「真っ赤な血って、綺麗でしょう?」

 彼女、笹崎(ささざき)咲凜(えみり)は両手を真っ赤に染めて、幸せそうに微笑んでいました。

 それは、咲凜の誕生日の朝の出来事でした。
 咲凜のために、夜中にガトーショコラを作っていた私は、見事に寝坊をしました。
 遅れて学校に行った私が目にしたのは、すべてが終わった光景で。
 学校の至るところに血が飛び散っていたのです。
 血の海の真ん中に、咲凜は立っていました。
 そして、驚いて動けない私に、咲凜はあの言葉を残したのです。

 私はとても驚きました。
 だって、咲凜がそんな危険なことを言うような子だと、微塵も思っていなかったから。

 私は咲凜の幼なじみで、親友でした。
 でもそれは、私が一方的に思っていただけなのかもしれません。
 私が、本当に咲凜の親友だったら。
 きっと、咲凜が心の奥底に隠していた本音にも、気付けたことでしょう。

 なにが咲凜の心を壊していったのか。
 これは、私が本当の咲凜を探した記録なのです。