺には「なにか」があり、それが彼の中で「彼女との喧嘩」になっているらしい。
「原因はな、だいたい過去の自分の中に眠っているわけ」
おもむろに煙草に火をつけて、煙が天井に向かって泳いでいく。
その姿に、俺は松田と出会った日のことを思い出していた。
大学のオリエンテーションの日だった。
横に長い机が何列にも設置された大教室。入口から向かって一番奥の前から三列目の席に座っていると、時間ギリギリに松田は教室に入ってきた。既に教壇に立っていた教師の前を屈みながら横切り、「ここ、良いです?」と隣の席の空き状況を確認する。緊張もあって気が付かなかったが、見渡す限り、他の席は埋まっているようだった。
この大教室も、新入生を一同に集めるとなると少し窮屈に感じる。
松田は俺の返答を催促するように、眉毛を軽く上げた。長髪を後ろで結んでいたが、前髪は鼻先まで垂れている。その風貌と黒白チェックのネルシャツを羽織った姿の醸し出す雰囲気が大人に見えた。
「あ、ああ、どうぞ」
久しぶりに放った声は、乾いた喉元に引っ掛かり掠れた。
上京してから初めてできた友人だった。垢抜けた見た目とは裏腹に松田も同じ上京組で、その理由を本人は「こっちに来る機会も多かったからかな」と分析した。
同じ学部だったこともあり、松田とは履修科目もほとんど同じものにすることにした。履修登録をするとき「取りたい授業ある?」と聞かれたが特に見つからず、松田の選んだものに必要以上の共感を示してみせた。受験がゴールだと思えるくらい入試に向けて勉強を重ねたのに、入学を機に学びたいことが見えなくなったようだった。
いや、そんなものは端からなかった気さえした。
「匠くんはさ、どうして上京したの?」
オリエンテーションを終え、二人で寄った居酒屋で松田は聞いた。年齢確認をされると怯えながら入店したが、この時期は店側も寛容な対応をしているのか、単に客足が多く面倒事を避けたかっただけなのか、一瞥を投げることなく席に通されたことに安堵した矢先のことだった。
こちらの返事も待たずに、松田は手を大きく振って店員を呼んでいる。地元の名残なのかもしれなかった。
「俺の居た島は本当に小さい田舎町だったから、社会に出る準備……ってとこかな」
発表用に練習してきたような言葉は、身体を内側から熱くさせた。もっともらしい理由だと思っていたが、声に出すと実に浅はかな理由だと思った。
だから俺は、必死にすました顔を取り繕った。でも、「なるほどな」と相槌を打つ松田は、そのことに気づいてすらいないようだった。それどころか、「俺も同じようなもん」と笑う。
「上京さえしてれば自動的に、大人になってくれそうだもんな」
笑いながらそう言えてしまう松田は、やはり大人に見えた。
「煙草、平気?」言いながら、既にその先端は赤く燃え始めている。天井に取り付けられた換気扇は、生気を吸い取るように煙を飲み込んでいた。
「そんなんじゃないよ。ただミニトマトの栽培に失敗しただけ」
「なんだよ、それ。俺との約束はミニトマトよりも下かよ」
「まあ、ミニトマトよりは」
ふざけんな、と松田が笑ったところで、早くも一杯目のビールが運ばれてくる。グラスは白く凍っており、見るだけで喉が鳴った。小さく乾杯をして、乾いた身体に悪魔の水を流し込む。
悪魔は体内で笑い、欲望は血液に乗って細胞単位で踊りだした。
「でも逆に安心したよ。茜ちゃんとは仲直りしたってことだろ?」
悪魔が松田の喉仏を揺らす。その大胆かつ豪快な侵入手口を二、三度眺めたあとで俺は答える。
「お構いなく。あれから既読も付かないまんまだから」
げほ、げほ、と松田がむせこむと、油断の限りを尽くしていたはずの悪魔が口から溢れ出た。
「おい、ちょ……、そっちの方が大問題じゃねーの? ミニトマトなんかよりもずっと」
松田がこちらを見つめたままテーブルを拭こうとしないので、自分の手を拭いたナプキンを使って拭いた。ジョッキの中で弾けるそれより、ナプキンは随分と薄い色に染まる。
「どうなんだろうなあ。これが平常運転の気もするし、だからこそミニトマトがショックでさあ」
「ミニトマトから一回離れろって。感覚が麻痺してんだよ。既読が付かなくなって何日経つんだ?」
「三日かな、たぶん。数えてないから知らんけど」
何度も確認しているのだから間違いない。連絡が途絶えてから今日で三日が過ぎている。それなのに、この期に及んで強がる自分に笑えてしまう。
一体俺は、何に強がっているのだろう。
「三日は結構だって。返事が来ないだけじゃなくて既読も付かなんてさ。電話とかはしてないの?」
「あー、なんか、気まずいし」と口にして、俺は自ら悪魔を身体に招く。
気分が落ちている時ほど身体に染みる。松田はため息をつきながら首を振ったが気付かない振りをして、もう一度、俺は勢いよくジョッキを傾けた。
「そもそもさ、その気まずい空気を作ったのは匠だろ? それならお前から連絡するのが筋ってもんよ。茜ちゃんだって、本当は寂しいんだと思うぜ?」
「でもほら、既読もないんじゃ、向こうの意思っつーか。考えたい時期なのかもしれないし?」
それはお前の勝手な解釈だろ、と言われたところで、注文した料理が次々と到着する。言い返す言葉も無かったので、小皿に取り分けることなく大皿のまま急いで料理に手を伸ばして口へと運んだ。
口いっぱいに詰め込めば、少しの沈黙もおかしくはないと思った。
「第三者に言われたところでって思うかもしれないけど、高校卒業してすぐ遠距離なんだよな? 距離が離れてる分、気持ちだけはしっかり伝えておかないと心の距離も離れちゃうって。俺、そうなった人たちをたくさん知ってるぞ?」
松田の話を聞きながら、ただひたすらに咀嚼を繰り返す。
そうなった人って? たくさんって、どれくらい?
そう言い返せないわけじゃない。今はたまたま口の中に料理があるだけなのだと、俺は自分が作った口実でこの状況を正当化していた。
「お前の気持ちもわかる。でもまずはもう一回、ちゃんと連絡しろって。上京以来、島には帰ってなかったんだよな? これを機に帰ってやれ。じゃないと本当に会えなくなるぞ? いいか、茜ちゃんに会えるまで帰って来るなよ?」
口の中にはもう何も残っていない。それなのに、黙り込むことしかできない自分が情けなかった。
料理と一緒に言葉まで呑み込んでしまったのだと、俺はまた、自分を正当化した。
『茜が居なくなった』
その連絡が入ったのは翌日のことだった。
背広を半分に畳んで背もたれに掛け、Yシャツの袖を限界まで折り込んだ仕事帰りのサラリーマン。家では我慢していそうな煙草を惜しげもなく吸い込み、話を末まで聞かずにバカ笑いをする、左薬指に指輪を付けた女性。年齢確認をされ「俺ってそんなに若く見えるかなー」と変に嬉しそうな表情を振りまき、誰しもが知るブランド名がこれ見よがしに刻印された長財布から免許証を取り出す男。おそらくは大学生だろう。あの古着の良さにも気付いていますと言いたげな洋服の着こなしは、どこか自分自身を見ているようだ。
不意に男と目があう。向こうからは、古着しか買えない人、としか見られていないのかもしれなかった。
この店はどうして靴を脱いで入店する仕様なのだろうと、厨房から漂う肉の焼ける匂いと、壁に取り付けられたテレビの音をかき消す話し声に胸焼けを起こしながらいつも思う。靴を脱がすのなら、入口から糊のように靴下と床を貼り付ける油汚れを掃除してほしい。
こればかりは価格に釣られた自分が悪いとは言わせない、と意気込んだ視線を案内に来た店員に向けるつもりでいるものの、いざ声を掛けられると愛想笑いを浮かべる自分がいた。
バカ笑いする部屋に挟まれた静かな半個室の一つに、用意された俺の席はあった。換気の行き届いていない店内は何も注文していないはずのこの席も、同じ世界の匂いに染めている。
「おい、匠! 遅いじゃん! 予定ないって言ってたろ? まあ、すっぽかすよりはマシだけどさ」
「わり、ちょっと迷っちゃって」
「はい? ここよく来る店じゃん。てか先週も来たじゃん」
「いや、行くかどうか」
そっちかよ、と笑う友人と向かい合う席に腰を下ろす。後ろポケットに入れていた財布が内腿の裏側に刺さるのが気になって、机の上に木製の下駄箱の鍵と重ねて置いた。
「なに、なんか嫌なことでもあった? 俺で良ければ話聞くよ?」
すいませーん、と入口から半身を出し、店員を呼びながら友人は言う。注文用のボタンもタブレットもあるのにわざわざ大声で店員を呼ぶことに、双方なんのメリットもない。案の定、「次回以降はこちらをご利用くださいね」と愛想よくたしなめられている。
注文の品が到着するまでの時間は長く感じるものだが、どっしり腰を下ろした俺たちと、慌ただしく動き回る店員を足すと、やはり時間は平等に過ぎているのだと思う。
「で、なんかあったわけ? ありきたりな質問で悪いけど、彼女と喧嘩でもした?」
トレイに乗った冷えたナプキンで念入りに手を拭きながら、視線を落としたまま松田は言った。
「俺、そういう男女関係の話は得意だって言ったろ?」
まだ何も話していないにもかかわらず、俺には「なにか」があり、それが彼の中で「彼女との喧嘩」になっているらしい。
「原因はな、だいたい過去の自分の中に眠っているわけ」
おもむろに煙草に火をつけて、煙が天井に向かって泳いでいく。
その姿に、俺は松田と出会った日のことを思い出していた。
大学のオリエンテーションの日だった。
横に長い机が何列にも設置された大教室。入口から向かって一番奥の前から三列目の席に座っていると、時間ギリギリに松田は教室に入ってきた。既に教壇に立っていた教師の前を屈みながら横切り、「ここ、良いです?」と隣の席の空き状況を確認する。緊張もあって気が付かなかったが、見渡す限り、他の席は埋まっているようだった。
この大教室も、新入生を一同に集めるとなると少し窮屈に感じる。
松田は俺の返答を催促するように、眉毛を軽く上げた。長髪を後ろで結んでいたが、前髪は鼻先まで垂れている。その風貌と黒白チェックのネルシャツを羽織った姿の醸し出す雰囲気が大人に見えた。
「あ、ああ、どうぞ」
久しぶりに放った声は、乾いた喉元に引っ掛かり掠れた。
上京してから初めてできた友人だった。垢抜けた見た目とは裏腹に松田も同じ上京組で、その理由を本人は「こっちに来る機会も多かったからかな」と分析した。
同じ学部だったこともあり、松田とは履修科目もほとんど同じものにすることにした。履修登録をするとき「取りたい授業ある?」と聞かれたが特に見つからず、松田の選んだものに必要以上の共感を示してみせた。受験がゴールだと思えるくらい入試に向けて勉強を重ねたのに、入学を機に学びたいことが見えなくなったようだった。
いや、そんなものは端からなかった気さえした。
「匠くんはさ、どうして上京したの?」
オリエンテーションを終え、二人で寄った居酒屋で松田は聞いた。年齢確認をされると怯えながら入店したが、この時期は店側も寛容な対応をしているのか、単に客足が多く面倒事を避けたかっただけなのか、一瞥を投げることなく席に通されたことに安堵した矢先のことだった。
こちらの返事も待たずに、松田は手を大きく振って店員を呼んでいる。地元の名残なのかもしれなかった。
「俺の居た島は本当に小さい田舎町だったから、社会に出る準備……ってとこかな」
発表用に練習してきたような言葉は、身体を内側から熱くさせた。もっともらしい理由だと思っていたが、声に出すと実に浅はかな理由だと思った。
だから俺は、必死にすました顔を取り繕った。でも、「なるほどな」と相槌を打つ松田は、そのことに気づいてすらいないようだった。それどころか、「俺も同じようなもん」と笑う。
「上京さえしてれば自動的に、大人になってくれそうだもんな」
笑いながらそう言えてしまう松田は、やはり大人に見えた。
「煙草、平気?」言いながら、既にその先端は赤く燃え始めている。天井に取り付けられた換気扇は、生気を吸い取るように煙を飲み込んでいた。
「そんなんじゃないよ。ただミニトマトの栽培に失敗しただけ」
「なんだよ、それ。俺との約束はミニトマトよりも下かよ」
「まあ、ミニトマトよりは」
ふざけんな、と松田が笑ったところで、早くも一杯目のビールが運ばれてくる。グラスは白く凍っており、見るだけで喉が鳴った。小さく乾杯をして、乾いた身体に悪魔の水を流し込む。
悪魔は体内で笑い、欲望は血液に乗って細胞単位で踊りだした。
「でも逆に安心したよ。茜ちゃんとは仲直りしたってことだろ?」
悪魔が松田の喉仏を揺らす。その大胆かつ豪快な侵入手口を二、三度眺めたあとで俺は答える。
「お構いなく。あれから既読も付かないまんまだから」
げほ、げほ、と松田がむせこむと、油断の限りを尽くしていたはずの悪魔が口から溢れ出た。
「おい、ちょ……、そっちの方が大問題じゃねーの? ミニトマトなんかよりもずっと」
松田がこちらを見つめたままテーブルを拭こうとしないので、自分の手を拭いたナプキンを使って拭いた。ジョッキの中で弾けるそれより、ナプキンは随分と薄い色に染まる。
「どうなんだろうなあ。これが平常運転の気もするし、だからこそミニトマトがショックでさあ」
「ミニトマトから一回離れろって。感覚が麻痺してんだよ。既読が付かなくなって何日経つんだ?」
「三日かな、たぶん。数えてないから知らんけど」
何度も確認しているのだから間違いない。連絡が途絶えてから今日で三日が過ぎている。それなのに、この期に及んで強がる自分に笑えてしまう。
一体俺は、何に強がっているのだろう。
「三日は結構だって。返事が来ないだけじゃなくて既読も付かなんてさ。電話とかはしてないの?」
「あー、なんか、気まずいし」と口にして、俺は自ら悪魔を身体に招く。
気分が落ちている時ほど身体に染みる。松田はため息をつきながら首を振ったが気付かない振りをして、もう一度、俺は勢いよくジョッキを傾けた。
「そもそもさ、その気まずい空気を作ったのは匠だろ? それならお前から連絡するのが筋ってもんよ。茜ちゃんだって、本当は寂しいんだと思うぜ?」
「でもほら、既読もないんじゃ、向こうの意思っつーか。考えたい時期なのかもしれないし?」
それはお前の勝手な解釈だろ、と言われたところで、注文した料理が次々と到着する。言い返す言葉も無かったので、小皿に取り分けることなく大皿のまま急いで料理に手を伸ばして口へと運んだ。
口いっぱいに詰め込めば、少しの沈黙もおかしくはないと思った。
「第三者に言われたところでって思うかもしれないけど、高校卒業してすぐ遠距離なんだよな? 距離が離れてる分、気持ちだけはしっかり伝えておかないと心の距離も離れちゃうって。俺、そうなった人たちをたくさん知ってるぞ?」
松田の話を聞きながら、ただひたすらに咀嚼を繰り返す。
そうなった人って? たくさんって、どれくらい?
そう言い返せないわけじゃない。今はたまたま口の中に料理があるだけなのだと、俺は自分が作った口実でこの状況を正当化していた。
「お前の気持ちもわかる。でもまずはもう一回、ちゃんと連絡しろって。上京以来、島には帰ってなかったんだよな? これを機に帰ってやれ。じゃないと本当に会えなくなるぞ? いいか、茜ちゃんに会えるまで帰って来るなよ?」
口の中にはもう何も残っていない。それなのに、黙り込むことしかできない自分が情けなかった。
料理と一緒に言葉まで呑み込んでしまったのだと、俺はまた、自分を正当化した。
『茜が居なくなった』
その連絡が入ったのは翌日のことだった。



