太陽がベランダに落ちたようだった。
 ひと月前まで茎や葉と同色で、控えめだった飴玉に似た小さな実は陽の光を吸収し、すっかり赤く染まっている。無事にリコピンが増え、クロロフィルの分解も進んだらしい。

 置き場を変えて正解だった。

 約800℃。これはミニトマトの収穫までに要する積算温度で、日数にして四十から五十日とも言われていると後々知った。首を振ることなく見渡せる狭きベランダで、よくこれだけの温度を積み上げたものだ。成功、失敗にかかわらず、これだけでも価値がある。

 ここに居ると主張する小さな太陽は、とてもキレイに染まっている。