
- 作品番号
- 1761096
- 最終更新
- 2025/09/19
- 総文字数
- 28,397
- ページ数
- 4ページ
- ステータス
- 完結
- いいね数
- 229
- ランクイン履歴
-
総合12位(2025/10/11)
ミステリー2位(2025/09/21)
夏の宵。
浴衣を着た五人の大学生が、地元の夏祭りに集まった。
焼きそばを頬張り、金魚すくいで笑い合い、
「最後の学生生活の思い出」としてスマホを回す。
画面には屋台の灯、花火の光、笑顔、笑顔、笑顔。
誰が見ても幸福な映像。
――そのはずだった。
だが、映像を見返すと、必ず映っている“背中”があった。
古びた学生服を着た、見知らぬ誰かの背中。
群衆の中で振り返らず、ただ立ち尽くすその姿は、
別の時間から紛れ込んだ異物のようだった。
囃子が高まり、人々が踊る。
だが、全員の動きが一斉に一瞬“ずれる”。
その瞬間、マイクには悲鳴とも祈りともつかぬ声が重なる。
奥には存在しないはずの屋台。
並んでいたお面には「未来の日付」が印刷されていた。
そして花火の下、歓声の中で――
群衆の一角が、まとめて“消えた”。
残された映像には、逆回転する時間、
声と口が合わない笑顔、
そして“空席そのもの”が人のように移動していく光景が刻まれていた。
最後の動画は逆さに落ちたカメラから。
暗闇に覗き込む群れ。
口だけが大きく開き、ノイズに溶ける眼。
笑顔の形をしていながら、それは祝福とはまるで違うものだった。
やがて映像は途切れる。
後日、学生たちは口をそろえて言った。
「あの日、祭りには行っていない」と。
だが、防犯カメラには彼らが確かに映っていた。
そしてその隣には、必ず“あの背中”が立っていた。
青春の思い出を残すはずだった記録は、
いまや恐怖の証拠としてしか存在しない。
――夏祭りの夜、最後に映ったもの。
あなたは直視できるだろうか。
浴衣を着た五人の大学生が、地元の夏祭りに集まった。
焼きそばを頬張り、金魚すくいで笑い合い、
「最後の学生生活の思い出」としてスマホを回す。
画面には屋台の灯、花火の光、笑顔、笑顔、笑顔。
誰が見ても幸福な映像。
――そのはずだった。
だが、映像を見返すと、必ず映っている“背中”があった。
古びた学生服を着た、見知らぬ誰かの背中。
群衆の中で振り返らず、ただ立ち尽くすその姿は、
別の時間から紛れ込んだ異物のようだった。
囃子が高まり、人々が踊る。
だが、全員の動きが一斉に一瞬“ずれる”。
その瞬間、マイクには悲鳴とも祈りともつかぬ声が重なる。
奥には存在しないはずの屋台。
並んでいたお面には「未来の日付」が印刷されていた。
そして花火の下、歓声の中で――
群衆の一角が、まとめて“消えた”。
残された映像には、逆回転する時間、
声と口が合わない笑顔、
そして“空席そのもの”が人のように移動していく光景が刻まれていた。
最後の動画は逆さに落ちたカメラから。
暗闇に覗き込む群れ。
口だけが大きく開き、ノイズに溶ける眼。
笑顔の形をしていながら、それは祝福とはまるで違うものだった。
やがて映像は途切れる。
後日、学生たちは口をそろえて言った。
「あの日、祭りには行っていない」と。
だが、防犯カメラには彼らが確かに映っていた。
そしてその隣には、必ず“あの背中”が立っていた。
青春の思い出を残すはずだった記録は、
いまや恐怖の証拠としてしか存在しない。
――夏祭りの夜、最後に映ったもの。
あなたは直視できるだろうか。
- あらすじ
- 夏祭りの夜。笑顔と花火に満ちた映像に、必ず背を向けて立つ“知らない背中”が映っていた。やがて囃子は悲鳴を孕み、群衆の一角が消え、逆さのカメラには不気味な群れが覗き込む。青春の思い出として撮られたはずの映像は、恐怖の証拠へと姿を変える――。
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