え?
 笹崎さんの誕生日のこと?
 なんでそんなこと、柿本が聞くんだよ。

 知りたいからって……そういえば、柿本いなかったな。
 てか、俺も知りたいことがあるんだけど。
 笹崎さん、どうなった?

 そっか、警察に……
 いや、そうだよな、あれだけのことしたんだし、そりゃそうなるよな……
 でもさ……俺としてはやっぱり、笹崎さんの誕生日っていう特別な日に、なんでこうなったんだって、思わずにはいられないっていうかさ……

 で、なんだっけ……ああ、あの日のことか。

 あの日は、笹崎さんの誕生日だったろ?
 だから、盛大に祝うために、笹崎さんが登校してくる時間よりもちょっとはやめに学校に行ったんだ。

 で、笹崎さんの机の上を飾ってたら、急に廊下が騒がしくなって。
 なにごとだろうって思いながらも、俺は準備してたんだ。

 それからすぐに、笹崎さんは教室にやってきた。
 びっくりしたよ。
 だって、これまでにないくらい、幸せそうな顔して来たんだよ、笹崎さん。
 だから、俺のしたこと、喜んでくれたのかなーって嬉しくなってたらさ。
 俺、左腕を切られてたんだよね。
 めちゃくちゃ痛かったし、このまま死ぬのかなって思ったけど、最後に見るのが笹崎さんなら、これも悪くない最期だなって思ったよ。
 ま、こうして生きてるんだけどさ。

 ……て、なんだよ。
 別に変なこと言ってないだろ。

 え?
 俺から見て、変だなって思ったところ?
 別に、いつも通り美しかったけど。
 なんでそんなこと聞くんだよ。

 血が綺麗?
 笹崎さんがそう言ったのか?
 そうか……それはたしかに、妙だな。
 笹崎さんがそんな危険な香りさせるなんて……いや、むしろあり……っと、なんでもねーよ。

 でもそうだな……
 俺は美しい笑みだと思ったけど、よくよく考えたら、まるでなにかに乗っ取られてるというか、操られてるみたいな感じだったような……
 俺のことも、誕生日のこともわかってなかったみたいだし。

 いや、乗っ取りとか信じられないって言われても……
 でもうちの学校、そんなウワサあったろ。
 そう、テニスコートの近くにある古い体育倉庫。
 あそこに近付いたら呪われるってやつ。

 俺もありえないっていうか、バカバカしいって思ってたけど……
 興味本位で近寄ったとき、中から声が聞こえてきたんだよ。
 呻き声、みたいな。

 いや、ガチだって!
 千葉ショーにも聞いてみ!?
 アイツ、オカ研だし、そういうの詳しいから!

 んで、それからよく、誰かに見られてるような気がしてたんだ。
 でも、振り返っても誰もいないんだよ。
 だから気のせいだろうなって思ってるうちに、その視線も感じなくなってさ。
 結局、怖がりの誰かが大袈裟に言ってただけじゃん?って。

 でも……あのさ、田代のこと、知ってる?

 ……そう。
 田代、体育倉庫で死んでたんだって。

 は?
 それも笹崎さんのせいになってんの?
 いやいや、笹崎さんがそんなことするわけないって。
 今回の事件、負傷者はいっぱいいても、死人は田代だけなんだろ?
 じゃあ、違うだろ。
 柿本は全部笹崎さんがやったって思ってんの?

 ……いや、ごめん、そもそも俺らを傷つけたのも笹崎さんって信じられないから、調べてるんだったよな。
 でも、これは間違いなく、笹崎さんに付けられた傷だよ。

 ……そうだ、柿本。
 俺の気のせいならそれでいいんだけどさ……
 笹崎さん、怪我してなかった?
 たしか、腕のあたり。
 いつって……笹崎さんの誕生日の、ちょっと前くらいだったと思う。

 ……なんて、もう知りようがないか。